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日山 扇 さんの投稿された作品が12件見つかりました。
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自分は
死にたいと思うのは結構ざらで。死にたくないと思うことは無くて。生きたいと思うことは結構あって。生きてると実感することは案外無い。自分はここにいるのだと感じることはできるけれど。自分はここにいていいのかの判断はできない。自分に友達はいるはずだけれど。友達にとっての私の立場は分からない。過去を振り返ることはしないけれど。未来を仰ぎ見ることもしない。今をただ見て、今の自分をただ見て。いろいろ思う。
日山 扇 さん作 [372] -
孤独
自分は孤独だなんて思ってるんじゃないだろうな?もしそうだとしたら、思い上がりも甚だしい。人間は一人では生きていけないんだ。よほど強い人でない限り。よほど壊れた人でない限り。だから思い上がりも程ほどにしておけ。お前は一人で生きられるほど強くなんかないんだ。誰かがいるから生きていられる。誰かが一緒だから生きていける。だから自分は孤独だなんて言わせない。だから自分は独りだなんて言わせない。思い上がりも
日山 扇 さん作 [340] -
溜め込みすぎは体に悪い(笑)
零れ落ちた1雫。頬から顎へ、その伝った跡は酷く、焼け爛れている。零れ落ちた1雫。それには一途な悲しみが。それには純粋な苦しみが。それには強度の憤りが。それには過度の憎しみが。それには底無しの絶望が。圧縮されて詰まっている。濃い濃い酷く濃いその負の感情に。あまりにも密度の高いその負の思いに。皮膚は爛れ、崩れていく。悲しみに。苦しみに。憤りに。憎しみに。絶望に。腐っていく。崩壊していく。零れた涙は破
日山 扇 さん作 [485] -
誕生日
年に一度の誕生日の日がきた。もう何回目になるのかは忘れてしまったけれど。今日が私の誕生日だ。でも、そう思えるのもあと数時間だけ。一昨々年、私の誕生日を父と母と妹が祝ってくれた。一昨年、母が死に、それでも父と妹が私の誕生日を忘れなかった。去年、父が死に、しかし妹が私の誕生日を覚えていてくれた。そして今年、妹が病院に運ばれ、あと数時間でその命が尽きようとしている。私は自分が生まれた日を知らない。生ま
日山 扇 さん作 [533] -
夢を聴かせて
巳夜(みよ)ちゃんの夢は何ですか?昔、まだ私が保育園に通っていた頃、そう訊いた人がいた。その人が誰だったのか、保育園の先生だったのか母親だったのか父親だったのか、それとも全く知らない人だったのかは忘れてしまったけれど、とにかく、私にそう訊いた人がいた。私の、夢。私の夢は――あの時、私はその人に、その質問について何かを言ったと思う。それが質問の答えだったのか疑問だったのかも忘れてしまったけれど、と
日山 扇 さん作 [339] -
雨はあがるから<4>
それからほんの数分後だった。信号が青になった横断歩道を、彼女は跳ねるように渡っていた。まるでスキップでもしているように。だいぶ元気になってきたな、と僕が感じ、彼女が笑顔でクルリと振り向いた瞬間だった。横から突っ込んできたトラックによって、彼女は高く撥ね飛ばされ、そして頭から硬いアスファルトに叩きつけられた。 ゴシャン物がぶつかって壊れたような音。同時に彼女の周りに赤色が広がっていった。僕は彼女が
日山 扇 さん作 [365] -
雨はあがるから<3>
次の日、この事故は新聞にもテレビにも載らなかった。実際僕はそんな気力すらなく、新聞もテレビも見ずに、仕事も無断で休んで部屋でボーッとしていた。今日も朝から雨が降っていた。今日の昼頃、一度だけ電話が鳴った。警察からだった。あの日、彼女を跳ねた軽トラックを運転していた男が大量に酒を摂取していたこと。彼女の死因は、頭を強く打ったことによる頭蓋骨骨折だということが伝えられた。それを聞いたとき、特に何の感
日山 扇 さん作 [326] -
雨はあがるから<2>
「離れてください」救急隊員の一人が、僕の肩に手を置いて言った。他の隊員は彼女の傍にしゃがみこんで何かをしている。しばらく呆然とそれを見つめていた。その間、僕の肩に手を置いた隊員は何も言わなかった。急かそうともしなかった。さっきよりもだいぶ雨が強くなってきた頃、「――わるな、触るな」不意に思い出したように声を出した僕に、救急隊員の男は驚いたようで、「あ、すみません」僕の肩から手を放した。「さあ、こ
日山 扇 さん作 [316] -
雨はあがるから<1>
世の中悲しいことばかりじゃないよ。ほら、雨だってずっと降ってるわけじゃないでしよ?それといっしょでさ、悲しいことはずっと続かない。雨が降った後は晴れるでしょ?それといっしょでさ、悲しいことの後には嬉しいことがあるんだよ。だからずっと泣いてないでさ、ほら、嬉しいことを探しに行こうよ。「そりゃね、僕は確かにそう言ったけどさ、これはさすがに予想できなかったよ」ポツポツと降っている雨が、昼間の内に熱せら
日山 扇 さん作 [328] -
りんごの分け方
問.りんごが3つあります。5人で分けたいのですが、どうすればうまく分けられますか。「ジュースにすればいい!なんていうけどさ、たとえジュースにしたって、ぴったり分けるのは難しいぜ。てかジュースって……手間かかりすぎだろ!3時のおやつにどれだけ時間かけてんだよ。オレならもう2つ買ってくるね」「なんだよ、その『パンがなければケーキを食べればいいじゃん』みたいな発想。それじゃ問題が成り立たないだろ!」「
日山 扇 さん作 [353]
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