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バレル さんの投稿された作品が8件見つかりました。
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哀しいはなし3
私は最後の家に近付いた。チャイムを鳴らしても、何の反応もない。私は何のためらいもなくドアを開いた。「失礼しまぁす…」静まり帰っている。「失礼しまぁすッ!」半泣きの声で叫んだ。やっぱり何の返答もない。(ここもか…)私は漁村の全ての家を訪ねてまわった。全部で十数件の小さな漁村だった。一つ分かったこと…ここの漁村には誰も人がいない。どの家にも。そして外にも。しかし何か不自然なのに私は気付いていた。「車
バレル さん作 [636] -
哀しいはなし2
「おーいッ!出てこォいッ!」二人とも何処かに隠れて、私を脅かそうとしているのだと思った。あの年齢でふざけた性格だから…と、私は愚痴をこぼした。(だったら持久戦よ!絶対しらん顔してやる)私はふて腐れた感じで車のシートに横になった。日が強く照り、私は目をギュッと閉め、助手席に置いてあるお母さんの麦藁帽を深々と頭に被った。時間だけが過ぎた。いつもと何だか違うということに、私は気付いた。あれから一時間経
まさふみ さん作 [575] -
哀しいはなし
明李(あかり)は億劫だった。大阪の友達と海でも行って、男を引っ掛けて遊んでいた方がどれだけ楽しかったことか、と考えていた。「お婆ちゃんの家に行くの、久しぶりでワクワクするね」お母さんは陽気だ。お父さんとお母さんは日頃の疲れを落とすため、田舎でのんびりもいいだろう。でも私は高校三年生だ。最後の夏休みくらい友達と過ごしたかった。「あぁ゛〜、結局私は彼氏も出来ず寂しい高校生活を終えるんだわ」「彼氏なん
バレル さん作 [756] -
紺碧の塔5
剛留は走った。顔を見られるのが、無償に嫌だった。(麻美が何でこんなところにっ……!)「待ってェ!お兄ちゃぁん!!」かなり後方から、どうやら追い掛けてきているのだろう、麻美の声が聞こえる。しかし、所詮高校生と小学校低学年の足だ。すぐに離されていく。公園から数百メートル離れた商店街に逃げ込んだ。麻美の姿は見えなくなっていた。同時に、何とも耐えがたい寂しさと切なさに襲われた。妹から逃げている自分が酷く
ニワトリ仙人 さん作 [647] -
紺碧の塔4
――辺り一面の花畑。そこにまだ幼さが残りながらも、輝く瞳で前方を見つめる若者がいた。蝶が、その若者の頭上をはしゃぐ無垢な子供のように飛び去っていく。そよ風が吹き、花畑はそれに身を委ね、綺麗なうねりを作り出す。「老怪よ」若者は澄んだ美声で、背後に呼び掛ける。その、醜く小汚い老猿は、まるで枯れ木の枝を連想させるような華奢な長い腕で白く伸びた髭をさわり笑んだ。若者は悟った。「悪戯者だな、相変わらず」若
ニワトリ仙人 さん作 [577] -
紺碧の塔3
「ただぃまぁ…」 麻美はうつ向いたまま、玄関に立っていた。普段は笑顔の絶えない可愛い顔も、その時は暗い寂しい疲れた顔付きになっていた。「…兄ィのバカ」 靴をだらしなく脱ぎ、亡霊のように廊下をヒソヒソと進んだ。瞳は熱くなり今にも弾けそうだった。 廊下の突き当たりの部屋は台所だ。台所の机の上にはロウソクの8本立ったケーキが置いてある。麻美は悲しそうにそのケーキを眺めた。「アラ、帰ったの?コンビ
ニワトリ仙人 さん作 [677] -
紺碧の塔2
「…お前はじきに死ぬ……憐れな奴よ………ワシに出来るのは、お前さんを彼の悪名高き邪神の眠りし塔………紺碧の塔………そこへ導くことくらいじゃ………」 ジリリリリーン!! やかましい目覚ましの音が、淡い朝日の射し込む小部屋に鳴り響く。 もぞもぞとベットの中から、いかにもだらしない半裸の男が姿を現した。「…って、二日酔い…」 男は金髪がかった頭を右手で抱え、空いた方の左手で目覚ましを思いっきり叩いた
ニワトリ仙人 さん作 [664] -
紺碧の塔
剛留(たける)は高校入学時から、何かに苦労した記憶がない。 勉強は常に学年のトップクラスにランクインしていた。これと言って頑張ったワケではない。ただ普通にいい点をキープできた。 女に困ったこともない。 声をかけただけで着いてくる馬鹿な女達。可愛くメイクし、何でも買ってくれ、どんなエッチなことをしても怒らない。 彼女らの幸せそうな表情を潰すのはたわいもなかった。ふるのは、いつもこっちからだからだ
ニワトリ仙人 さん作 [789]
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