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ヒカル さんの投稿された作品が8件見つかりました。
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山のモーツァルト8
思い立ったが吉日とはいうけれども、今回は勝手が違っていたようだ。 「すいません。飛行機取れませんでした…。」 春香は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。 「仕方ないか…。」 今回の飛行機代のために、秋一は残りの預金を全て注ぎ込んでいた。 もう帰る家はない。 「私たち、空港暮らしになるんでしょうか…。」 春香が心配そうに呟いた。 「お前は家も仕事もあるだろ。ここから先は俺一人で十
ヒカル さん作 [300] -
山のモーツァルト7
話はホテルに戻る。 「そんな曲は知らない。作曲者は?」 「さぁ、元が民謡だから。誰が作ったまでは知らないわ。」 「民謡?」 蒼にはわけがわからなかった。てっきり誰か有名な音楽家の非公開作品だと思っていたからだ。 「やはり、知らないのね。じゃあ私と一緒に来て?」 「…?」 蒼は訳がわからないというような顔をした。 「あら、忘れたの?私と一緒にウィーンへ行くと。お店で言ったじゃな
ヒカル さん作 [266] -
山のモーツァルト6
秋一はいつもの公園に戻ってきた。 午後になればさすがに人が多く、彼がいつも使っているベンチも、今は子供と母親の憩いの場となっていた。 「せんぱ〜い!」 振り向くと、見知った眼鏡の女性が息を切らせながら走ってきた。 福島 春香(ハルカ) 秋一が働いていた出版社の後輩である。秋一が働いていた時にはまだアルバイトだった。 「裏は取れたのか。」 秋一が聞くと、 「はっ…はい。えと、確
ヒカル さん作 [281] -
山のモーツァルト5
秋一が到着する一週間前の話である。 「どうして僕がピアニストだと?」 蒼は声が震えるのを抑えながら訊ねた。 「違うの?」 彼女は当然の答えに念を押すように聞き返した。 「蒼ってピアニストだったのか?」 「そういえば私聞いたことあるかも。」 周りのざわめきは徐々に形となって蒼の耳にも入ってきた。 「是非一曲お願いできないかしら?」 そう言うと彼女はフロアの中央にあるピアノを指
ヒカル さん作 [330] -
山のモーツァルト4
「いない!?」 秋一は自分でも驚くような声で聞き返した。 「どういうことだ…」 「だから、それはこっちが聞きたいんですよ。」 ボーイもいい加減うんざりしたように答えた。 「蒼はこんな風に無断で休むようなやつじゃないんです。こっちとしても寝耳に水ですよ。」 「何か心当たりはないのか?借金とか、女とか…。」 「借金なんて話聞いたこともないですよ。女…まさか。」 ボーイはしばらく考
ヒカル さん作 [302] -
山のモーツァルト3
店が始まり、いつものように蒼は客の相手に務めた。元々は人と話すのが苦手だったにも関わらず、入って半年ほどでそこそこの順位になれたのは、蒼自身も驚いていた。 顔も悪くはなかったし、音楽をやっていただけあって歌は上手い方だった。蒼はもちろんずっとホストをやるつもりではないけれども、この仕事は気に入っていた。 一番の理由としては、客は皆、蒼を『元ピアニスト』ではなく、『ホスト』として見てくれる
ヒカル さん作 [269] -
山のモーツァルト 2
『ウィーンで俺は妖精を見た。』 そう言って誰が信じるのだろう。 比喩表現なんかではない。文字通り本物の妖精を見たのだという。 しかし、結局は三流ゴシップ誌の記者、それもガセで有名な 小早川 秋一(シュウイチ)のネームバリューがあれば誰もが信じないこと請け合いである。 いつものように妄言として、少数派の娯楽として扱われるのがオチだった。 それが真実であるという問題を除けば…。 秋
ヒカル さん作 [265] -
山のモーツァルト
コンサートホールの中には決して満員とは言えないが、大勢の観客がざわめいていた。 パンフレットの中には一人のピアニストが彼らを見つめて微笑んでいる。 木村 蒼(アオ) まもなく始まったこの若干14歳の少年の演奏が彼らの度肝を抜き、また同時に感動の涙を流させるなど、誰が想像しただろう。 会場は満員でないにも関わらず、その演奏に対する拍手は一流のそれに対するものと大差ないと言ってよかっ
ヒカル さん作 [268]
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