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ゆうこ さんの投稿された作品が102件見つかりました。

 
  • リミット THREE 12

    「馬鹿…か…お前」棒立ちになっていたリノを、翠が抱え込み…動きが鈍いながらも迫る影を断ち切るように扉を閉めた。影の脇を擦り抜け、よろめいた翠は、力を使い果たしたかのように床へ倒れ込んだ。「翠…」リノはひざまづき、虚ろに見上げた翠を見下ろした。翠の右腕は、ないも同然だった。片目は開かれず、噛み付かれ頬は今もなお血を流し続ける。「あのやろ…俺の腕食べやがって…腹…壊すよな…ざまあ…」ペッと血痰を
    ゆうこ さん作 [527]
  • リミット THREE 11

    何も見えない…。目と鼻の先に教室が見えていたのに、全ては闇に消えてしまった。いや、消えたように見えただけだ。リノは満身創痍の身体を引きずり、その頭はスイッチの事でいっぱいだった。お願いします…神様!私に翠を助けさせて下さい!食いしばった歯で、唇を傷つけたことさえ、今のリノは気付かなかった。床にピタリとくっついて手を突き出しながら、教室を探っている。手に縛り付けたままのガラスが、リノリウムの床をお
    ゆうこ さん作 [526]
  • リミット THREE 10

    涙が滲む。強烈な痛みと腐臭に、リノは耐え切れず目を開け…声にならない悲鳴を上げた。自身の黒い血液で顔中を濡らしたモノはもはや山口先生の面影さえなく…血に飢えた獣のように、リノを組み敷き、歯を剥き出していた。その喉奥から金属を擦り合わせる音。「いや…」か細い声に被さるように黒く汚れた影がリノの白い喉へと降りていく。大きく開けた口が肌に重なる…。ガアァンッッ リノを縛っていた影の重さが、不意に取り除
    ゆうこ さん作 [513]
  • リミット THREE 9

    「…いやよ」リノはニコッと笑った。瞳の端に残る涙の輝きが泣き笑いに見せている。翠は首を振った。「だめだ」「そっちこそダメよ。私達は運命共同体だもん。出口には二人で行くの」翠は辛そうな表情を見せ…諦めたようにリノの肩を叩いた。「しょうがねーなぁ。とにかく、ここからは全力ダッシュだぜ?」「解ってる!…私の足のこと、気遣わなくていいからね。絶対よ?」翠はニヤッと笑ってリノの額をはたいた。「嫌だね!」「
    ゆうこ さん作 [506]
  • リミット THREE 7

    「や…山口先生…」翠はリノの言葉に、思わず柄を離した。しかし。それは先生であって先生ではなかった。手をダラリと下げ、口は何かに驚いたように開いている。両目は白く競りでて、赤い血管が脈打つ。だが、何よりおぞましいのはその肌だ…それは腐った沼の色を思わせた。どす黒い、濃い紫。深く刺さった柄に気付いているのか、ぎこちない動きで首を傾げ、絶え間無い金属音を喉から搾り出していた。壮絶なパニックから立ち直っ
    ゆうこ さん作 [567]
  • リミット THREE 七

    チャイムが三回鳴るまでに。ここから……逃げる。リノと翠は即席の武器を手に、顔を見合わせた。ガムテープで固定されたガラスの切っ先が、明かりに煌めく。…その明かりに、課せられたリミット。二時間。リノは走りやすいようスカートを腰で折り、短くした。いつもこれくらい短くした子達を寒そう、なんて見ていた頃が懐かしい。左の膝は腫れていたが、ちぎれても、この先動かなくなっても、走るつもりだった。もう翠に迷惑はか
    ゆうこ さん作 [530]
  • リミット THREE 六

    チャイムが鳴り響いたあと、蛍光灯は明るさを取り戻したかに見えた。が、翠は小さな声で呟いた。「違う」「…何が?」とリノ「明るさが。鳴る前の方が明るかった気がしないか?」はっとして、リノは天井を見上げた。確かに…さっきより光りが弱い。真っ白だった明かりは、青白いといえそうな輝きに落ちていた。リノの頭に、突然、天啓ともいえる閃きが走った…もしも…もし、この紙の意味する所が、私達の生き延びる為のヒントだ
    ゆうこ さん作 [518]
  • リミット THREE 五

    リノは立ち上がり、汚れた体操着姿の翠を振り返った。「考えよう」頭がショートするくらい様々な疑問が渦をまく。リノはもう一枚の白紙にペンで書き付けた。1 ここはどこか2 あの化け物はなにか3 何故入って来なかったのか4 紙に書かれた文字の意味は?「こんなとこね」翠は感心したように頷き腰を降ろした。「ここはどこ…か」「うん。だって、気付いてた?他に誰もいないし…外だって変でしょ?なんか現実じゃないみた
    ゆうこ さん作 [616]
  • リミット THREE 四

    凄まじい力で、華奢な鍵は脆くも壊れた。翠はリノの腕を掴み、教室の中央まで下がらせたギ…ギギ……歯ぎしりのような、金属の擦れるような奇妙な音が、扉の向こうから聞こえてくる。翠が、ぐっと椅子を掴み武器のように掲げる。カラカラに張り付いた喉から、リノは無理やり空気を吐き出させた。壊された扉は、開かなかった。怒りから出たとしか思えない、金属的な高い唸り声が教室を震わせた。すりガラスの向こうでうごめく影は
    ゆうこ さん作 [561]
  • リミット THREE 参

    非常口の青白い光しかない、暗い廊下を二人は歩いていた。リノと翠は不安そうに、ほとんど寄り添うように先へと進む。行き先は保健室だ。「俺が一人でいって、湿布かなんか取って来てもいいけど」と翠が言うのをリノは一蹴した。こんな訳のわからない状況で一人にはなりたくない。行く、と言い切るリノを止めなかった翠も、内心同じ思いだったのだろう「私の膝ならたいしたことないと思う…先に出口に出た方が良くない?」この言
    ゆうこ さん作 [517]
 
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