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とももさんの投稿された作品が10件見つかりました。
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日々が香ばしい10
「そのお礼として私はささやかながらに貴方にお茶を振る舞う」「うん」「それは何かおかしいことですか?」「いいえ、全く」俺の返事に「でしょう?」とドヤ顔をする彼女。こんなことで得意気になられても対応に困るだけである。が、言ってることは別におかしく無い。変なのは態度だけだ。「なら、いいじゃないですか」クスリと微笑みかける。さっきまでの物言いとうってかわって、実に嬉しそうに。そのギャップに内心ドキリ……と
とももさん作 [633] -
日々が香ばしい9
「荷物持ちありがとうございました。とりあえずそれはこちらに」 「んあ?はいはい。」間抜けな返事をしながら彼女に言われた通りに両腕一杯のオレンジをテーブルの上に置く。「お茶を淹れますのでそこに座って待っていて下さい。」言われるがままに肩に提げていたバッグを床に降ろし、手近な椅子に座った。物が古いのか身じろきする度にギシギシと悲鳴をあげる。 座ってから気がついた。なぜ自分は見ず知らずの人の家でお茶をご
とももさん作 [558] -
日々が香ばしい8
俺が想像していた以上に中は教会らしかった。礼拝堂……でいいのだろうかこの部屋は。公園で見かけるベンチの二倍はある長椅子が、人間一人分通れるくらいの間隔を左右に空けて五列規則正しく並んでいる。 正面に見えるステンドグラスは女性を形作っていて赤や青といったきらびやかな光を足元の床に映し出す。 調度品の類は少なく、そのためか部屋の一番奥にあるパイプオルガンが大きな存在感をもって鎮座している。 部屋全体と
とももさん作 [556] -
日々が香ばしい7
教会だった。何が、と言われれば彼女の家……らしい。歩き始めて1時間。行き着く所は神の家だった。呆然と屋根の上の十字架を見上げながら尋ねる。「ここに住んでいるのかい?」「そうですが何か?」平然と答えてるし。冗談ではないのだろう。敷地は庭を含めて結構広い。が、あまり手入れされていないのか舗装されていない剥き出しの地面からは青々とした雑草がこれでもかと生えている。 建物自体も建築されてから何年経つやら、
とももさん作 [540] -
日々が香ばしい6
「見ず知らずの赤の他人の荷物持ちとは、奇特な方ですねあなたは。」二人並んで歩き始めて10分ほど経ち、それまでずっと無言で歩いていた謎子さんはふと思い付いたように話しかけてきた。いきなりだったので少し面食らい、落ちそうになるオレンジを慌てて持ち直し答えた「そういう性分なんだ。仕方ない。」俺の返事にそうですかと真っ直ぐ前を向いたまま吐いて捨てる。「私の方からぶつかったのに貴方は憤りもせずにいるし、よっ
とももさん作 [532] -
日々が香ばしい5
謎子さんの言わんとすることが俺にはすぐわかった。「袋がやぶれたか何かして落としたと?」「そうです。ほらこの通り。」そう言ってオレンジの保持を片腕で器用にこなしながら、ズボンのポケットからどこにでもあるレジ袋を何故か自慢気に取り出す謎子さん。 袋には巨大な穴が空き所々伸びきっていてどう見ても使い物にならない。「全く最近のレジ袋は強度が足りません。」「いや。その袋の大きさを考えるに明らか重量オーバーだ
とももさん作 [572] -
日々が香ばしい4
謎子さんは暫くして泣き止んだ。 嗚咽が聞こえなくなると顔面を押し付けるように涙と鼻水を俺のよれたシャツで拭き(ちょっと待て)何でもないように立ち上がる。つられて俺も立ち上がる。立って観た感じこの謎子さん俺とたいして年は変わらないくらいだろう。二人して顔を合わせる。そして沈黙。なぜだ。「あの、怪我ないかな?」取り敢えず聞いてみた。「ええ、お陰様で。いいクッションになってくれました。」あれ?感謝されて
とももさん作 [546] -
日々が香ばしい3
衝突することは必至だった。「んぎゅ」「うきゃ」人影は肩口から俺の腹部にしがみつくように突進してきた。それはもう見事なタックルだった。 とんでもない衝撃が全身を襲い俺の体を難なく宙へと吹き飛ばす。あまりの威力に口から五臓六腑全部をぶちまけるかのように錯覚した。 永遠にも感じられた浮遊感の直後。仰向けのまま硬いアスファルトへと人影と一緒にダイビング。 「んごっ」 そしてそのまま背中を擦るように地面へ胴
とももさん作 [471] -
日々が香ばしい2
立ち並ぶ銀杏の木の葉がアーケードのように木陰をつくり、直射日光を防いでくれている。無いよりましだが暑いものは暑い。自動車2台がどうにか通れるくらいの道幅なので、秋になると大量の落葉が散乱し坂を滑りこける者が続出する。 そのため地元の人たちがボランティアで道路の清掃をする。因みに俺は毎年参加していたりするが若いからという理由でそれはもう馬車馬のように働かされる。まあこっちも好きでやっているわけだが。
とももさん作 [455] -
日々が香ばしい
「ありがとう」のたった一言。そこに誠の心が在るのなら、それを発する側も受けとる側もとても幸福なことだろう。少なくとも俺はそうだ。 寒い日に飲む温かなスープのようにその一言は心へと染み渡る。 昔から人の役に立つことが好きだった。 偽善と呼ばれても別によかった。それで人助けができるなら。逆に偽善のどこがいけないのだろうか。例え行為の動機が不純なものであったとしても、それによって人を救うことができたのな
とももさん作 [441]
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