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水無月密 さんの投稿された作品が111件見つかりました。

 
  • ベースボール・ラプソディ ―序章―

     荒々しい太陽が西の空に傾き、小さな町の公園にも夏の一日が終わりを告げようとしている。 東の空には一番星が瞬き始め、辺りは行き交うボールを目視するのが困難に成りつつあるが、幼い兄弟は野球を止めようとはしない。 兄の放ったボールは鋭い軌跡を描き、弟のもとへと直進していく。ろくすっぽボールが見えない薄暮の中、弟は卓越した野球センスでそれを弾き返した。 小さな公園のフェンスを楽々と越えてゆく打球を見つ
    水無月密 さん作 [628]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.20

    「待ってください、私はまだ、ノア殿に何も恩返しをしていません」 必死に食い下がる半次郎。彼にしてみれば、そのためにここへ来たのだから、当然な反応だった。「オマエはワタシの予想を超えて成長して見せた、それで充分だ。 それよりもオマエ、そんなことをしている暇はないのではないか?」 ノアのいわんとする所が分からず、半次郎は首を傾げていた。「何だ、知らないか?今、川中島で起こっている事を」 俄かに半次郎
    水無月密 さん作 [411]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.19

     半次郎の気は、まるで揺るぎないみなもの様だった。 その穏やかな気が辺り一面を支配した時、彼は眼を見開いて刀を振りぬいた。 見事な太刀筋であったが、半次郎は浮かぬ顔をしていた。手にした刀に、ほとんど手応えがなかったのだ。 岩に視線を移したが、何の変化も無い。『……駄目だったか』 そう思った直後、岩は斜めに切れ目を生じて滑り落ちた。「ノア殿、私にも出来ましたっ!」 無邪気に喜ぶ半次郎に、ノアは小さ
    水無月密 さん作 [433]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.18

     名刀虎鉄は石灯篭を切り裂いたという伝承があるが、普通刀で岩を切れば大概は折れる。 半次郎は大事なこの刀を、そんな運命にはしたくなかったのだろう。「どうした、そんな物も切れない様では、半次郎の名が泣くぞ」 その言葉に、半次郎の目つきが変わった。 鞘を腰に差し込むと、半次郎は大きく振りかぶった。 ノアは刀が丈夫になったというが、それがどれほどなのか。 とにかく今はその言葉を信じるしかなく、覚悟を決
    水無月密 さん作 [409]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.17

    「…あの時のコゾウか、大きくなったな」 語りかけてきたノアに、半次郎は驚きを隠せぬまま問い掛けていた。「……貴女は歳を取らないのですか?」「そういう体質だ、仕方あるまい」 苦笑するノアに、半次郎の脳裏には二つの出来事が甦ってきた。 十年前、ノアが洞窟の事を塞ぐ予定の通路といったことと、景虎から聞いたシャンバラにあるという不老不死の秘薬の話。 そして今、老いることのないノアを目の前にし、彼は一つの
    水無月密 さん作 [412]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.16

     三年間の遍歴を終えた半次郎は、後藤半次郎が眠る地に戻っていた。 約束の日より一月ほど前にこの地に入った半次郎は、日の出とともに剣を握り、日没とともに座禅を組んで日々を過ごしていた。 半次郎はこの三年で、今の世の歪みを見極めていた。 すべての根源は、将軍家の権威の失墜にあった。 この時の足利家当主は義輝であったが、彼は名だけの将軍だった。 実力の伴わない統治者に、実力者が取って代わろうと各地で蟠
    水無月密 さん作 [417]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.15

     策はある。陽動をもって敵の兵力を分散させ、相手の総大将である今川義元を討ち取れば、兵力差は意味をなくす。 ただ、これには必須条件が二つあった。それは義元の居場所を正確に把握することと、敵にこちらの動きを悟られないこと。 織田家の当主である信長は、半次郎が画策した通りの動きをした。 支城の一つに敵軍の主力を誘き寄せた信長は、義元の居場所をつかむのに手間取ったものの、ぎりぎりのところで田楽狭間にい
    水無月密 さん作 [417]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.14

     半次郎は各地を巡り歩き、多くの武将を見て回った。 全国にはいろいろな人間がいた。 強大な軍事力を保有する者、武勇や知略に優れた者、治政に辣腕を振るう者、才能に富んだ者達が多くた。 だが、景虎や晴信に対抗しうる大名には、ついに出会えなかった。 例えば相模の北条家や駿河の今川家などは強大な軍事力を持ち、大大名といわれていたが、両家ともに斜陽の陰りがあった。 中国地方には毛利元就という男がいた。 彼
    水無月密 さん作 [398]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.13

    「旅立つお前に、元服の名を与えねばならんな」 景虎がそういうと、三郎は思い詰めた表情でこたえた。「願わくば、半次郎殿と同じ名を名乗りたいと考えております」 それはこの七年間、心に秘めていた想いだった。「我が友もあの世で喜んでおろう」 三郎の望みを容認した景虎は、三郎の中に義の心がしっかりと根付いていることを知り、嬉しく思っていた。「話しは変わるが、お前はしゃんばらなるものを知っておるか?」 別れ
    水無月密 さん作 [392]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.12

     城壁の上に立ち、これが見納めと眼下の風景を眺める三郎。 七年の歳月は、少年を精悍な若武者に成長させていた。「そこにおったのか、三郎」 景虎に気付いた三郎は、ひらり飛び下りてひざまずいた。「ご用ならば、私の方から出向きますのに」「やはり気は変わらぬのか?」 数え年で十六になった三郎は、元服を機に長尾家を出ることを決めていた。 それを知った景虎は翻意をうながしていたが、三郎の意思は硬く、旅立つ日を
    水無月密 さん作 [424]
 
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