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サン さんの投稿された作品が11件見つかりました。
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エイ編?
友達と仲の良さそうに歩いてくる三人の姿があった。彼女の方も、僕に気付いたようだ。彼女が駆け寄ってくる。「エイお兄ちゃん?」その言葉に僕はまだ幼かった頃のことを思い出した。コウに、いつもくっついて来ていた可愛い女の子。いつから会わなくなったのだろう、思い出せない。「いくちゃん?」いくちゃんがにっこり笑う。白いきれいな歯をのぞかせている。「久しぶりだね。」いくちゃんは嬉しそうだ。彼女の友達は、気を使
サン さん作 [253] -
エイ編?
夕暮れ時の病室。ミミのi-podから、リズム&ブルースが流れてくる。窓に照らす太陽が、自分が沈んでしまうのを恐れるかのように、斜めから、長い光と影を作り出す。コウは、ミミの手を両手で包むように握りしめている。まるで、聖母マリアによりそう男のようだ。二人の影が、白いシーツに浮かび上がる。まるで僕とふたりの間には、越えることのできない厚い壁があるようだ。ミミが潤んだ瞳で見つめる、そして、コウの熱
サン さん作 [252] -
コウ編?
リビングのドアを見つめていると、「お兄ちゃん?」と言って郁が入って来た。「やっぱり、か」何でもないという風だが、郁は心なしか寂しそうな顔をした。「母さんは?相変わらず?」「ああ。」郁はソファーに腰をかけ、俺に背を向けながらつぶやいた。「こんな家、生まれてこなきゃよかった。」いつもの郁だったら、すぐに荷物を取りに二階へ行くのに、今日は違った。「どうしたんだ、郁?」俺は郁の隣に座った。最初、郁は口を
サン さん作 [264] -
オメガ
「カシーン!!」鋭いダイヤモンドのような細長いものが、孤を描きながら空を切った。年末押し迫るクリスマスイブ、神谷は彼女を手に入れた。狭い都心の一戸建ての庭で、神谷は美樹とフェンシングで勝利した。「私は誰のものにもならない。」そう美樹は藤一に、情事のあとに言った。京王医科大と白鳥女子医科大の合同サークルで、神谷藤一は天海美樹に出会った。大和撫子を絵に描いたような容姿。しかし、人を射るような、それで
サン さん作 [294] -
アロエ〜未来篇〜
僕たちは、35歳になっていた。僕は、二人が高校時代に結ばれたことで、人生の挫折を味わった。高校も中退してしまった。それを心配した叔母が、知り合いの音楽バーを営む知人に頼んでくれた。僕はバーテンの見習として、クアスに勤めることになった。今は、マスターから店の経営を任され、店にバーテンとして立ちながら切り盛りしている。もともと中学ぐらいから利き酒で、酒は飲んでいた。だから、仕事の呑み込みは早かった。
サン さん作 [245] -
コウ編
エイとは、小学生からの幼馴染みだった。あいつの実家は酒店を営んでいて、店の手伝いもする、しっかりした奴だった。俺は、エイが羨ましかった。温かい家族がいて、真っ直ぐに両親の愛を受けて育ったエイ―。それとは反対に、俺の家は殺伐としていて、冷たかった。親父は、議員の職務や付き合いで、なかなか帰って来ない。そんな父に愛想をつかして、母は他に男を作っている。誰も、本当の俺を見ようなんてしない。欲しいのは、
サン さん作 [255] -
出会い
ミミと初めて出会ったのは中学生だった。東京から転校して来た女の子は、僕たちの憧れの的だった。なぜこんな片田舎にと思った。ミミは気管支が弱いらしく、空気がきれいなこの町へ来たらしい。コウは、母親の実家が東京ということもあって、ミミとすぐに仲良くなった。ミミは人当たりがよくて、すぐにクラスに馴染んだ。僕は仲良くなりたくて、コウに混ざって話をした。ミミは理知的で、清楚で可愛かった。僕はすぐにミミのこと
サン さん作 [328] -
エイ編
ミミはいつもコウを見ていた。三人で一緒にいるときも同じだった。僕はそんな彼女を見ているのが苦しかった。彼女は光太郎が好きなのだ。そしてあいつも−。それを実感したのは、ミミが熱を出して入院したときだった。コウは、朝から様子が変だった。「大丈夫か?」「ああ。」思わず僕は声をかけた。冷静な彼には珍しく、どこか不安そうで落ち着きがなかった。僕とコウは学校が終わったら、すぐに病院にかけつけた。個室のドアを
サン さん作 [251] -
アロエ?
エンジンのスイッチを入れると、爆音が唸り出す。ブロペラが風を作り、海に面した飛行場全体に神風を作り出す。仲間が車輪を動き出さないように押さえているストッパーを外そうとした瞬間だった。「エンジンを切れ!出撃命令が撤回された!!」幸いなことに、まだ誰も飛んでいなかった。場がざわつく。しかし、上官からは何の説明もなされなかった。戸惑いの中で、仲間と華一楼はラジオからの電波放送で、昭和天皇陛下の降伏受諾
サン さん作 [290] -
アロエ?
ミミこと川合美弥香は、川合楽器店の創業者の直系の曾孫だ。グランドピアノでも有名だ。川合家はもともと、華族の三井財閥と肩を並べる大財閥だったが、終戦後、財閥系は廃止、華族制度及び既得権益庇護は廃止になり、川合家の一族の中には自殺者が相次いだ。それを心から悲しみ、憂き、逼迫した一族の危機に立ち上がったのが、ミミの曾祖父の川合華一楼(カワイカイチロウ)だった。華一楼は七人姉弟の末っ子で、長男だった。跡
サン さん作 [349]
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