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岬 登夜 さんの投稿された作品が54件見つかりました。
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夜に咲く華〜その20〜
「で、上手くいったの?」紅は興味深々妙に詰め寄る。妙は黙って頷きさらに顔を赤らめた。「さあ、私もお話ししたんですから紅お嬢様も教えてください」今度は妙が紅に詰め寄った。「いや、その…。連二郎と…。くちづけを…ね」しどろもどろになりながら紅は答えた。「まぁ、くちづけだけでこんなに綺麗になるなら最後までいったらどうなるんですか?」と妙は紅を羨望の眼差しでみた。「最後までって…」妙の言葉に紅の頬は染ま
岬 登夜 さん作 [275] -
夜に咲く華〜その19〜
連二郎の腕はさらに強く紅を抱きしめる。「だって妙は?」連二郎は小さくため息を付き紅の口を口でふさいだ。連二郎の舌が紅の舌に絡みつく。やがて、息を止めたままの紅に連二郎は気付き口を離す。「すまねぇ。もう少し優しくしたいんだが押さえが利かねぇ」紅は連二郎の胸に顔を埋める様にもたれかかる。顔が紅潮し潤んだ瞳は一層香り立つ華そのものだ。「そんな顔した女連れて歩いたら吉原中の男が集まっちまう」連二郎は羽織
岬 登夜 さん作 [241] -
夜に咲く華〜その18〜
橋の向こうは通称どぶ板通り。無法遅滞でよく堀に死体が浮かぶときは大体が向こうの人間だ。お金の無い日雇い人夫などが女を買いに行くが病気持ちの女が多く性病をうつされる。また、柄の悪い連中がのさばり治安も悪くまともな者は近寄る事はしなかった。ただ、身を隠すとなれば誰も詮索しないので安全だろう。紅と連二郎はとりあえず近くの茶屋に入り、落ち着く事にした。「小物屋を売ったお金が結構あったと思うのだけどなんで
岬 登夜 さん作 [314] -
夜に咲く華〜その17〜
紅の目は自然と妙を追っていた。そういえば以前に比べ妙が綺麗になった気がする。頬はうっすらと紅をまとい腰つきや、ちょっとした仕草に女の色香がみえる。当の妙は紅に見られているのに気付かず帳場の掃除をしている。妙が連二郎と?あの簪を拾い、あの時の妙のあの反応。明け方聞いた下駄の音。どう考えても妙と連二郎は通じ合っている。何度考えても答えはそこに行き着いた。それと同時に紅の心はますます締め付けられ、妙に
岬 登夜 さん作 [261] -
夜に咲く華〜その16〜
「女は自分に子が宿ったら産むって思うものだと婆が言ってた。私の母親は身体が弱くて子供は無理だと言われたけど私を産んですぐ亡くなった。そのせいで父親は私をあまりよく思ってないのだけど婆は言ってた。女は自分の命を次に繋げる為に子を産むのだと。それは誰にも止めらない女の本能だと」「なら、俺はその本能のお陰で今生きていられるんだな。やっぱり女は強いよ。お前を含めて特に吉原の女はよ…」ごちそうさん。と小声
岬 登夜 さん作 [262] -
夜に咲く華〜その15〜
そんな紅の独り言を連二郎は耳にした。「なに、らしくなく考えてんだよ。ここは遊郭だしお前は主人。遊女はお前に買われて働いている。お前が買わなきゃ他の遊郭が買うだけだし。借金の形に売られてくる女は山ほどいる。それが現実だ。だから、せめてお前は今までの様に女達を人間として扱ってやれ。そうすれば心は少しでも救われる」「らしくないか…。そうだよね。「お前は面白い女だな。今にも折れそうなか弱い華の様で実はし
岬 登夜 さん作 [277] -
夜に咲く華〜その14〜
「あやめ姉さん、何か心配事でもあるの? なんだか元気ないけど…」あやめは紅を見て笑った。「紅ちゃんに初めて会ったのは私が16、紅ちゃんは10の時だったね。親の借金で売られて来て何人もの男に抱かれて、それでも私は私と頑張って十年、ここまで来た。やっと借金返し終えて気がつけば三十路手前。田舎では戻ってくるなって疫病神扱いされ、私って何だろうって最近考えちゃってさ」吉原の遊女の多くは借金が返せずここで
岬 登夜 さん作 [330] -
夜に咲く華〜その13〜
遠くに「紅華楼」の明かりが見える。「綺麗よね。あの明かりは消してはいけない」紅は小走りになって紅華楼に戻った。妙は紅の姿を見て涙ぐんだ。紅からいきさつを聞きまた涙を流した。「よかったぁ。本当によかったぁ」その日の夜、最後の客を送り出し紅と妙、あやめはささやかに宴会を開いた。次の日、約束通り連二郎がやってきた。「今日から世話になる。昨日は失礼したな」部屋をどうしようか考えて離れを思い浮かべた。四年
岬 登夜 さん作 [309] -
夜に咲く華〜その12〜
あまりに率直に用件を切り出したので山柴組の親分は笑った。「嬢ちゃん。あんた駆け引きとか根回しとか使わんのか。わしは外道と呼ばれる者、騙す、裏切るが商売だ。油断してると皆もらっていくぞ」「だからですよ。私みたいな小娘一人騙すのは簡単でしょう。だったら駆け引きしたり根回しする必要無いんですよ。ただし、小娘を騙してあの店取り上げちゃ吉原中の噂になって恥をかくのは親分さんですよ。ですからここは騙しっこ無
岬 登夜 さん作 [304] -
夜に咲く華〜その11〜
紅は二人の顔を見て笑った。「大丈夫かい?」あやめが駆け寄り紅の身体に手をかける。「ええ」そう答えて着物を着付け直す。紅は二人にいきさつを話す。「実際、もうダメだと思ったの。でも、あいつに…、その…、触られいるうちに、何て言うか…、身体が身体中が熱くなって、何か火が付いたように。頭の芯が白くなってきて、いろんな物が見えた。今までの事が。で、気付いたのよ。権利書を分けて相続してたこと。まだ希望はある
岬 登夜 さん作 [269]