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Gon さんの投稿された作品が14件見つかりました。
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Toy
イチローを見つけたのは粗大ゴミ廃棄場だった。ゴミの山のてっぺんに、イチローはちょこんと座っていた。はじめは子供が迷い込んだのかと驚き、急いで駆けよった。遠目に人間の子供にしか見えなかった。イチローは壊れた人形よろしく、同じ科白を繰り返し繰り返し口にしていた。「ご主人様、愛しています。愛しています・・・」そこに誰もいないのに、「愛しています・・・」繰り返し繰り返し。清掃員の僕が近づいても、まるで視
Gon さん作 [254] -
ナルシズム
6パックに割れた腹筋。体脂肪を削ぎ落とし、筋肉を鍛えた見事な体。甘いマスクはいまも変わらずこの顔に張り付いている。完璧なボディ。ずっと夢見ていた。老いは怖くない。金に糸目をつけず、さる手術を受けた。東欧諸国に伝わる、知る人ぞ知る秘伝のエステである。誰もが受けられるわけではない。気難しい先生で、いくら紹介でも彼のお気に召さない人は受けることが出来ない。僕はたまたま運が良かったのか。それとも彼を納得
Gon さん作 [262] -
ジイ
体が疼く。誰かと肌を合わせたい。誰かに抱かれたい。でも、そんな奇特な人間はこの世にはいない。きっと。いるならとっくに現れているはずだから。鏡の前で服を脱ぐ。自分の息づかいで鏡が曇る。自分の裸体に興奮する。胸に手を這わせ、まさぐる。来る快感に体は待ちきれなくて興奮している。でも僕の目は静かで心は冷えている。僕のその空虚な胸に、性器を膨らませている熱い血潮が注がれることはない。目を瞑り、理想の相手を
Gon さん作 [312] -
ナイフ
白い肌に赤い傷をつけてやる。鋭利な痛みがスッと走る。一度つけてしまえば、どうってことない。むしろ恐怖はナイフをその手にかざす時のみ生ずるのだ。真新しい肉体の損傷口から体液が外へ流れ出す。舐めてみると塩辛い。生命力に溢れた液体。己の命を食する感覚。生きている実感が沸く。オナニーとはまた別種の衝動が神経を流れる。お気に入りの刃渡り15cmのナイフはアウトドアのショップで購入した。もう僕にはなくてはな
Gon さん作 [264] -
ファンレター
彼女から手紙が来たのは、僕がデビューして間もない、もうかれこれ8年も前になるだろうか。グループのデビューシングルは泣かず飛ばす。さっぱり売れなかった。だから当然「あなたのファンより」なんて手紙が来たことに誰もが驚いた。明日には消えるかも知れないグループなのに。コンサートの楽屋には花やプレゼントが届き、手紙は300通を数えた。その甲斐あってかどうかわからないが、グループはいまに至るまで生き延びて、
Gon さん作 [206] -
花
お電話ありがとう。わたしはリタ。あなたがどこの誰かなんてどうでもいい。わたしが誰かなんて気にしないでちょうだい。わたしはリタ。ただのリタ。男か女なんて関係ない。秘密はわたしとあなただけのもの。なんでも話していいの。あなたの辛いこと、一緒に分かち合いましょう。ここはそのためのダイヤル。電話してくれてありがとう。うれしい。会うことは出来ないの。電話でお話するだけ。わたしとあなたは電話線で繋がっている
Gon さん作 [271] -
告白
親愛なるお母様へもうお見合いの話は持って来ないで下さい。僕に結婚は無理です。もう言います。僕は同性愛者です。いままで黙っていてごめんなさい。中学からひとりで悩んでいました。言ったら嫌われそうで、誰にも言えないまま今日まで来てしまいました。ビックリした?突然こんなメール一方的に送りつけてごめんなさい。口下手だから、面と向かってだと、うまく話せる自信がなかったのと。まだそんな勇気が持てなかったし。も
Gon さん作 [328] -
ストーカー
幸一郎さん、今日も帰りが遅いのですね。お仕事忙しいのかしら。こうして、アパートまで来ているのに、会えなくて残念。もう今日で5日目。だから、会えない代わりに手紙を書いて、私の気持ちを伝えます。住所は、ごめんなさい、免許証を見たの。あなたがトイレに立った時。でも、そんなこと幸一郎さんなら許してくれるでしょ?だって「結婚しよう」って言ってくれたもん。お店のママはね、からかわれたのよって言うの。酷いでし
Gon さん作 [304] -
コインロッカー
池袋、地下鉄駅、改札横のコインロッカー。ボクはそこで生まれた。赤ん坊の泣き声がしたので駅員さんが扉をこじ開けてボクを取り出した。だから父親はだれかと問われれば、顔も知らないその駅員さんだとボクは答える。それから16年が経ち、ロッカーは撤去され、ボクが確かに存在した証はどこにもなくなった。ボクは拾われては捨てられ、拾われては捨てられた。だが、最近、捨てられないコツをつかんだ。身体を自由にさせてやれ
Gon さん作 [287] -
スカウト
「君かわいいね」渋谷の道玄坂。サングラスに野球帽の男に声を掛けられた。無視しようとしたら、男は名刺を差し出した。フォトグラファー 飯田毅夫。20代にしか見えない。「モデルを探していて。君顔いいし、体つきもいいからピッタリなんだよね。どう?アルバイトしてみない」飯田の巧みなお世辞にいい気になってしまった。すぐに終わるからという二言目に頷いていた。仕事内容も聞かない内に。いかがわしいに決まっている。
Gon さん作 [232]
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