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やいち さんの投稿された作品が89件見つかりました。
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スラム part19
河野が吹っ飛んだ。そりゃそうだ。慶吾は力が強い。こんなやつに突然殴られたら、吹っ飛ぶのは当たり前だ。状況は読めなかったが、すぐに俺は慶吾を止めに入った。「おい!!慶吾!何やってんだ。」それが聞こえていないかのように慶吾は続けた。「お前のくるのはここじゃないだろうが!俺はいったいなんのために…」慶吾は突然口をふさいだ。河野は黙っている。殴られたせいだろう。口から血が出ている。少し沈黙が続いた。さす
やいち さん作 [571] -
スラム part18
道場に着いた。歩いてる途中にもらったプリントを見ていた。とりあえず、申込書であるのはわかった。期限切れの…。まぁ、いいか。そう思い道場に入った。「あっ、修二やっぱり先に来てたんだ。」悠が後ろから言った。「修二、久しぶり、かな。」悠のとなりに立っている、俺よりちょっと背が高い男が言った。だいたいわかるだろうが、こいつが慶吾だ。「1ヶ月ぶりだな。」「そうか。もうそんくらい来てなかったか。」「あぁ、と
やいち さん作 [547] -
スラム part17
「修二くん!」教室を出てすぐ、後ろから声がした。振り返る。少し下のほうに女の子が立っていた。背は低めで、肌の白く、見た目は可愛い子だった。正直、俺は可愛いと思う。誰だろうか。こんな子、知り合いにいた覚えがなかった。「えっと…」「あっ、名前知らんよね。同じクラスの早瀬って言うねん。覚えといてね。」早瀬が笑いながらいった。思い出した。そういえば、2年になってからのクラスにいる子だ。1年のときには見た
やいち さん作 [560] -
スラム part16
俺は落ちこぼれのようなものだ。地元ではほどほどに有名だったのに結局推薦もなく、柔道の強い高校に入ったのかというとそうでもない。そういう道をとらずに、進学校に逃げた。だから推薦をもらってた悠にはこっちにきてほしくなかった。中学でも部長をやっていたからか、俺は悠に迷惑をかけたような罪悪感があった。キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴った。今日の授業はこれで全部だ。終礼のあと、俺は道場に向かうことに
やいち さん作 [594] -
スラム part15
そのことに気付いたのは一本背負いで負けた、夏の総体のときだった。俺は6月のインターハイは先輩にゆずっからだ。高校最後の大会になる先輩の邪魔を1年の俺がするわけにいかないと思ったからだ。よく考えればあの中学最後の大会で負けたとき、こうなるんじゃないかと思うべきだったんだ。俺は周りが思ってるような、心が強い人間じゃない。大会だって、緊張で足がおぼつかないことだってよくあったからだ。今わかってるのは、
やいち さん作 [620] -
スラム part14
授業は正直しんどい。2年になってから授業スピードが上がってきたからだ。俺のコースは理系だが、文系の人は数?・Bについていけるんだろうか。とくに、悠はついていけてるんだろうか。あいつは推薦もあったのに、やめてギリギリ本山高校に滑り込んだくらいのやつだから危ない気がする。理系の俺でも高次方程式や軌跡はなかなか難しいと思うからだ。とりあえず、俺はやることやらないとな。授業の合間をぬって、別のノートを広
やいち さん作 [563] -
スラム part13
いつものように、話をしながら学校へ向かっていたとき、突然悠が話を切り替えて話し出した。「そうそう、今日、フジ来るってさ。」「慶吾が?あいつもうケガが治ったのか。」「たぶん、そうだと思うよ。これで二年生全員揃うよ。」悠がうれしそうに言った。フジ…つまり慶吾は柔道部だ。柔道部で残った二年生は四人。その最後の一人。名前は藤野慶吾(ふじのけいご)。慶吾は小学校から柔道をしていて、もちろん強い。中学では柔
やいち さん作 [639] -
スラム part12
「起きてるよ。ってか、いつの間にあがりこんだんだよ。さっき洗面所行ったときはいなかっただろ。」「ついさっき。修二が髪ボサボサのまま階段のぼってったとき。」悠が笑いながら言った。「さっき洗面所で直したよ!」そう言いながら鏡を見た。頭の右の方がはねてる。こんなところもなってたのかよ。「修二気付かなかったんだろ。修二はいっつもどこか詰めが甘いんだ。」「うっせぇ。」「シュウ、早くごはん食べな。悠ちゃんに
やいち さん作 [599] -
スラム part11
夢っていうのは、たまに大げさにされている気がする。さっきの夢は間違いなくあの中学最後の大会の夢だ。ただひとつ言わしてもらうと、俺はあんなにキレイに投げられて敗けたわけじゃない。本当は効果一つの差で敗けたのだ。一本敗けはしていない。ただそれでも敗けは敗けなのだ。柔道のルールにもちゃんとある。ポイント差での敗けは優勢敗け、相手にしてみれば優勢勝ちで勝敗が決まるのだ。そう考えながら、洗面所で顔を洗った
やいち さん作 [570] -
スラム part10
そのときも激しい組手争いになった試合だった。右手で襟を取りに行く。切られた(外される)。すかさず袖を取られる。俺は無理矢理袖を振って切る。切った。切った手と反対の手で袖を取りに行く。その瞬間…ブワァッ!体が宙に浮いてる気がした。『投げられてる…なんで?』目に映る景色が縦に激しく動く。景色が反転する。俺の目には、試合を観戦してる観客が逆さに見えている。まだ景色が動く。頭を畳が通過したのを感じる。『
やいち さん作 [669]