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N さんの投稿された作品が7件見つかりました。
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曇り空と恋の色。
今日も朝から曇りがち。朝は弱いの。少しの間だけど、欠伸を噛み締めながらボーとする。日課なの。制服に腕を通せば目が覚める。単純なの。髪型をセットして笑顔の確認。準備が肝心でしょ?学校に着いたら言うの。『おはよう』とびきりの笑顔でね。これが重要。そして、探るの。彼の表情を。何気ない仕草に目を光らせて。小さな動きもチラッと見るの。ストーカーみたい。ううん、違う。恋する女の子はみんな気になってしまうの。
N さん作 [124] -
枝と桜と。06
「澪〜!起きなさ〜い!」 静かな部屋に下から持ち上げるような声が迫って来た。澪は眉を寄せてゴロンと体を横向きにした。夢の誘いに気持ち良く手をのばす。 「起きんかい、馬鹿娘」 急に耳元で聞こえて来た声に驚き目を開けると、瞬間に額に衝撃が走った。澪は痛っ!、と再び目を閉じてしまった。 「痛っ!じゃないよ!ったく、お前は本当に朝が弱いんだから」 母親の怒声に夢現から戻って来た頭を叩く澪。おはよう、と
N さん作 [91] -
枝と桜と。04
カチャッと硝子のぶつかる音が響いた。家には似合わないカップをテーブルに戻し澪はごめんね、と顔を上げて両親の反応を伺った。 カタカタと戸が揺れるのは北海道という所だからだろうか。少しだけそれが気になった。 「…後悔してないんだろ?」 「…してないよ。これが一番良い結果だったんだって…思うために帰って来たんだから」 「…そうか」 父親の口調がどこか穏やかなのは優しさなのか、同情のためか。どちらにし
N さん作 [98] -
枝と桜と。03
「もしもし…母さん?」 渇いた声で尋ねると電話ごしで驚いた様子の母親が目に浮かんだ。澪は携帯を片手に駅のホームでベンチに座っていた。 電話の相手が不思議そうに澪の名前を確認した。 空に目を向けてみれば少しだけ曇っていた。雨が降りそうな、もしかしたら降らないような。曖昧な天気と誰もいない静かなホーム。 『あんたどうしたの?こんな時間に電話なんて…仕事は?』 「うん…ちょっとね」 声だけは明るく、
N さん作 [369] -
枝と桜と。02
ボッ…という効果音で勢いよくついた火鉢。炭を入れすぎてしまったかと団扇であおいで落ち着かせた。 夕方にもなると少しずつ冷え込む。長袖のパーカー一枚では少々寒いくらいだ。雅文はそれにカーディガンというモコモコな服装で火鉢の前に座った。 「おじぃちゃん」 聞こえてきた声に振り返ると玄関で立ち止まったまま雅文を見つめる女の子がいた。 「マユリか?どうしたんじゃ」 雅文はこっちにこいと手招きした。マユ
N さん作 [113] -
枝と桜と。01
今日は秋晴れ。 どこかのお天気お姉さんがそんな予報をしていた気がする。その通りの青空がカーテンごしに広がるのを見て、まだ夏なのじゃないかと錯覚しそうになる。だが、やはり布団をかけないと肌寒い。 御飯の炊けた音がした。最近の炊飯器は人間の腹時計より優れてるに違いない。 澪は欠伸をひとつした後に上半身だけ起き上がった。 時計は7:12を指している。いつもより少しだけ遅い起床だ。 「…うっわぁ」 澪
N さん作 [130] -
枝と桜と。〜Prologue
夏が終わった。 勢いをつけたように季節は巡って、気付いたら緑は散っていた。 「まぢ早い…」 神奈川県横浜市。 指折り数えたら何往復もしている溜息を飽きもせずに繰り返す澪(ミオ)。 空を仰げば真っ青で綺麗だが、澪の心の内は違う意味で真っ青が広がっていた。 公園のベンチに座りながら見る風景は優しい。子供が無邪気に走り回り、それを穏やかな目で見つめる母親達。時折、愛犬も一緒になって鬼ごっこだ。 そん
N さん作 [178]
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