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k-j さんの投稿された作品が21件見つかりました。
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君に捧ぐ 〜11〜
僕はナイトにあの日の君を重ねていたのかも知れない。「もしかしたら赤ちゃんができたかも知れない…」 君がそう言ったのは付き合って3ヵ月ほどの頃だった。 来るものが来ないのだという。まだはっきりしたわけではなかったけど、僕の中に不安が広がった。「まだわからないから、とにかくわかる頃になったら病院に行こう」 僕は言った。しかし君は、「私の問題だから私がなんとかする」「そんなもんじゃないだろ!
k-j さん作 [560] -
君に捧ぐ 〜10〜
僕はまず、子猫の寝場所作りに取りかかった。段ボールに僕のパーカーを敷いただけの簡単なやつだったが、どうやら気に入ってくれたみたいだ。 それから、ツナ缶詰を皿にあけ、段ボールの中をに置いた。最初は警戒していた子猫も、しばらくしたらきれいに食べてくれた。 子猫は寒そうにしていた。なのでパーカーに寝そべっている上にタオルを掛けてやった。 子猫は時折鼻水を詰まらせたような、苦しそうなうめき声を出した
k-j さん作 [692] -
君に捧ぐ 〜9〜
彼らは今、それぞれ名前が付いて大きく育っている。 黒い子猫は姫、他の2匹はラムと空。それぞれ拾ったときの倍以上の大きさになって元気に日々を過ごしている。 3匹を拾ったあの日。僕と君は彼らを抱いて近くの動物病院に行った。僕らの家は両方とも、猫を引き取ることは難しかったのだ。動物病院なら、もしかしたら預かってくれるかも知れない。そんなことを思いながら行ったのだか、もう夜の遅い時間だったので病
k-j さん作 [678] -
君に捧ぐ 〜8〜
「な〜いちょ、どうちたの? お腹減ったの? さっき食べたでしょ?」 君がナイトに話しかけるときは、何故か赤ちゃん言葉になっていた。僕の隣ではナイトと君がじゃれあっている。 僕はとても満ち足りていた。テーブルには君の手料理。いつの間にか僕らの息子になっていたヤンチャな子猫。そして君――。 まるで本当の夫婦のようだった。こんな日がずっと続いてほしい。僕は心からそう願った。 ナイトは僕らが拾った
k-j さん作 [610] -
君に捧ぐ 〜7〜
君と僕は出逢うべくして出逢ったんだと信じていた。運命の人と巡り逢えたのだと思っていた。「運命って与えられるんじゃなくて、意識的にも無意識的にも、自分で決めたことなんだって。だから『これは運命なんだ』って言うのは、『これは自分で決めたんだ』っていうことになるんだって」 最近流行りのスピリチュアルなんちゃらの影響を受けたのか、君はある時言った。 僕はどちらかといえば運命論者だ。でもネガティブ
k-j さん作 [602] -
君に捧ぐ 〜6〜
テレビに駄菓子屋が映った。ただそれだけだった。「駄菓子屋行きたい!」 君は小さな子どものようによくそう言った。「いいよ。しっかし本当に駄菓子屋大好きっ子だよな」 僕が苦笑しながら言うと、「美味しいしたくさん買えるから好きなんだもん」 君はまた子どものように無邪気に笑った。 僕はそういう君が大好きだった。君のその笑顔に何度癒されたことだろう。 歩くとき必ず手を握ってくる君。ふたりとも自
k-j さん作 [641] -
君に捧ぐ 〜5〜
君はある時こう言ったね。過去に戻りたいと。『私と出逢うよりずっと前の、あの人に会う前のあなたに会いに行きたい。あなたはこれから軽い行動をしてすっごく後悔してしまうの。それに、そのことである女の子をすっごく傷付けてしまうの。だから絶対そういうことはしないでねって頼みたいの』 そう言って悲しそうに笑った。僕は君を抱き締めることしかできなかった。 その時は僕もそう言っていた。自分があんな軽いこ
k-j さん作 [675] -
君に捧ぐ 〜4〜
君に初めてあったあの日。僕は浅草に行った帰りだった。 君に話しても信じてくれなかったけど、僕はあの日浅草寺で願い事をしたんだ。『いい人と出逢えますように』 その夜に君に出逢った。ベタ過ぎて信じられないのもわかる。僕自身も呆れるほどのベタさだ。 だから君が声を掛けてきたときは本当に驚いた。しかも女の子に声を掛けられたことなんて一度もなかったから、二重に驚いた。 僕らはお互いにお子様だっ
k-j さん作 [665] -
君に捧ぐ 〜3〜
過去を悔やんでもしょうがない。解ってる。泣いてもどうにもならない。解ってる。そう、解ってるのに……。 もうあの頃のふたりには戻れない。もう君に逢うこともない。出逢う前より距離が離れてしまった。 君が僕から離れてからしばらくして、僕の元に一通の封筒が届いた。中には君がいた。 一緒に過ごしたクリスマス。妙に若いサンタ二人に囲まれて撮った写真。写っているカップルは少し照れながらも、とても幸せそ
k-j さん作 [1,055] -
君に捧ぐ 〜2〜
出逢わなければよかったのかも知れない。そうすればこんなに傷付けることも、傷付くこともなかっただろう。 君に出逢ったことを後悔してるわけじゃない。むしろ感謝している。君が傍にいてくれたから、僕は人を愛することの尊さ、素晴らしさを知ることができた。君の存在がどれほど支えになっていたか。君が隣にいてくれるだけでどれほど幸せだったか。でも僕はいつからか、君が傍にいることを当たり前と思うようになり、大
k-j さん作 [846]