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どろぼう猫さんの投稿された作品が15件見つかりました。
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逃亡記4
るり〜りら〜らら〜るら〜。誰かが悲しげに歌っている。女の声だ。あたりには霧がたちこめ、ほとんど前が見えない。ゲルダは、歌声の方にそろそろと近づいていった。胸に青い宝石を着けた、髪の長い女が歌っていた。女の髪は青く、着流しのようなぞろりとした服は木の芽の色だった。女はゲルダにほほえみかけ、話をしたそうにした。それでも歌い続ける女のそばで、ゲルダは礼儀正しく待った。
どろぼう猫さん作 [467] -
不良(しそうか)
少年は親を捨て名前を捨て、自ら新たな名前を身に着ける。14才の秋の事。その日、家出をした彼は悪太と名を変え、世間にも社会にも背を向け、親にも頼らずに一人で生きていこうと決めた。彼にはロボというあだ名の友人がいた。ロボは悪太のただ一人の友達だった。家出したことをメールで報告すると、顔文字付きで万歳と返信が来た。思わす、悪太の顔がほころぶ。悪太はまず、家を出たその足で、町で有名なやくざの家に向かった。
どろぼう猫さん作 [891] -
逃亡記3
ゲルダは松明の火を落として、廟の中に押し入った。目が慣れると、左右の壁に一つずつロウソクが掛けられているのが分かった。彼は腰の袋から火打ち石を取り出してカチカチと合わせ、ロウソクに灯をともした。ぼう、と空間がオレンジ色の炎によって染め上げられる。廟の奥に一体の童子像が鎮座していた。何かが気にかかり、ゲルダは近づいてその像を詳しくみた。幼い童子像の顔が、苦悶とも喜悦ともつかぬ表情に歪んでいる。その胸
どろぼう猫さん作 [493] -
逃亡記2
ゲルダは、暗い森の中へと入っていった。一本の松明も持たずに。それはあまりにも無謀なことではあるのだが、彼は自覚していた。もたもたしていると、ラーミアンに、あの怪物に、快楽殺人犯に追いつかれ、良いようになぶりごろされるだけだと。それに、彼にはもう、森を迂回して進むだけのガッツなど残されてはおらぬのだ。森の中は暗かった。彼は何度もこけそうになりながら、枝や葉を手で払い除け、少しずつ前に進んでいった。す
どろぼう猫さん作 [488] -
逃亡記
黄色い三日月が足元を照らしている。敵から逃げるために、ぬかるんだ草地を走らねばならないゲルダにとって、この明るい夜は吉とも凶とも言えた。明るいので見通しが良いのは、彼だけではなく彼の敵も。ゲルダは焦っていた。(早く、早く逃げなければ…)王国の宝を奪って逃げる元奴隷の彼には、恐るべき追っ手が懸けられていた。ランスロット・ラーミアン。王国の軍人であるが、その性は残虐極まる。人をなぶりごろすのが趣味の、
どろぼう猫さん作 [512]
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