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矢口 沙緒さんの投稿された作品が226件見つかりました。

 
  • 魔女の食卓 9

    「あっ、はい」「ちょっとぶしつけな話なんだけど、今日会社の帰りに、君の家に寄っちゃまずいかな」「私の家に?」 「ああ、子供じみた事を言うようだけど、どうしてもあのクッキーを、今日欲しいんだ。もし君さえ迷惑でなかったら…」「そんな迷惑だなんて、私は別に構いませんけど、でも私の家はちょっと遠くて」「いや、無理を頼むんだから車で送るよ、君の家まで。なんだかあのクッキーにすっかり魅了されちゃったみたいで
    矢口 沙緒 さん作 [380]
  • 魔女の食卓 8

    もちろん『はい』と答えると彼は信じていた。彼の前では女性はみんなそうだった。彼が何かを頼めば、必ず『はい』と答えた。それも嬉々として。みんな彼の期待に喜んで応えようとした。だから自分がこう頼めば、あのクッキーは必ず明日には手に入る。そう決めつけていた。しかし、川島美千子はまた困った顔をした。「実は私、明日から三日間休暇を取ってるんです」「休暇?」「ええ、有給休暇。といっても、別にどこにも行く所が
    矢口 沙緒 さん作 [385]
  • 魔女の食卓 7

    翌日、午後三時。デスクで書類に目を通している石崎武志のそばに、手にトレーを持った川島美千子が近付いてきた。「あの、石崎部長。コーヒーが入りました。」「ありがとう、そこに置いといてくれ」石崎武志は書類から顔を上げずに答えた。「それから、ひとつですけど、よろしかったらクッキーも…」「ああ、いただくよ」そう答えながらも、彼の目は書類から離れなかった。川島美千子はデスクに置いたコーヒーカップの横に四角い
    矢口 沙緒 さん作 [375]
  • 魔女の食卓 6

    山口「そうよ、わがままで、タチが悪くって、意地悪で、ひねくれてて、陰険で、素直さがなくって、頑固で、思いやりがなくって…ええと、それから…」 朝倉「ヒガミって怖いわねぇ。こんな所で根拠のない悪口言ったって、しょうがないじゃない」山口「だって、こんな事でも言ってなくっちゃ、落ち込みから立ち直れないもん」朝倉「ねぇ、体調が悪くないのに、病院の待合室に行く人がいるの知ってる?」戸倉「いったいなんの話よ
    矢口 沙緒 さん作 [365]
  • 魔女の食卓 5

    「ああ、麗子か。どうしたんだ今頃」「ちょっと支店長と打ち合わせがあったのよ。これからまた本社に帰るんだけど、でも今日は仕事が早く終わりそうなの」「そうか。よし、僕も今日は早めに切り上げるか」「ほんと、じゃ食事に行きましょうよ。いいレストラン見つけたのよ」「フレンチか?イタリアンか?」 「フレンチよ。『ペリニィヨン』っていう銀座の小さなお店なんだけど、私、気にいってるのよ。特にデザートの『木苺とア
    矢口 沙緒 さん作 [383]
  • 魔女の食卓 4

    山口「大西麗子って、あの有名な…」朝倉「そうそう、あの大西麗子よ。ケンブリッジ大学卒、語学力抜群、頭脳明晰、行動力とスタミナは、その辺の男なんか問題じゃないそうよ。彼女のアドバイスのおかげで、海外との大きな取り引きがいくつもまとまったんだって。社長が言ったらしいじゃない、秘書は二人も三人もいらないって。彼女が一人いれば全てがうまくいくって」戸倉「確かに中身も凄いけどさぁ、外壁だって並大抵じゃない
    矢口 沙緒 さん作 [381]
  • 魔女の食卓 3

    『スープ料理』 魔法のクッキー  女はみんな  魔女である  なぜなら  誰でもひとつは  魔法を  使えるからだ*社員食堂でOLの山 口、戸倉、朝倉が話 している*山口「ねぇねぇ、今度本社から転勤になった石崎部長ってステキよねぇ。まだ若いんでしょ」戸倉「三十一よ。それで部長だもんねぇ。イケメンだし、背は高いし、頭はいいし、性格も穏やかだし、その上ド・ク・シ・ン!独身なのよねぇ。至れり尽くせ
    矢口 沙緒 さん作 [397]
  • 魔女の食卓 2

    「いえ、あの…大丈夫ですから…」川島美千子はバッグを開け、中から白いハンカチを取りだし、顔を拭き始めた。その様子を見ながら、大西麗子は泥水でシミだらけになった彼女のスーツを値踏みしていた。そして、バッグから財布を取りだし一万円札を五枚抜き出すと、彼女の前に差し出した。「これで新しい洋服を買ってちょうだい」「本当に大丈夫です。お金は結構ですから」「素直に受け取ってよ。それで済むんだから」そうよ、そ
    矢口 沙緒 さん作 [397]
  • 魔女の食卓 1

    『オードブル』 シェフのおまかせオ ードブル雨が降っていた。7月だというのに少し肌寒いくらいの薄暗い朝だった。低く垂れ込めた黒い雲は、まるで水をたっぷり含んだスポンジのように雨を落とし続けていた。地下鉄の駅を出た川島美千子は、いつもの朝と同じように会社への道を歩き始めた。黒い傘をさし、少しうつむき加減で、彼女はびしょ濡れのアスファルトの歩道を歩いていた。地味なグレーのスーツに身を包んだ彼女は、
    山口 沙緒 さん作 [436]
  • 魔女の食卓 『開店』

    本人のお客様は2組様 1組目4名様 川島美千子 支店営業部OL 石崎武志 支店営業部部長 大西麗子 本社社長秘書 藤本 支店専務 2組目3名様 OL山口 小太りで能天気。呆 れ返るほど単細胞。 「もっとシッカリし ろ」と、周りの人に 言われるが、本人は 自覚なし OL戸倉 小柄で痩せっぽち。 年を誤魔化す傾向あ り。中途半端なキテ ィラーで、いつも山 口に突っ込みを入れ る。突っ
    山口 沙緒 さん作 [430]
 
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