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武津ほずみ さんの投稿された作品が10件見つかりました。

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  • 僕らのこと?

    松本くんは、いつも優しかった。私が出来ないことは全部やってくれて、嫌な顔一つ見せなかった。だから私は、それに甘えていた。あの日、何故一馬に唇を近づけたのか分からなかった。ただどうしても、あの思い詰めたような顔つきに、どうしようもなくひかれた。思わずつまずいたと嘘をつき、その場をやり過ごしたが、松本くんと会っている間は、その嘘が胸の奥でずっと音を立てていた。「さいちゃん、ノーゼスのチケット取れたよ
    武津ほずみ さん作 [86]
  • 僕らのこと?

    母は僕が10歳の時に再婚した。本当の父親の顔すら知らなかったせいか、今の父をすぐに受け入れることが出来た。 あれは小学校の卒業直前だった。父に呼ばれた僕はいつもと同じように書斎に向かった。書斎には幾つかの参考書と、一通の手紙が用意されていた。手紙を読むよう促された僕は、そこに書かれた文字に身を震わせた。内容は箇条書きで書かれており、それは手紙と言うよりもはや契約書だった。1.今後6年間、学年3位
    武津ほずみ さん作 [195]
  • 僕らのこと?

    あの噂を聞いて以来、部活にも顔を出さなくなった。ベランダに君の姿を見るのが、今は辛い。噂が噂を呼んで、学校中がその話で持ちきりの頃には、君とあいつは大っぴらに一緒に帰り始めたりした。僕の絶望した日々は、君のせいで酷くなる一方だった。「ただいま」玄関からつながるやたらと長い廊下を、ヨチヨチと音葉が歩いてくる。「兄たんおかあり」言葉がまだうまく形になっていなくて、ようやく僕も最近何を言っているのかわ
    武津ほずみ さん作 [182]
  • 僕のこと?

    きっとほんの数秒だった。僕の世界が止まった。「つまずいちゃった。顔見ようとしたんだよ、下ずっと向いてるから」君は特に変わらない態度で言った。本当に、恥ずかしげもなく、無邪気に笑っていた。この束の間の感覚に、僕は目一杯動揺したと言うのに。 「な、なんだよ。いきなりびっくりするだろ」「ごめん、ごめん」今度は突然、高らかに笑い始めた。もう少しで腰でも砕けるのではと思うほどだった。あまりにも長い間笑って
    武津ほずみ さん作 [112]
  • 僕らのこと?

    「一馬、今日部活ねぇから遊ぼうぜ」「わりぃ。今日カテキョ」毎週水曜と金曜に、家庭教師がやってくる。意思に背いて何かを全うしようとするのは、僕にとっては絶望でしかない。憂鬱な出来事は、度々僕の進む足を重くさせた。「一馬!」気がつくと稲荷川さしかかっていた。深い緑の川からは、いつもと違う香りが漂う。僕は声に止まった。このまま振り向いたら、激しい鼓動に負けて、僕の心臓は止まるに近いほどだった。「今日カ
    武津ほずみ さん作 [93]
  • 僕らのこと?

    ようやく1ヶ月が経ち、僕は何故かグラウンドを毎日走っている。部活には入らないと決めていたのに、無理矢理僕の手を引っ張ったのは亮太だった。理由はすぐに分かった。いつもベランダの同じ場所で、唇サイズのラッパのようなものを吹いている。音はぎこちなくて、でも必死に吹いている君の姿に走るのを忘れた。そんな僕にニヤニヤしながら、亮太は蹴りとかを入れてくる。「な?入って良かっただろ?サッカー部」「だから、違う
    武津ほずみ さん作 [93]
  • 僕らのこと?

    入部して1ヶ月が経とうとしていた。私は松本先輩がいるトランペットに、絵里はフルートを選んだ。自分で言うことではないが、かなりセンスはいいらしく、私はすぐに他の先輩たちとも馴染んだ。音楽室からはグラウンドが良く見える。亮太がボールを蹴っている姿はほとんど見ることなく、常に走っている。私と絵里はそれを茶化すように、よくベランダからトランペットを鳴らした。 「うるせぇよ!」「はぁ?あんたのために吹いて
    武津ほずみ さん作 [95]
  • 僕らのこと?

    「さいか、見に行くでしょ?」小学校卒業の記念に買ってもらった携帯を、いじりながら絵里が口を開いた。「夢中になりすぎだから。それ」「だって、なんて送ろうか。軽めがいいよね」入学式の時からずっと気になっていた亮太のメアドを手に入れて、もうかれこれ1時間ほど画面と向き合っている。「そういえばさ、あのこ誰だろうね。川瀬くんとこにいつも来てる男子」「皆川一馬だよ。1組の」「何で知ってるの?」「M小学校じゃ
    武津ほずみ さん作 [113]
  • 僕らのこと?

    僕のほのかな期待は簡単に裏切れた。唯一の親友と呼ぶべき「川瀬亮太」をはじめ、同じ小学校出身のクラスメイト、そして君までもが隣の教室になった。なかなか新しいクラスに馴染めない僕は、しばらく休み時間になっては亮太のところに入り浸った。2週間くらい経ってからだった。例のごとく亮太と話していると、突然大声が奴を呼んだ。「何だよ」そう言って亮太が振り返った先には、君がいた。僕は度肝を抜かれた。とにかく凄い
    武津ほずみ さん作 [225]
  • 僕らのこと

    汐の香りが桜に乗って舞う頃、僕は真新しい学ランに身を包んでこの「稲荷川」を渡った。君を初めて見つけたこの川は、今も変わらず深い緑色に包まれている。軽やかな足音たちの中、僕だけが重い足を引きずっていた。誰もが憧れと一抹の不安と、そして希望を抱き新たな校門をくぐるこの日、僕には絶望しかなかった。しばらく川を眺めていた。深い緑色に死んだ魚や腐った枝が浮かんでいて、でも桜の花びらが清めているようで何だか
    武津ほずみ さん作 [542]
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