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f→ve さんの投稿された作品が6件見つかりました。
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秋 (後)
一人がつらいとは思わない。それは、秋に対する自信があったことや仮につらさを持つと、普段らしくない様子を感じ取られて、ミルクに飽きた猫のように、離れてしまう秋がいたことが理由。変わらないこと、無条件に寵愛できるのはそれだけだと云った。台風は突然やってくる。ニュースを見たら、海に渦がある。大きな雲がまわり、小さな雲を食べてゆく。寂しさの感情。それを秋は食べていた。私の寂しさを有無を云わず、ただ黙々と
f→ve さん作 [153] -
秋 (前)
それは突然やってくる。ずっと唐突にやってくる。原因を探った。秋になるからだ、と自分に言い聞かす。空気や見栄えが悉く変化する季節に、秋という名前に出会う。あぁ、何年も前に遡る記憶になったんだなぁ。名前負けしない、雰囲気の心地良さを持つ、その人。適度な温度の手と腕が印象深い。肩からサラサラと、秋はやってきて、胸の前に手の平を重ねる。その行為に感情はどうしようもなくなり、ひどく胸打つと笑いながら云う。
f→ve さん作 [266] -
淡く淡いもの
駅のホームは広い。地元の駅とは比較にならないほどである。東京は通過するに過ぎないのに、何か期待している。駅の看板が見えなくなるまでの一分間。居眠りしていたら着いた、目的地。駅の外はなんだか別世界の気がしてならなかった。携帯をとり、電話して応援を呼んだ。すぐには来ないで欲しい。案外時間が経っていた。地元からとんでもなく離れた学校を選んだ。理由があってそうした。中学の頃の顔をもう一度みたかった。上手
f→ve さん作 [154] -
外套の眩しさだけが
曇空の中で唯一見えていた星が見えなくなった。月はとっくに消えてお目にかかることはなかったが、その心細さを担った目のやり場はたった今無くなった。深夜二時半を過ぎた。居候した者は、ベッドの上でいびきをかいている。居候された者は、窓の向こうを見て、落胆している。狭い部屋ではなかったのだが、住人が増えてから窮屈に思えてしょうがない。安易な気持ちで迎入れたわけでなく、それなりに検討し苦渋を覚悟した結果がこ
leaf→leaves さん作 [140] -
風は淡々と勢いを消した。
だから、落ち着いてくれないか。そんなに厳ついたところで、何を訴えたいんだ。それを見る身にもなってごらんよ。突然空しくなったり、不意に同感したり、意識がどこか吹き飛ばされているみたいだ。一方じゃ、自分の心を模倣されているような気分がして恥ずかしいよ。もちろんそうだよ、外見は平然と振る舞って冷視しているよ。だけど、頑なに自分を閉じこめるのにもエネルギーが必要なんだ。想像つかないだろうけど、沢山の圧迫
f→ve さん作 [165] -
三日後の誉れ
二月十四日、甘い香りのせいで集中できない。何処も匂いがして外装はどれも力がこもる。今日は女の人だけのお祭りだなぁ、話を聞いていた友人が言う。相槌を打って、少し傍観してから室内を出た。外は普段通り、風が冷たいくらいだった。『やっぱ欲しいの?』友人は尋ねた。笑みの余裕が顔に見られなかったので、まじめに答えるのもバカらしく思えた。『君なら?』友人は黙り込んで、のどを鳴らし、首を斜めに傾けた。やがて昼の
f→ve さん作 [224]
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