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輪廻 さんの投稿された作品が31件見つかりました。
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マイナス×マイナス 3
泣きながら眠ってしまったのか、気絶してしまったのか。いずれにせよ体は寒かった。雨が降っていた。若い男が傘もささずに、実穂を心配そうに見つめている。「お姉さん、家出!?何でもいいけどウチそこのアパートだから雨宿りしていきなよ!雨がスゴいから!」話しているうちに急速に雨足は強くなる。実穂はぼーっとする頭を動かすこともせず、男に連れられて行った。(私このまま誘拐されて…この人にされるがまま…なのかな…
輪廻 さん作 [169] -
マイナス×マイナス 2
その性格と外見から、実穂はお嬢様と思われており、さらに言動は人よりも鈍かった。自分で分かっていても、人に置いてきぼりをくらってばかりだった。見かねたアルバイト先の先輩たちは実穂に嫌がらせを始めた。泣きながら通い続けて一カ月後、自分のロッカーにあった制服がなくなっていた。アルバイトとは言え、実穂は接客もやっていた。制服が無くなった実穂はついに自暴自棄になり、その日からアルバイト先には行かなくなった
輪廻 さん作 [165] -
マイナス×マイナス 1
都会独特の茹だるような暑さが、歩く実穂(ミホ)の体力を容赦なく奪った。実穂はもう二十歳で、そろそろ親からも独立して良い頃だというのに就職活動はおろかアルバイトすらしていなかった。理由は簡単なことだったが、実穂にとって致命的なことでもあった。中心市街地を離れ、涼しげな木陰のある公園に入った。実穂は口元に一瞬、笑みを浮かべ近くのベンチに腰を下ろした。(ここでつい3年前はストリートダンスの猛練習してた
輪廻 さん作 [205] -
海の見える車窓・settled 完
「…でも……やっぱり俺は」トンと誰かに押されたように、嘉代は幸一に触れ、キスをした。「……やっぱり私、幸一が好き。」幸一は幸端の手紙を木机に置いて、嘉代を見つめ直した。「俺も…嘉代が好きだ。」ふたりは何度も唇を重ねた。「やっと言えたな…お互い。」嘉代は気づいた。お互いにこの気持ちを溜めていたのだ。これほどまでにお互いを思えるほどの年月が経ち、ふたりは大人になったのだ。「幸端の手紙は…あのバスの車
輪廻 さん作 [145] -
海の見える車窓・settled 17
手紙を幸一家族に見せ、事情を話すと、母親は号泣した。「物凄く落ち着いた最期だったんだと思います…。運転手さんへの…自分の愛した人への思いは別にして書いていました。普通の小学生には出来ないです…幸端ちゃんて、本当に良い子だったんですね。」その晩。幸一に手紙は渡され、妹の最期の文章を幸一はゆっくり見つめていた。ふたりで嘉代の部屋にいた。「余計なお世話だよな…。あのバカ…。」声が震えていたが、平静を装
輪廻 さん作 [113] -
海の見える車窓・settled 16
そして恋文としてだけでなく、意外な形で兄の幸一にもメッセージが残されていた。¨たぶん、コウ兄のことだから、カヨっちしかおよめさんにしないと思うなぁ。カヨっちはわたしのもくひょうの人!すっごくキレイで、びょういんに来るまではやさしくしてもらってた。びょういんに来てからは会えなくなったけど元気かな。でもコウ兄にはぜったいカヨっちしかいない!¨嘉代はとにかく驚いていた。何度か遊んだ記憶はあるが、自分の
輪廻 さん作 [116] -
海の見える車窓・settled 15
帰ると真っ先に嘉代は、部屋のあらゆるところを探し始めた。―お母さんには誰宛かは告げないで、手紙だけを隠したんだ。だからお母さんも渡せなかった。まだ隠してあるとしたら…。―\r何年も前の話なのだろうけれど、嘉代は自分がやらなければ幸端ちゃんの無念を晴らすことが出来ないと、妙な使命感に駆られた。木机の引き出しが不自然に開く箇所があったので、丸ごと抜いてみた。小さな隠し引き出しが現れた。「!……。」鼓
輪廻 さん作 [124] -
海の見える車窓・settled 14
翌日もお使いを頼まれた。嘉代は運転手が息子だったので、即座に話し掛け始めた。「嘉代ちゃんは付き合ってる人とかはいないの?」「いません!」ムキになって否定してしまったが、もう自分の中で抑えられなくなっているのでどうしようもなかった。「運転手さんは?」「前、いたなぁ。」「別れちゃったんですかぁ。残念ですね。」運転手は急に落ち着いたトーンで話し始めた。「亡くなったよ。手遅れだったらしい。」「あ…すみま
輪廻 さん作 [116] -
海の見える車窓・settled 13
嘉代はお使いをこなし帰りのバスに乗ったが、今度は父親の方が運転手だったのでまったく話さず終いだった。家に帰ると、幸一の母親は嬉しそうに運転手の話を聞いてきた。「誰にでもべっぴんさんだねって言うのよね〜あの運転手。でもなかなか顔はイケてたでしょ?嘉代ちゃん興味無い?」幸一のことで敏感になっていた嘉代はついムキになって否定してしまった。「あ、ありませんよ!!」嘉代は驚かれたのも気にせず、自分の部屋へ
輪廻 さん作 [144] -
海の見える車窓・settled 12
翌日。気だるさに襲われながら嘉代はベッドから起き上がった。服を着替え、部屋の壁に目をやった。春休み中は漁の手伝いを言いつけられている幸一のことだ。嘉代が起きる頃にはもうとっくにいなくなっている。その日はお使いを頼まれ、バスで隣町にあるスーパーまで行くことになった。バスは行き帰りで一本ずつしか出ておらず、これを逃すと嘉代には徒歩しか移動手段が無くなってしまうという恐ろしい町だった。バスは一時間近く
輪廻 さん作 [120]