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水無月密 さんの投稿された作品が111件見つかりました。

 
  • ベースボール・ラプソディ No.19

    「本来なら俺達は試合もできず、野球部の歴史とともに高校生活を終える筈だった。 そこにあの二人がやってきて、俺達に野球への情熱を思い出させてくれた。だから皆で決めたんだ、この部のために何か残そうと。 一つでも多く勝ち抜いて、少しでも多くの人の目につけば、お前達の才能に惹かれてここにやってくる奴がいるかもしれないからな」 言葉を失い、立ちすくむ大澤。 何のことはない。 彼が欲してやまなかったものは、
    水無月密 さん作 [490]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.39

     ノアは静かに右足を踏み出すと、その着地と同時に一瞬で半次郎との距離をつめた。 驚く半次郎だったが、それよりも先に彼の身体がノアの攻撃に反応していた。 挨拶がわりの一撃を反射的に刀で受け止めると、半次郎は後に飛びのいて距離をとった。 そして僅かに視線をおとした彼は、刀を見て驚愕する。 南雲の猛攻を刃零れ一つせずにしのいだ刃先が、軽く振り下ろされたノアの一撃で欠けていたのだ。「何を驚いている。その
    水無月密 さん作 [425]
  • ベースボール・ラプソディ No.18

     大澤は浮かぬ顔のまま、八雲達と校門を出ようとしていた。 彼には少なからずの失望感があった。 チームワークを第一に考える大澤に、先程の哲哉達の態度は受け入れられぬものであり、それが二人への不信感に変わり始めていた。「……教科書を忘れた」 足をとめた大澤が、唐突につぶやいた。「大事な教科書を置き忘れるとは、いったい何しに学校きてんだ?」「何だとっ!」 茶々をいれる八雲に、大澤はむっとして拳を振り回
    水無月密 さん作 [521]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.38

     ノアは暫し無言のままでいた。 半次郎の素質に魅せられ、この地に戻ってきたノアだったが、シャンバラの人間である彼女は、これ以上彼に関わることに躊躇いがあった。 しかし彼女は、思慮を重ねた上で一つの答えを導き出す。「…オマエの中に眠る力がどれだけのものか、見せてみろ。 それがワタシを納得させる程のものならば、修業をつけてやる」 潜在能力の示し方など知らぬ半次郎は、困惑を隠せないでいた。「…どのよう
    水無月密 さん作 [446]
  • ベースボール・ラプソディ No.17

    「そういや、てっつぁんよ」 練習を終え、道具を片付ける八雲は、ふと前日を思い出して哲哉に問いかけた。「んっ?」「顧問の件はどうなったのさ?」「日本史の大原先生っているだろ、試合に引率してくれるだけでいいからってお願いしたら引き受けてくれたよ」「…あ〜、あのお地蔵さんみたいなじっつぁんか。老人を騙して顧問にするとは、てっつぁんも悪いヤツだなぁ」「人を悪徳詐欺師みたいにいうな」 からから笑う八雲は、
    水無月密 さん作 [599]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.37

     身も心も疲れはてた半次郎の姿は、心の拠り所である後藤半次郎が眠る地にあった。 己の不甲斐なさを詫びるため、この地に脚を運んだ彼は佇んで墓標を見つめていた。「死なずにはすんだようだが、随分と塞ぎ込んでいるようだな」 不意に話しかけられ、振り返る半次郎。 声の主はノアだった。「何だ、また泣いていたのか? 腕は達つようにはなったが、泣き虫なのは変わらぬままか」 真っ赤に充血した半次郎の目に、彼女はそ
    水無月密 さん作 [466]
  • ベースボール・ラプソディ No.16

     その日の放課後、哲哉から練習内容をきく大澤は、納得して頷いていた。「なるほどな、まずは守備固めからか」「ええ、夏の予選まで日がないですからね、全部は無理なんで、とにかくそれをしておかないと」「守備がしっかりしていれば、とりあえずは試合になるからな。 だが、点が取れなければ勝つことはできないぞ」「だから大澤さんが必要だったんですよ」 ニッコリ笑う哲哉は、そういって大澤にバットを手渡した。「地区予
    水無月密 さん作 [515]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.36

     力無く立ち上がると、半次郎は深々と頭を下げた。「…今回の事で己の未熟さを思い知りました。今一度、修行の旅に出ることをお許し下さい」 言い終えて顔を上げた半次郎に、政虎は我が眼を疑った。 凜として輝いていた半次郎の瞳が、今は見る影もなく光を失っていたからだ。 その瞳を目の当たりにし、政虎はかける言葉を失ってしまった。 さらに成長して戻ってくると信じ、半次郎を送り出した政虎。 帰路についてから、終
    水無月密 さん作 [460]
  • ベースボール・ラプソディ No.15

     倒れ込んで大の字になる八雲。 その有様に大澤が愁眉をよせると、哲哉はボールを手にして得意げな顔をした。「八雲っ!」 頭を持ち上げた八雲に哲哉がボールを投げると、彼は手前でワンバウンドしたボールをキャッチして跳び起き、腕をぐるぐると回し始めた。「お〜しゃっ、始めっかっ!」 元気にマウンドへ向かう八雲に、哲哉は笑みをうかべた。「たとえ瀕死の状態でも、ボールさえ握らせれば元気になりますよ、あいつはね
    水無月密 さん作 [535]
  • 流狼−時の彷徨い人−No.35

     帰路についた政虎は今会戦を振り返り、忸怩たる思いでいた。 指揮官級の戦死者は出さなかったものの、この戦いで実に三割近い兵を失っていた。 これだけの犠牲を払い信玄に上杉家の強さを知らしめたものの、逆にそれが信玄を頑なにしてしまい、同盟を結ぶという目的を果たすことができなかった。 同盟が成らず、信玄を切ることもできなかった半次郎は己を責め、完全に自信を喪失してしまっていた。 その半次郎の姿は、この
    水無月密 さん作 [441]
 
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