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中村モモ さんの投稿された作品が9件見つかりました。
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五色の炎?
「ここを、ベースキャンプをしましょう」「ベースキャンプ?」「つまり、炎の持ち主が、もう一人、いるはずなんです。その一人を、ここで待つんです」春原は頷く。「わかりました」「炎をすべて集めて、その魂を鎮めれば、私たちは助かる。はずです」「わかりました」春原は、大きな目を見開いて、言った。帰宅すると、夫はすでに帰っていた。「こんなに遅くまで、何してたの?」夫の悲しい眼差し。もう、私は慣れつつある。「フ
中村モモ さん作 [546] -
五色の炎?
医師は私に、白い粉薬を処方し、「まぁひとまず様子を見ましょう」と言った。病院は広々として緑が豊かで、そこをふらふらと、死人のような顔をした入院患者が散歩をしていた。私もあんな風になってしまうのだろうか、と一瞬考え、身震いする。黄色と青の炎は、私の右上で、相変わらず私をせせら笑っているようだ。「見て。クジャクだ」夫に言われて見てみると、雄のクジャクが一羽、檻の中で所在無げに、うろうろ歩き回っていた
中村モモ さん作 [508] -
五色の炎?
夫が帰ると、彼に椅子を勧め、私はその正面に座った。「話って?」夫はおびえている。しかし、私とは全く種類の違うおびえだ。早い話が、離婚とか、そういうやつ。「まず、今から私が話すことを、全部信じてくれるっ、て約束して」夫は黙って頷く。私は、炎の話を、全て夫に話す。伝説、梁の死、私を取り巻く、黄と青の火の玉。夫は、悲しそうな顔で私を見る。「おねがい信じて」夫は、悲しげに頷く。駄目だ。やっぱり信じてくれ
中村モモ さん作 [418] -
五色の炎?
「もしもし、もしもし」警官に肩を叩かれ、振り向くと、「もし良ろしかったら、事故が起こったときの、話を聞かせていただけますか?署まで行きましょう。すぐ近くです。顔色が悪いですよ。温かいお茶、用意します」私は頷いた。しかし、頭の中は真っ白だった。警察署で、私は名前を聞かれるより前に、熱い緑茶を差し出された。私はお茶で、緊張のせいで冷えきった体を暖めながら、話す言葉を考えた。「事故に遭われた方とは、ど
中村モモ さん作 [443] -
五色の炎?
ファミレスを出ると、蒸し暑い空気に取り囲まれた。「暑い!」私がいうと、梁は「僕の街は内陸にあるので、日本の夜の暑さにびっくりしました」と言って、不器用に笑った。私が「そうなんですか」と言い、笑い返そうとしたとき、ものすごい衝撃音がして梁の姿が消えていた。私は、頭の中が真っ白になり、その場に立ち尽くした。梁は10メートルほど先で、あらかた形を失った状態で、転がっていた。何が起こったのだろう?真っ白
中村モモ さん作 [437] -
五色の炎?
とりあえず一度、皆がいる場所へ戻ることにした。ランクルを出て、波打ち際の方を見やると、にぎやかな、甲高い声が響き、初夏の熱い太陽が、それを照らしていた。まるで、たった今起きたことが、全部嘘だったみたいだ。だけど、私の右横と頭の上には、黄色と青の火の玉が、ちゃんとそこにあった。何もかも信じたくなかったが、信じざるを得ない状況だった。気づくと梁が私のとなりにすっ、と立っていた。「おれは死にたくない」
中村モモ さん作 [477] -
五色の炎?
車の中は、むっとする暑さだった。男は、じっと私を見つめている。気持ちが悪い、と思ったが、男の様子を見て、はっ、と気づいた。男は言葉を選んでいたのだ。いちいち考えなければ、話すことができない、…つまり、日本語がうまく話せないのだ。「僕は、梁(ヤン)といいます。広州から来ました。大学で、勉強するために。先月、炎が僕のところに来ました」男の、途切れ途切れな話し方に不気味さを感じていた私は、その理由がわ
中村モモ さん作 [509] -
五色の炎
いつしか、それは私を取り巻くようになっていた。黄色い炎と、青い炎。私にしか見えないらしい。だけど私には見える。なんのために、私のそばを離れないのか、分からない。私を守るためだろうか?だけど、私は守ってもらいたいほど、危険な毎日を送っているわけではない。工場の事務室で、ひたすら電話を受け、伝票を書くだけの毎日。あまりに平凡すぎて、こんな異世界のものが入り込む余地さえ無さそうなのだけど。「おい、君た
中村モモ さん作 [611] -
ドッキリトラベル
僕らは、京葉線東京駅の、地下深いホームで、やつを待っている。「いよいよあいつ、来るな」友人がニヤニヤ笑っている。「あと5分だね」「あいつ、どんな格好してくるかねぇ」僕も、友人もとてもわくわくしている。「朝6時に、1泊の旅の準備をして東京駅に来い」とだけ、やつには言ってある。やつが知り得る情報といえばただひとつ、「1泊2日の旅をする」それだけだ。「びっくりするだろうなぁ、あいつ」「ふふふ」土曜の早
中村モモ さん作 [362]
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