トップページ >> 穂川ふうま さんの一覧
穂川ふうま さんの投稿された作品が11件見つかりました。
- 1
- 2
-
訪問者〜アラシノヨルニ〜
第四夜 樋本がいない駅「衣茶良さんっ!」僕は叫びながら樋本を探した。電車が停まっていたとしても、樋本はこの駅に必ず来ると言っていた。この駅にしかないドーナツが美味いらしい。僕はドーナツ屋に駆け込み、「ここに茶髪のライオンヘアのスーツを着た男は来ましたか?」とぜぇはぁしながら聞いた。店員はずぶ濡れの僕を見て嫌な顔をした。店が汚れると言いたいのだろう。でも今の僕には知ったことか。「来ましたか!?」
穂川ふうま さん作 [344] -
訪問者〜アラシノヨルニ〜
第三夜 ファイヤーダンサーまさか、と思った時には部屋を飛び出していた。消防車のサイレンの音はかなり近付いている。この辺で、火事が起きた事なんて一度としてなかった。なのに、どうして?樋本は大丈夫だろうか。火事の起きた場所は、僕のアパートから十分も離れていない。炎は盛大に両腕を広げて一軒の住宅を襲っている。朱く光り、神々しい程に燃えている。その雨粒さえも一瞬で蒸気と化してしまう荒々しさは、嵐にも動じ
穂川ふうま さん作 [340] -
訪問者〜アラシノヨルニ〜
第二夜 採用試験の日は。「そういえば、衣茶良さん」僕は樋本に聞く。「試験って、何があるんですか?」「んー?……」樋本は呑気な返事をした。はぐらかされたかと思ったけど、ただ寝ているだけらしい。樋本の上半身が、呼吸に合わせて上下する。間もなく、微かにいびきをかき始めた。僕は風呂に入ってから眠る事にした。風呂から上がると、樋本はソファに横になっていた。僕は風邪を引かないようにと布団を掛けてやり、自分の
穂川ふうま さん作 [346] -
解ってる=解ってない
何も解ってないくせに『勉強しろ』?『頑張って』?『大丈夫だよ』?ふざけないでよ私の事ならなんでも解るような顔して私の事を一番解ってるのは私なんだから自分で分別出来ないようなら私はとっくに人間辞めてる『ふざけるな』?『もう知らない』?『出ていけ』?解ったよ私がいなくなればそれで満足なんでしょ何も解ってないのはそっちなんだから捜したら罰金だから『ごめんね』?『悪かった』?『戻ってきてよ』?じゃあ何で
穂川ふうま さん作 [337] -
レム睡眠を続ける非生命体の夢
平穏だ暖かな部屋物体は静止している自分はただ息を吸い吐き出す生きているこの世の中には何もなかったかのようだもしかすると自分の存在も生物の進化も地球の誕生もビッグバンの発生も全てレム睡眠を続ける非生命体による夢だったのかもしれない
穂川ふうま さん作 [365] -
訪問者〜アラシノヨルニ〜
第一夜 樋本と僕。あれから僕は、樋本と二人で暮らし始めた。一週間が経ったが、強風と曇り空は全く改善されていない。「衣茶良さん、朝食が出来ましたよ」料理は僕の仕事。料理好きな母親が、僕に教えてくれた。初めは料理なんて男がやるもんじゃないと否定的だったけど、上手に美味しく作れるようになると、まんざらでもなくなった。「うぉ〜っ。美味そう!いっただっきまーす!」樋本は僕の作った飯を、毎日美味しく食べて
穂川ふうま さん作 [369] -
訪問者〜アラシノ、ヨルニ〜
−その時、僕は家に居て、嵐が吹き荒れる外の世界には眼を向けなかった−神奈川県 藤沢市僕は、新しい部屋に大満足だった。広いし、なにより家具が全て揃っている。でも、僕が以前、住んでいた町とは、全く違う。夜中になっても星が見えない程明るい。前に住んでいた町は横須賀市。穏やかな田舎と賑やかな都市が入り交じる町だった。田舎と言っても、畑や水田があるようなド田舎じゃない。凄く居心地が居心地良かった。だけど、
穂川ふうま さん作 [383] -
一台のトラックによって
「お兄ちゃん!」と、時雨は言った。「待ってよ、速いよ」兄の小雨は懸命に走る。時雨と小雨は六歳差の兄弟。時雨は八歳、小雨は十四歳。二人とも仲が良く、何時も一緒に居る程だった。しかし、小雨は先天性の精神発達障害者のため、十四歳だが心は時雨と同等だった。いや、時雨よりも幼いかもしれない。「コサメ、つかれたー!もう走れない!」「お兄ちゃん、早く来て!」座り込む兄を、時雨は一心に呼んだ。どうしても見せたい
穂川ふうま さん作 [657] -
殺生、承ります。
〜とある喫茶店?〜 中司は訳が分からず、「はいぃ!?」 と、素っ頓狂な声を放った。「いや。はいぃ、じゃなくてよ、あんだよ。会った事」 諸塚はだらし無く椅子に膝を立て、そこに腕を力無く乗せる。「知りませんよ」 中司は言う。「おい、またそれかよ。だから、会ったもんは会ったんだよ」「何処で?」「俺に仕事を、おめーが頼んだだろうが」 諸塚の口は悪かったが、どこか憎めない、無邪気さがあった。「何
穂川ふうま さん作 [428] -
殺生、承ります。
〜とある喫茶店〜「何で俺があんたのテーブルに座ってんだよ?」 深紅の髪を兎のように二つに束ねた男は言った。テーブルに置かれた珈琲に角砂糖を投げ入れている。 男の向かいに座るのは、いかにも好青年な黒髪の男。「聞いてんのかよ?中司夕紗!」 中司夕紗はたじろぎ、辺りを不安げに見回した。「知りませんよ」 中司は兎髪の男に言った。「俺さ、すっげー甘党なんだよね。だから珈琲も激甘」 兎髪の男は十個目の
穂川ふうま さん作 [434]
- 1
- 2