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紫 さんの投稿された作品が10件見つかりました。
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存在
味方は誰もいなかった見上げた空は滲んでたけどもう少し生きろともう少し探せと言ってる気がして君に出会った君が笑顔でいる限り僕は大丈夫君に笑顔がある限り君も大丈夫僕は君にだけいつも両手を広げてる逢えなくても離れてても僕はここにいる
紫 さん作 [402] -
続7 両手 掴み取る何か
無償の愛は知らないがあたしは近しい人の死に際にあって自分のなかにそれに近いものがあることを知る。義母が踏み殺したインコは目から血を流しながらあたしを見て口ばしは泡だらけだった。あたしの目からこれでもかという程、泪の粒が転がり出てあのフアフアな小さな体に必死にマッサージをしながら強く願った。「もし神様がいるならあたしの命をこの子にやって」「あたしは今死んでもいい」祖母と言われた人はいつもあたしを不
紫 さん作 [309] -
続6 両手 掴み取る何か
自分に向ける刄と片寄った欲求にバランスが取れなくなったあたしは一番手軽でさして不安もない多数の男に走った。愛するなんて愛されたことないからわからない、甘え方も知らず若さ故に群がる男達のただ一時の肌の温もりがあたしの信じられる唯一現実だった。心底好きということがわからなかった。「何故だ」「他にいたのか」「俺じゃないんだな」あたしは誰かひとりなんて言ってない、みんな優しい人であの時はあたしを必要とし
紫 さん作 [280] -
続5 両手 掴み取る何か
あたしは高校もそこそこに家を捨てた。これでも当時のあたしは彼等が仲良くなることが夢だった。儚い夢だった。中学時代は勉強もやった。唯一心のよりどころだった管楽器演奏で海外の話もあったが先生が家に来て彼等を説得すると熱く語ってくれたが家に先生が来て物の五分であたしのよりどころは消えた。殴り追い返すことしか出来ない彼等に愛想が尽きた。子供の希望をそういう方法でしか潰すことが出来ないのだ。首を絞められた
紫 さん作 [355] -
続4 両手 掴み取る何か
あたしの幼い頃の強烈な思い出は欲しかった玩具をサンタさんが持ってきたことなど子供らしいものは全くない。シラフで毎日仕事にも行かず義母やあたしに暴力ばかり振る義父はコミュニケーション能力が欠如していたのかもしれない。そんな義父と義母であっても仲良くした時期があった。理由はやられるならやる側にという単純な物だけに長くは続かなかった。しかしあたしには地獄だった。ある明け方、ただ息が苦しかった。あたしは
紫 さん作 [316] -
続3 両手 掴み取る何か
あたしがあたしを元に戻らない様にするためか何もかも消し去りたかったのか、刑事の手の温かさを頭に感じながら泣き続けた。どの位時間が経ったのかわからないが枯れない涙はないと知ったあたしは枕元のティッシュで顔中拭いた。涙か鼻水か涎かわからないほど悲惨な顔を見ても刑事は何事もない様な顔でいたのは今でも覚えている。「正直に話せるか」あたしに他人でありながら人の温かさを教えた刑事は真っ直ぐに聞いてきた。こん
紫 さん作 [301] -
続2 両手 掴み取る何か
明らかに刑事とわかる男は周りに誰もいないかの様にベッド脇の叔母らしき女性には目もくれず右手でシッシッと虫を追い払うみたいな仕草をした。今まで迷い猫だった警官がロボットみたいに叔母らしき女性を廊下へ誘う。「でも」抵抗しながらもつまみ出された。刑事はどうせ尋問なんだろうと斜に構えたあたしの目をじっと見ながら筋肉の塊みたいな手をあげた。また殴られるかと反射的に顔を背けたあたしは刑事の予想もしない行動に
紫 さん作 [305] -
続 両手 掴み取る何か
目を開こうとしたら右目に激痛が走った。「あっ」思わずうめいた声とも言えない音に反応を示したのは警官だった。「気付いたの?」叔母らしき女性が慌てながら「ちょっと出て貰えます?」警官にふてぶてと言うと警官は何故か素直に病室から出る。叔母らしき女性は義母の妹と言う話だが一般的な親戚付き合いなどないからあまりよく知らない。キンキンと高い声で何か言っているがあたしは体を確認した。足は動く、手は利き手に痛み
紫 さん作 [309] -
両手 掴み取るもの
生温かく頬を伝っている液体はあたしが手をついた床の木目に落ちた。痛みより先に「床が汚れる」とぼんやり考えたほんの数秒はすぐに義父の怒号とともに現実に戻される。いつもそうだ、もう痛みを感じないあたしになっていた。ポトポトと音をたてて床に液体が溜ってく。どうも目のあたりと口の中かららしい。視界が赤くなってきた。握り拳を掲げ訳のわからないことを口走りながらあたしが飛ばされた勢いで砕けた襖の上を突進して
紫 さん作 [396] -
明日の向こう側
あの人は何を思い笑うのだろうあの人は何にうちひしがれて泣くのだろう煙草の煙の向こう側にたくさんの人の人生が見えてあたしはひとり涙を堪える親も兄弟も家庭も何の後ろだてもなくひとりきりの信じられるのはこのファーストフードの椅子の温もりだけ自分を守るためだけに生きてきた心の奥底にあるあの柔かな感じだけを忘れちゃいけないといかなくちゃあの明るい陽の下はいつも気を許す事のない野生の世界
紫 さん作 [371]
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