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水無月密さんの投稿された作品が35件見つかりました。

 
  • ベースボール・ラプソディ No.60

     その少女は強い陽射し避けるように、木陰の中にそっと身を寄せていた。 時折吹く南風が少女の白い衣服を揺らし、木漏れ日を反射してその存在を風景の中で特別なものにしていた。 少女がもつ独特な雰囲気に、橘華ナインのほとんどが夢の中に迷い込んだような、幻想的な錯覚をうけていた。「あれっ、藤咲じゃねぇか、久しぶりだなぁ」 その存在に気づいた八雲が声をかけると、少女はそれを待っていたかのように微笑んだ。 仲間
    水無月密さん作 [830]
  • 流狼-時の彷徨い人-No.73

    『五感に頼らず、オーヴで相手の気配を察知する戦術に切り替えたか。 オーヴの存在が五感の延長線上にある事に、気づいていたようだな。 …正しい判断ではあるが、それでもあの男の動きはとめられまい」 冷静に状況を見据えるノアは、段蔵の身体能力の秘密に見当がついていた。 それ故に、この男の動きに常人がついていけないことを理解していた。 半次郎が即座に戦術を切り替えたことで、段蔵の闘争本能はさらにかきたてられ
    水無月密さん作 [483]
  • ベースボール・ラプソディ No.59

     総合力では聖覧に遠く及ばないが、守備力だけを比べれば引けは取らないと、哲哉はこの試合で自信を得ていた。 その根拠は、外野の両翼を守る高野と後藤の守備の変化からきていた。 もともと守備の悪くない両名ではあったが、外野手の後逸が失点をまねくと知る彼らは、堅実な守備を心掛ける余り動きに果断さを欠いていた。 本来ならば内野陣と大差ない実力があるだけに、哲哉にはそれが残念でならなかった。 更にいえば、高校
    水無月密さん作 [900]
  • 流狼-時の彷徨い人-No.72

     ノアはこれを好機と受け取っていた。 どうやら段蔵は、半次郎の中にひそむ無限の可能性に興味をもったようである。 今殺すには惜しいと考えているのであれば、この男との闘いは半次郎にとってまたとない経験になる。 ノアはそう判断していた。「……よかろう。 だが、キサマの剣が邪な気をはなった瞬間、ワタシの剣がその身体を貫くと心しておけ」 剣を納めるノア。 だが、その身体からオーヴが消える事はない。 ノアの牽
    水無月密さん作 [621]
  • ベースボール・ラプソディ No.58

     八雲達が参戦する地区予選のメイン球場は、四半世紀ほど前に建設された、こぢんまりとした球場である。 球場自体には然ほど特徴はなく、年に一度プロ野球の試合が行われる程度の、何処にでもある地方球場であった。 だが、その遊歩道の桜並木には人の心を引き付ける美しさがあり、無機質な建造物に彩りと安らぎを与えていた。 薄紅色の花が咲き誇る季節には見る者を魅了し、桜の名所として人々に愛されていた。 日差しの強く
    水無月密さん作 [908]
  • ベースボール・ラプソディ No.57

     浦賀工業を手玉に取った哲哉は、ベンチ内にて他の仲間達とともに帰り支度をしていた。 そんな中、一人無表情に浦賀工業ナインを見つめる八雲に気づき、語りかける。「どうした? 強豪相手に完封試合をしといて、随分と浮かない顔してるじゃないか」「…浦工を完封したのは野手のみんなだ、オレの功績じゃねぇよ」 視線をうつさぬまま、八雲はこたえた。「……浦工の野球は、ただ勝つことだけに執着したものだった。 そんな野
    水無月密さん作 [882]
  • 流狼-時の彷徨い人-No.71

    『視覚でおいきれぬ攻撃に、身体が無意識に反応していた。 どうやらコゾウの水晶眼は本物のようだな。 …たが、惜しむらくはその能力に身体能力がついていけぬ事か」 どんなに段蔵の攻撃を先読みできても、かわせぬのならば意味がないのである。 今の攻撃を試金石として仕掛けた段蔵は、その結果に昂揚していた。 半次郎の一挙一動に垣間見る、無尽講の才能と可能性に。 段蔵にしてみれば余裕を残した動きではあったが、それ
    水無月密さん作 [581]
  • ベースボール・ラプソディ No.56

     肩を落とし、重い足取りでベンチへと引き揚げる浦賀工業ナイン。 その教え子達を迎える森本は頭を下げ、彼らに敗戦の責任を詫びていた。 全ては、自分の作戦ミスがまねいた結果であると。 勝負を急ぎすぎたと、森本は今更ながらに後悔していた。 持久戦にさえ持ち込んでいれば、控え投手のいないチームになど、いくらでも勝算があったはずなのだから。 それを、三回戦で対戦する予定であった聖覧に想いがはせるあまり、目前
    水無月密さん作 [763]
  • 流狼-時の彷徨い人-No.70

     半次郎は完全に段蔵の姿を見失っていた。 だか、その意識とは裏腹に、彼の身体は右側面へと反応していた。 その刹那、彼の右腕を激痛がおそう。 表情を歪める半次郎。 彼はすぐさま苦無を抜き捨てると、鋭い視線を段蔵にむけた。 その瞳には、動揺の色が僅かにうかがえていた。 うけた傷は浅くはないが、それでも右腕は自由に動く。 致命傷ではない。 だが、今の苦無に毒が塗られていたとしたら。 忍者と呼ばれる種の者
    水無月密さん作 [537]
  • ベースボール・ラプソディ No.55

     橘華高校野球部の二回戦、浦賀工業との試合は初戦と同じ蒼天の下でおこなわれた。 ただその観客席は初戦と違い、多くの観客を集める試合となっていた。 浦賀工業の監督である森本はスコアボードを見つめ、その表情をくもらせていた。 自軍に列んだ零の数は八つ。 そして今、最後の零が点灯しようとしていた。 浦賀の敗因は、八雲の存在を軽視したことにあった。 鈴宮工業戦の偵察報告をうけた森本は、攻守の要はそれぞれに
    水無月密さん作 [1,059]
 
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