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宮平マリノ さんの投稿された作品が22件見つかりました。

 
  • 白い天使のうた (22 完)

    誰ひとりとして、自分の存在を否定する子供たちは、もう、その施設にはいなかった。自分にしか出来ないことがある。すでに見つけた子供たちもいれば、まだ見つけていないことに、むしろこれからやってくることに、更なる期待を膨らませる、そんなワクワクとした息がそこに溢れていた。「生きていてよかったな、て最近つくづく思いますよ。これだけ毎日、子供たちの変化を見ていくことができて。たった一人でもいい、誰か僕のよう
    宮平マリノ さん作 [652]
  • 白い天使のうた (21)

    その日から、りらはみんなの仲間入りとなった。言葉を話せなくても、うたを歌い出せば、まるでそれがみんなとの会話のようであった。「そのうち、歌で会話するようになるぞ。」塚本は、そんなことを期待した。それからしばらくして、塚本は隣町に引っ越すことになり、ほとんど毎日のように通っていた施設には、あまり行けなくなった。それでも、子供たちの様子や変化は、大資が報告してくれたし、子供たちが自主的に、地域のボラ
    宮平マリノ さん作 [615]
  • 白い天使のうた (20)

    「それでは、今日読み聞かせをがんばったみんなに、歌のプレゼントです。」大資が大きな声で言うと、子供たちはワァーと喜んだ。そんなみんなの喜びの声は、りらには聞こえず、沢山の人の中にいること、それ自体が少々ストレスのように見えた。そんな中でも、「がんばれ、りら。」言葉にすることの出来ない思いの中で、祈りながら、みんなの前にりらを連れて行くと、子供たちの目が、りら一点に集中した。さっきまで賞を受けてい
    宮平マリノ さん作 [587]
  • 白い天使のうた (19)

    大資が、「今度、施設の中で、絵本の『読み聞かせ大会』をしますよ。」 と話した時、塚本は他のことを考えていた。「りらをその中で歌わすことはできないかな。」あれから数カ月が経ち、森の小道の歌を、りらはすっかり自分のものとしていた。歌うことが前よりも自然なことになっていき、息をすることの代わりのようであった歌が、前よりもっと、自然な感覚となっていた。「歌があれば、もっと人前でも立つことができるのでない
    宮平マリノ さん作 [634]
  • 白い天使のうた (18)

    それはまるで、りらの歌の世界、こころの願い、そのもののようであった。歌いながら、りらが生き生きとしていくのを塚本は見た。時に、りらの声が、ハーモニーのように、重なるのが聞こえた。通常、二人で歌う声が、声質によって、互いの声と声の間に入って、二人で歌っているのに、三層にも五層にもまるで合唱しているかのように聞こえる時がある。塚本自身、そんなハーモニーを表わすデュオを何度も見てきたが、りらが歌う声の
    宮平マリノ さん作 [606]
  • 白い天使のうた (17)

    もっと、歌詞を教えてやらなくちゃいけないな、塚本の心にはいつもそのような思いがあった。透き通る天使のような歌声のレーナ・マリアの歌を、りらはとても愛していた。特に、施設の木々の間でいつも歌を歌っていたりらにとっては、『森の小道』という曲は、親しみのある歌詞だった。デッキのリピート機能を覚えると、その曲を一日中聞いていた。主イエスとふたり 森を行けば調べをあわせ 歌う鳥たち新しい世界へと 見せてく
    宮平マリノ さん作 [672]
  • 白い天使のうた (16)

    りらは、少しずつ表情を増していった。始め、遠くから眺めていた、施設の他の子供たちの動きにも、少しずつ距離を縮め、近くまで入るようになっていた。それでも、他の子たちのように、物の貸し借りをすることはできず、大資の読む、読み聞かせの中にいて、他の子たちの笑うのを見て、自分も笑ってみたり、自分もその中で読んでほしい本を持って行くけども、渡すことのできなかった本を、戻って来て塚本に渡した。塚本としては、
    宮平マリノ さん作 [634]
  • 白い天使のうた (15)

    そんな中、大資の読む絵本や本の内容は、あからさま、というほど、みなしご達の話だった。赤毛のアン、長くつしたのピッピ、みなしごハッチ、母をたずねて三千里、小公女セーラ、フランダースの犬、マッチ売りの少女、シンデレラ、白雪姫、白鳥の子。フランダースの犬は、読んで聞かせている大資だけが、感動して涙を流していて、他の子たちは、可哀そう過ぎて、余計に落ち込んでいたことを伝えると、反省していたが、それでも、
    宮平マリノ さん作 [537]
  • 白い天使のうた (14)

    大資の絵本の読み聞かせは、始め、一人二人の子供をむりやり連れてきては座らせ、聞かせるというよりは、むしろ、聞いてもらう、という感じであった。しかし、つっかえていた言葉も、だいぶ緊張が解けてくると、感動溢れて、そこはとても穏やかな優しさの流れる空間となってきた。そうすると、子供たちも少しずつ自分から集まるようになり、何度も聞いている子供たちの中には、自分のお気に入りの本を差し出すようになった。この
    宮平マリノ さん作 [538]
  • 白い天使のうた (13)

    彼はほとんど、読み書きが小学生から中学1年生レベルまでしかなかったのが、奇跡的に癒されて、中学、高校を卒業し、福祉の専門学校に通うまでになった。そんな中で、専門学校を卒業し、この施設に就職した先、自分の力の限界にぶつかり、当惑していたという。塚本さん達のようになることはできず、自分と塚本夫婦と何が欠けているんだ、と困惑していた頃、受付で、施設見学とボランティアの申請をしている、聖書を持ったひとり
    宮平マリノ さん作 [520]
 
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