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水無月密 さんの投稿された作品が111件見つかりました。

 
  • 流狼−時の彷徨い人−No.49

     僅かな時間ではあったが、ノアは半次郎と行動をともにしたことで、その人となりを把握していた。 その性格は素直にして実直、それゆえに人の教えを虚心坦懐に聞き入れることができ、それを会得するための努力を惜しむことがなかった。 それこそが半次郎の生まれ付き持つ、最大の素質であるとノアは洞察していた。 そして今、瞬く間に気を同調させた半次郎に、ノアは半ば呆れていた。 彼女は気の同調という厄介な技術の取得
    水無月密 さん作 [410]
  • ベースボール・ラプソディ No.29

    「う〜ん……」 地区予選の初戦を翌日に控え、哲哉はトーナメント表を見つめて愁眉をつくっていた。「なんだぁ、またトーナメント表と睨めっこしてんのか? いい加減、気持ちを切り替えろってぇの」 練習前のアップを済ませた八雲は、そういってベンチで考え込む哲哉の横に腰掛けた。「そういわれてもなぁ、ここまでくじ運が悪いと、我が事ながらため息しかでないよ」 哲哉自らくじをひいたその組み合わせは、初戦の相手にこ
    水無月密 さん作 [538]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.48

    「随分と深い竪穴ですね、この底がシャンバラに繋がっているのですか?」 直径が五間(約9.1M)程もある竪穴を覗き込む半次郎。 底は暗く、どれだけの深さがあるか見当もつかない。「簡単には辿り着けぬだろうが、繋がっているのは確かだ」 そうこたえると、ノアは周囲の地質を確認し始めた。「厄介だな、二カ所同時に切り崩さなければ、これは塞げないな。 僅かにでも剣を入れるのがずれれば綺麗には塞げぬが、手を貸し
    水無月密 さん作 [409]
  • ベースボール・ラプソディ No.28

    「だが、地区予選まであまり日がないこの状況で、変化球を覚えさせるのは逆効果じゃないのか?」「こと野球に関しては、人一倍器用な男ですからね。 あいつにその気さえあれば、すぐにでも投げれるようになりますよ」 哲哉の視線の先では、八雲と小早川が力尽きてへばりこんでいた。 大澤もそこに視線をむけ、哲哉との会話を続ける。「やはり直球だけで勝ち上がれるほど、高校野球は甘くはないか」「それも面白いかと思ったん
    水無月密 さん作 [483]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.47

     信房に指摘されるまでもなく、段蔵を使うことの危うさは信玄自身の熟知する処だった。 だが、優れた人材を配下に多く集め、それらを自在に使いこなしたいと考えるのは、いわば権力者の性であり、組織をより強固なものにするには必要な事でもあった。 さらに信玄は、段蔵を使いこなすことに別の価値も見出だしていた。 それは、段蔵の経歴に大きく起因する。 段蔵は以前に雇われていた大名家においても、優秀な忍者としてそ
    水無月密 さん作 [435]
  • ベースボール・ラプソディ No.27

     その日、少し遅れて練習入りした大澤は、マウンド上で話し込む八雲と哲哉、それを傍らで見守る遠山と小早川の姿を目にした。 どうやら哲哉が八雲に変化球を使用するよう提案しているようだが、当の八雲はそれに難色を示してごねているようだった。「嫌なもんは、イヤだっ!」 口論で哲哉に勝ち目がないと知ると、八雲は早々に逃走をはかった。「あっ、逃げた」「しゅうっ!」「任せろっ!」 哲哉の指示で、即座に小早川が追
    水無月密 さん作 [474]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.46

     武田信玄は現実主義者であり、その思考に妄想僻は存在しない。 それ故に彼は優れた戦略家でありえた訳であり、仏道に深く傾倒する上杉政虎とは一線を画するところであった。 その信玄がシャンバラの存在を信じ始めた今、荒唐無稽な話でも信憑性を帯びてくる。 少なくとも信房は、そう感じていた。「刀一つとっても、あれほどの業物をつくれるのだ。かの地にはどれほどの武器が存在するのか。 それに比べれば、上杉との同盟
    水無月密 さん作 [432]
  • ベースボール・ラプソディ No.26

    「大澤は楽しんでやってるみたいだな」 ゴムチューブを使ってストレッチをしていた八雲は、聞き慣れぬ声に振り返った。 そこには金網ごしに大澤を見つめる、三井の姿があった。 初対面である八雲は、訝しがって眉をひそめていた。「……アナタ、誰?」「大澤の数少ない友人の三井だよ」 三井が親しみをもってこたえると、八雲は警戒をといて笑顔を見せた。「そうですか。オレはてっきり大澤さんに恨みがある人が、仕返しにで
    水無月密 さん作 [499]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.45

    「……三郎様の事をお考えになられているのですかな?」 義信が退室した後も無言でいる信玄へ、信房が穏やかに語りかけた。「…そうだ」 少し無愛想にこたえる信玄。「十年前の事を、後悔なさっておいですか?」「皮肉なものだ、武田から追い出したあやつだけが、唯一わしを超える才能を秘めておったのだからな。 …だが、後悔してはおらぬ。あやつを手元に残しておけば、家中の勢力が二つに割れていただろうからな」 半次郎
    水無月密 さん作 [383]
  • ベースボール・ラプソディ No.25

     いつの間にか他の部員達も話に加わり、神妙な面持ちで大澤とともに話に聴き入っていた。 そして哲哉は、話しを続ける。「あの時、誰よりも近くであの兄弟を見ていた自分が、小次郎をとめるべきでした。 だけど自分は、あの兄弟の真剣勝負を見てみたいという思いと、たかが風邪ぐらいという甘い認識から、それを怠ってしまった。 …小次郎を見殺しにしてしまった。それが自分の、八雲にたいする負い目です」 哲哉の表情が、
    水無月密 さん作 [537]
 
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