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あこ さんの投稿された作品が35件見つかりました。

 
  • が、くさい 第八場

    自販機の前で、先生はためらいなくコーヒーのボタンを押した。「瀬戸は。」「紅茶。暖かいので。」ガタン勢いよくペットボトルが落ちる。「ん。」先生は子供に飴をやるみたいに、かがんだままの姿勢で、私に紅茶を差し出す。「ありがとうございます。」差し出されたペットボトルを両手で包み込む。暖かい。私は身体が冷え切っていたことに、今気付いた。「一服してくる。」そう喫煙室を指し、言うと先生は隔離された、ガラスばり
    あこ さん作 [171]
  • が、くさい 第七場

    私は今、先生の車に乗っている。助手席に私。後部座席には川上さんと、後藤くん。川上さんは意識も朦朧としてるみたいで、後藤くんの膝に頭を乗せて、横たわっている。眠っているようにも見える。長く伸びた睫毛が影を落とし、まるで死んでしまったジュリエットのように、とても綺麗。時折、お腹が痛むのか、眉をしかめる。後藤くんはそのたびにハンカチで汗を拭いてやっている。前髪から覗く目は、不安げで今にも泣きだしちゃう
    あこ さん作 [175]
  • がく、さい 第七場 〜川上さんの話〜

    この人は、どこまでも甘い。「…いつからだっけ。」「……ゆうくんって呼ばなくなったの。」私は独り言のように言った。「…いつだろうね。中学ぐらい…かな?」彼は思い出しながらゆっくり話す。慎重に。言葉を選びながり。「あんまり会わなくなったもんね。仕方ないよ。」「ありがとう。」私は長い間言わなかった言葉を、言うべき人に言った。「え…」後藤は驚いた顔をした。前髪の隙間から目が覗く。私の様子を伺うように。ど
    あこ さん作 [160]
  • がく、さい 第六場 〜川上さんの話〜

    「川上さん!?大丈夫??」「先生、こっちです!」「おい、川上、どうした?」頭の中で色々な声が聞こえた。「瀬戸ちゃん?」私は呻くように言った。そしてそのまま、深い泥の中に吸い込まれていった。次に目を開けると、見馴れない天井があった。「真っ白。」そこは四方を壁に囲まれた白くて、清潔という言葉しか出てこない程、無個性な部屋だった。そこが病院だと気付くまでに、暫くの時間が必要だった。私は身体を起こそうと
    あこ さん作 [162]
  • がく、さい 第五場 〜川上さんの話〜

    顔をあげると、そこには見馴れた、甘い顔がいた。甘くて甘くて、胃もたれしちゃうぐらいの。「具合悪いの?」後藤は私の顔を覗き込む。前髪が鼻先に当たって、くすぐったい。「何それ。」「何って…?」私は後藤の前髪を掴んで顔を思いっきり持ち上げた。「痛いっ…何するんだよ、」「川上さんって何よ、しらじらしい!」気付いたら大声を出していた。「だって、君が……」「やめてよ、君なんて。」「じゃあ何て呼べばいいんだよ
    あこ さん作 [178]
  • がく、さい 第四場 〜川上さんの話〜

    真剣な目を作った私は先生を見つめる。すると、先生も熱い視線を私に向けた。嘘!今、見つめ合ってる。頭の中がほわほわした。柔らかくなって、脳みそも骨も混ざって、ぐるぐるに溶けちゃうんじゃないかと思った。「おま、睫毛ズレてるぞ。」先生は半笑いで言った。一瞬何を示しているのか分からずに口を開けて馬鹿ずらしてた。きっと私。先生はそんな私の気持ちにはお構いなしに大口を開けて笑った。ひとしきり笑ったら妙に真面
    あこ さん作 [200]
  • がく、さい 第三場〜川上さんの話〜

    「じゃあ、もう帰るわ、少しだけすっきりしたし。」私は素直じゃないのだ。「うん。おやすみ。」私は返事をせずに部屋を出た。いつまで経っても後藤に頼ってしまう。頭では分かってる。でも大切にできない。だって、後藤は私のことが好きだから。私だってそこまで意地悪でも鈍感でもない。だからこそ、優しくなんてできない。傷つけて、傷つけて、私のことなんて消してしまえばいい。学祭で、英語劇をやるって決まってから一週間
    あこ さん作 [198]
  • がく、さい 第二場 〜川上さんの話〜

    「なにそれ。いつの話してんの。」私はまた、感情を押し殺した声で言う。「いつって……昔から…。」私は話を遮って立ち上がった。そして台所まで行って暖かくて甘い牛乳を流しに捨てた。白い液体は渦を巻いて暗い穴へと吸い込まれる。後藤が後ろで顔を伏せているのが分かる。「………先生のこと?」後藤は自信のない声で聞く。私は黙ったまま、残った白い筋を見つめていた。「学祭?そんなに嫌だった?」「私が…」私は声を絞り
    あこ さん作 [199]
  • がく、さい 一場〜川上さんの話〜

    私は苛々していた。苛々しすぎて苦手なコーヒーを一気飲みしちゃう程、苛々していた。「にがい………。」「砂糖、あったのに。」「にがいよ!馬鹿。」「ごめん……。」私は苛々するといつも後藤にあたってしまう。こいつは幼なじみで、親同士も仲良いから、小さい頃からお互いの家を行き来していた。私には兄弟がいないから、後藤が兄であり、弟だった。いつからだろう。後藤のことを見下すようになったのは。昔からナヨナヨした
    あこ さん作 [200]
  • が、くさい 第六場

    放課後の教室。私はユミコを待っていた。ユミコはテニス部で、私も誘われたけれど運動音痴な私は断った。特に放課後やることもないので、大体の場合教室で勉強したり、本を読んだりしてユミコを待っている。私はこの日も半分ぼーっとしながら、英語の予習をしていた。完璧にしていたいのだ。常に。すると、唐突に教室のドアが開いた。それも、乱暴に。私は夢の世界から一瞬にして引き戻された。「瀬戸。何してんの、こんな時間に
    あこ さん作 [271]
 
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