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宮平マリノ さんの投稿された作品が22件見つかりました。

 
  • 白い天使のうた (12)

    大資は、相変わらず塚本の渡す聖書の言葉入りのポストカードを、毎回毎回非常に喜んでくれた。塚本がりらに絵本の読み聞かせをしていると話し、大資も真似して施設の子供たちに読み聞かせを始めた頃、「僕って、自閉症だったんですよね。」と大資が話し出した。人とまともに顔を合わせることはできず、普段、自分の感情を表わすことのできない、彼の言葉は投げやりで、ぶっきらぼうで、破壊的だった。両親が見捨てそうな程、手を
    宮平マリノ さん作 [448]
  • 白い天使のうた (11)

    施設に来た翌日にあげたポストカードがきっかけとなって、大資からは会う度に毎回、「ポストカードをいただけますか」、と聞かれるようになっていた。聞き方は控えめだが、あまりにも必死というか、すがるような一生懸命さに、塚本の方も、毎回あげる決心をしていた。そんなに喜ぶなら、と星野富弘さんのポストカードをシリーズごとに一枚一枚手渡していたが、しまいには全シリーズ揃いました、と言われ、塚本自身がポストカード
    宮平マリノ さん作 [443]
  • 白い天使のうた (10)

    施設に来始めて、半年から一年が経とうとしていた。施設に来た初日から色々と声をかけてくれたあの職員とは、二人で食事をする仲になっていた。彼の名前は「大資」と言って、「大きな資産なんて、うちの親腹黒いでしょ。」と言って笑ったが、「いえ、大きな資源・資質という意味でしょう。」と言うと、半泣きで喜んでいた。きっと、みんなそれぞれに、自分の名前に込められた意味を理解しながら生きている。そして、名前からも何
    宮平マリノ さん作 [460]
  • 白い天使のうた (9)

    りら(彼女)の方も、だいぶ心を開きつつあるのかもしれない。始め警戒するように、振り返り振り返りにらみつけるように退散していた彼女も、最近では別れの際に軽く頭を下げるようになった。いつも(気をつけ)をして、深々と頭を下げ一礼する塚本に真似るようになったのだ。ごくたまに、はにかんだのか、ひきつっているのかわからない顔で会釈する時がある。ずっと動かしていなかった筋肉の、どこを動かせばいいのかわからない
    宮平マリノ さん作 [463]
  • 白い天使のうた (8)

    中庭で曲を聴かせることの他に、塚本は彼女に絵本の読み聞かせを始めた。読み聞かせる絵本の内容をよくよく注意してやらないと、彼女は眼を見開きながら、次の話の展開がどうなるのかと、怯えながら、絵本と塚本の顔を代わる代わる見ては、忘れた記憶の恐れだけを引き戻すかのようだった。うさぎの事件以来、言葉をほとんど失ってしまった彼女が表わす感情表現は、眉間のしわの寄り具合と、時々締め付けられるかのように胸元を抑
    宮平マリノ さん作 [467]
  • 白い天使のうた (7)

    週の3日から4日は塚本はその施設へ通うようにしたが、彼女は雨の日もお構いなく、裸足で傘を差さずにいつもの木々の所でうたっていた。彼女にとってはうたうこと、それ自体が息をするかのようだった。時々、施設の中で彼女を見かけることもあったが、廊下を歩く彼女は、口をつぐみ、うつむきかげんで、瞬きしていることも自分では気付いていないのかと思うくらい、その表情はまるで動かなかった。一瞬見間違えたかと思い、すぐ
    宮平マリノ さん作 [404]
  • 白い天使のうた(6)

    久しぶりに聞く声だった。なんだか、懐かしく、こころすり抜けるような、柔らかく、透き通るような。なんて優しい人なんだろう。声だけ聞いていて、その人の人柄がわかる。そして、声を上げる時の抑揚の仕方、和らげる時のブレス使いが、「そう、昨日の彼女に似ているんだよな。」それが、塚本のこのCDを持ってきた一番の理由だった。ふと横を見ると、扉から顔を出した彼女の、いつもの木に向かおうとしている姿だった。はっ、
    宮平マリノ さん作 [506]
  • 白い天使のうた(5)

    昨日、彼女がいた場所からはまだ遠い、扉からも少し離れた芝生の上で、塚本は座り込み、デッキから、曲を流し始めた。持ってきたCDは、ゴスペルシンガーのレーナ・マリアという女性ボーカルだった。生まれながら、両腕はなく、左足は右足の半分の長さしかない、という重度の障害を持って生まれる。それでも、彼女の両親は、普通の子たちと同じように育てようと、普通校の小、中学校と学ばせた。自分で食事、通学、水泳もする。
    宮平マリノ さん作 [477]
  • 白い天使のうた(4)

    翌朝、塚本は昨日より早く家を出た。手には、CDを聞ける音楽機器を持って。「これをあの子に聞かせよう。きっと、歌をあまり知らないんだな。でも、透き通るそれでいて芯の通ったとてもいい声をしていた。温かくて優しいようで、深く悲哀のこもったようなー。きっと、彼女自身の心なんだな。」「それと、彼には、ま、これをあげよう。」そう言って、一枚のポストカードをノートに挟み直した。みことば付きのポストカードである
    宮平マリノ さん作 [446]
  • 白い天使のうた(3)

    「僕も何度か彼女に話しかけてみました。彼女以外の子供たちにもです。でも、僕には何もすることができない。僕、ずっとボランティア活動やっていたんです。ここでもきっと、僕を必要としてくれると。でも、ここに来て、僕の存在価値が余計に見えなくなってきました。僕はここに必要なのか。僕を必要としてる人がここにいるのか。いや、僕自身必要な人間なのか。自分からここに志願して入ってきたのに、僕自身、人から捨てられた
    宮平マリノ さん作 [573]
 
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