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矢口 沙緒さんの投稿された作品が226件見つかりました。
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魔女の食卓 38
戸倉「愛っていうのはね、特定の異性を本能で求める事よ。ただそれだけの事で、ほかの要素が入り込むスキはないの。原始的な感情だけど、それだけに純粋って言えるわよね」朝倉「そうね。例えば『やさしいから好き』とか『誠実だから好き』とか、よく言うじゃない。でもさぁ『何々だから好き』っていうふうに、自分を納得させようとしているような理由を付けているうちは、きっと愛じゃないのよ」山口「じゃ、結婚は?」戸倉「結
矢口 沙緒 さん作 [412] -
魔女の食卓 37
*焼き鳥屋のテーブル席で、OLの山口、戸倉、朝倉が話している*山口「あたしさぁ、最近悩んでんだ」戸倉「…悩む?あんたが?ちょっと、寝言はレム睡眠の時に言ってよね」山口「いいじゃない、あたしが悩んだって。あたしだって、恋のお年頃なんだから」戸倉「なになに?タツノオトシゴろ?」山口「恋のお年頃よ、馬鹿!なによ、タツノオトシゴろって。あたしは辰年生まれじゃないわよ」朝倉「ちょっと、なに上方漫才みたいな
矢口 沙緒 さん作 [368] -
魔女の食卓 36
『メインディッシュ』 最後の晩餐 ひとくち食べれば あの歌が… ふたくち食べれば あの人が… みくち食べれば あの頃が… 思い出となって よみがえる そんな料理を 最後に食べたい眠れなかった。大西麗子はベッドから起き上がると、部屋の電気をつけ時計を見た。午前四時を少し過ぎていた。納得のいかない事の積み重ねが、段々と形になり、やがては明確な疑惑となる。彼女は昨日飲みかけのラ
矢口 沙緒 さん作 [400] -
魔女の食卓 35
「その人はどうしました?」「自殺したよ。わしと会ってから数日後にな。…今になって彼の言う事が理解できる。彼女の作る料理は、まさしく麻薬だ。我々人間なんかが口にしてはいけない、禁断の果実だ。…こんな話をしている今でも、わしの体は彼女の料理を要求している。あの味を、あの香りを、本能が求めてるんだ。それを断ち切る自信がない。彼女の料理を、ただの料理として受け入れられる人間なんか、この世にはいないのかも
矢口 沙緒 さん作 [383] -
魔女の食卓 34
ひとつの料理には、唯一の正解がひとつだけあり、あとの物は意味のない間違った不正解でしかない。この店では、そのたったひとつの正解を食べさせてくれるんだ』そう彼は言ったよ。わしには極論としか思えなかった。そんな事があり得ようはずかない。育った国や地域が違えば食習慣も違う。当然、味の好みも違ってくる。親しみやすい味、なじみにくい味。年齢によっても、あるいは男女によっても好みは別れる。甘党もいれば、辛党
矢口 沙緒 さん作 [389] -
魔女の食卓 34
ひとつの料理には、唯一の正解がひとつだけあり、あとの物は意味のない間違った不正解でしかない。この店では、そのたったひとつの正解を食べさせてくれるんだ』そう彼は言ったよ。わしには極論としか思えなかった。そんな事があり得ようはずかない。育った国や地域が違えば食習慣も違う。当然、味の好みも違ってくる。親しみやすい味、なじみにくい味。年齢によっても、あるいは男女によっても好みは別れる。甘党もいれば、辛党
矢口 沙緒 さん作 [383] -
魔女の食卓 33
藤本はしばらく黙っていたが、やがてその重い口を開いた。「一度だけ『サマンサ・キッチン』という名を聞いたよ。わしの古くからの親友でな、やはり食べる事が非常に好きな男がいた。ある日、彼はわしにこう言ったよ。『最近、素晴らしいレストランを見つけた。すっかりハマってしまって、通い詰めだよ』とな。彼の料理に対する評価はいつも辛口で、その彼がこんなに誉めるのを、わしは見た事がなかった。じゃ、今度連れていって
矢口 沙緒 さん作 [361] -
魔女の食卓 32
「石崎君、わしは彼女を崇拝しそうじゃよ。でも、どうしてこれ程の店を閉店したのかね?」「三年前に母が亡くなって、店を続けられなくなったんです」「そうなのか、それは残念だな。ところで一度も聞いてなかったが、このレストランはなんという名前だったのかな?」「このレストランの名前は『サマンサ・キッチン』です」石崎武志が答えた。それを聞いた藤本の顔が、一瞬青ざめた。今までの笑顔は消え、急に深刻な表情をした。
矢口 沙緒 さん作 [392] -
魔女の食卓 31
「専務が想像している以上に、彼女は専務を驚かせるはずです」「おっ!来た来た!スープが来た!」そう言った藤本は、すでにスプーンを手につかんでいた。石崎武志と藤本は、食後のコーヒーを飲みながら、今出された料理について語り合っていた。特に藤本はすっかりご機嫌で、『こんなにうまい物は食べた事がない』を何度も繰り返していた。厨房から出てきた川島美千子が、ほかのテーブルの椅子を引き寄せ、二人の座っているテー
矢口 沙緒 さん作 [376] -
魔女の食卓 30
そう言って、料理に目を据えたまま、無意識にワインを手に取り口にした。そして今度は、藤本の目が、料理からワイングラスへと移動した。驚くべき相性。よく『この料理には、このワインが合う』と簡単に言う。しかし、これはどうだ!『合う』と言う言葉を越えている。この料理には世界中のワインの中で、このワインしか適合しない。この料理とこのワインは、この世で唯一無二の完全なる組み合わせだ。なんという料理、そして、な
矢口 沙緒 さん作 [372]