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にゃんこ さんの投稿された作品が13件見つかりました。

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  • 走れ! 9

    喘ぎながら、もうこれ以上進めない、と悟って僕らは辺りを見回した。 煌々と照らされたアスファルト…。 あれほど焦がれた光景にも関わらず今や心は麻痺している。 「修也、あれ、来るかな」「…わかんない…けど、僕はここに突っ立っていたくない」アイツは躊躇なく圭司に噛みついていた。 もしかしたら車から逃げ出したことで満足し、別の方角へ行ったかもしれない。 だが、違うかもしれない。 道に佇む僕らは無防備で、
    にゃんこ さん作 [762]
  • 走れ! 8

    べちゃべちゃした靴と、三時間も歩き通した疲労とが脳内のアドレナリンに勝るのに時間はかからなかった 下りとはいえ、足は何回も縺れ鈍くなる。 それは拓斗も同じらしく、全速力だった足は勢いを失ったチョロQのように唐突に動きを止めてしまった。 僕らは並行に並び、お互いの息がヒュウヒュウ鳴っているのに気づいた。 喉は張り付き、喘ぐ肺からは吸った息が 慌ただしく吐き出される。 拓斗は恐怖にかられた、掠れた声
    にゃんこ さん作 [673]
  • 走れ! 7

    カチリ。 車のドアに手をかけた音。それとほぼ同時に、ドアは勢いよく内側から開き、開けようとしていた圭司を突き倒した。 そして。 そいつはいた。 明滅する白い光の下に、圭司にのし掛かる化け物。 大きな焦げ茶色の身体。たるんだ頬…だらりと垂れたピンクの舌。愚鈍な目に浮かぶ狂気じみた小さな光。 低く、背筋の寒くなるような 唸り声。 それが、犬だとわかるのに随分時間がかかった。 いや、実際は0,何秒かな
    にゃんこ さん作 [632]
  • 走れ! 6

    灰色の公道。赤いライトを点滅させている車。 よろめきつつ近づいて、ふと僕の脳裏に疑問がよぎる こんな真夜中、こんな場所で端にも寄せず…何をしているんだ? 拓斗がいち早く近づいて、車の窓を叩いている。 月明かりより確かなはずの街灯が明滅し、僕の漠然とした不安を煽る。 圭司は僕と目線を合わせ、また拓斗に戻した。 苛立つ思いをぶつけるように窓を叩く音に力がこもる…風がざわめき、生者が立てる音に怒り
    にゃんこ さん作 [644]
  • 走れ! 5

    圭司の目はすがめられ、まっすぐ指を指している。 僕らはようやく圭司が何を指しているか気づいた。 赤い…ライト? 点滅する赤い光だ。 「道…やった!道があるんだ、上がるぞ」拓斗は今度こそ本物の笑顔で叫んだ。 僕らも口々に叫ぶ。 午前0時。 ほんの数時間で辿り着けるとは…! 僕らの積んできた善行は、チリも積もればなんとやらだったのだろうか? おー、ジーザス! 神様、仏様、もろもろの神様…ありがとうご
    にゃんこ さん作 [633]
  • 走れ! 4

    日頃の行いの悪さでこんなことになったのだとしたら誰かの一抹の善行で光が射したに違いない。 平たく言うと晴れたのだ。 ようやく雨が完全に上がって望んでいたもの…これ以上なく白く輝く月が頭上に現れたのだ。 ああ、神様。 いろいろもろもろの神様…ありがとうございます! 僕らは立ち上がり、見えるようになった互いの顔とそこに浮かぶ希望と不安を読み取った。 拓斗があからさまな空元気を振り絞り笑った。 「行こ
    にゃんこ さん作 [653]
  • 走れ! 3

    とにかく寒い。 べったりと張り付いた髪の毛から雫がしたたっては服に流れていく。 僕らはお互いの顔も見えない闇に覆われていた。 すぐ隣にいる圭司の息遣いが妙に耳につく。 せめて僅かな明かりがあれば…だがあるのは時計の刹那に輝く光りくらいだ。 それも薄い緑に輝くくらいで瞬時に消えてしまう。「ここにじっとしてた方がいいかな」拓斗の声は掠れていて普段の軽い口調を必死に保っていた。 いや、保とうとしている
    美羽 さん作 [774]
  • 走れ! 2

    好きな女子の話とか。 いまハマってるゲームとか漫画とか。 親の悪口とか担任の悪口とか模試の結果とか。 全てが豪雨に流されて、僕らは座り込んでいた。 川から離れる為に闇雲に逃げたから公道がまず見つからない。 どしゃ降りから細い雨に変わったところで見通しは最悪で、僕は初めて本当の暗闇を知った。 Gショックで照らされた時間は21時。 こんな時間でも歩けないくらい闇は深い。 僕らは身を寄せあって座り込む
    美羽 さん作 [681]
  • 走れ! 1

    記録的集中豪雨。 テレビなんかでよく言われるアレが、いま目の前で起こってる事実。 青空、白い雲、輝く太陽…そして夏休みとくれば、僕らはキャンプにくるわけです。高校三年の最後の夏休みとくれば無理してもキャンプに来たわけです。 そして。 僕ら三人は氾濫した川を目の当たりにし、テントは流され、たった一個のザックを抱きしめ茫然自失しているんです。 「…なあ」岡崎拓斗は泥だらけのシューズを見下ろしながら呟
    美羽 さん作 [806]
  • ひきずり 後編

    開けたくない。 けど、僕の指は襖に掛けられていた。 ゆっくり、和室の物置部屋を開けていく。 開けた途端、ぬるま湯が僕の裸足の足を浸した。 黄ばんだタイル張りの浴室があった。 和室のはずのこの部屋はあるはずのない風呂場になっていた。 そして。 浴室の小さな浴槽に、女が立っていた。 全身ずぶ濡れていて、もつれた髪が乳房を隠している青黒い全裸の身体から、腐った匂いが漂う。 身体中に切り傷があり、真っ黒
    美羽 さん作 [808]
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