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なつ さんの投稿された作品が16件見つかりました。
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梟は二度鳴く(7)
沈黙が降りた。チェーザレはなにかをいいかけて、その言葉を飲み込んだ。「一人で乗り込む方が成功率が高い」ミケーロが断言するとチェーザレに少しの逡巡が走った。「こんな小さな件にリスクを犯す必要はない」「俺一人を失うことがリスクになんかならない。使い捨ての駒だよ、おれは」「いや、だめだ」チェーザレは珍しく感情的になっていた。「悪いが‥…おまえの主観で俺によけいな付加価値を付けないでくれ。正直不快だ」残
なつ さん作 [233] -
梟は二度鳴く(6)
「今夜?」さすがにミケーロも驚きの声を上げた。「早ければ早いほどいい。ああ、あとな頭以外の人間は殺すな」「なぜ?」「朝起きたら組織の一番上の人間が死んでいる。いつ、だれが、どうやって殺したのかすらもわからない。そんな状況を作り出すんだ。残された連中の恐怖を考えて見ろ。B級ホラー映画の主人公にでもなった気分だろうな。そしてそいつ等は生き証人として世間に俺たちの畏れを広める」「けれどそれじゃあ俺たち
なつ さん作 [251] -
梟は二度鳴く(5)
「馬鹿な奴らだ」チェーザレは酒をあおりながらつぶやいた。ミケーロは会合後チェーザレの私室に通され、二人で静かに飲んでいた。「まあ、しかし久しぶりに楽しくなりそうだ。最近じゃものをしらないよそものでもなければ俺たちに喧嘩売るようなまねしないからな、見せしめの意味でも潰す」そういったチェーザレは本当に楽しそうだった。「今回の件、指揮の全権は俺に任された。働いてもらうぞミケロット」「わかった」ミケーロ
なつ さん作 [248] -
梟は二度鳴く(4)
ボルティアーノ親子が席に着くと自然と人々の視線はその二人に集まった。ロドリーゴは美しい息子と並び立ってもいささかもその威厳を失わない。若くはない。年相応に顔にはしわが刻まれ、髪は白くなっているがその眼力は全く衰えることがなかった。「今宵諸君と席をともにできたことをうれしく思うぞ」ロドリーゴが重々しく口を開いた。「君たちに召集をかけたのはほかでもない、聞き及んでいるものもいると思うがメディルノーチ
なつ さん作 [253] -
梟は二度鳴く(2)
「ミケロット」ミケーロは呼び止められた。彼をその名で呼ぶ人間は一人しかいない。振り向くと案の定チェーザレが両脇に女を従えて立っていた。「両手に花か、相変わらず華やかだな。何のようだ?」「ああ、羨ましいか?ならどちらかお前にやるよ。どちらがいい?どちらも味は保証するぞ」女たちが嬌声をあげるのを見てミケーロが不愉快そうに顔をゆがませると、逆にチェーザレはいたずらっ子のような幼げな笑みを浮かべた。「冗
なつ さん作 [271] -
梟は二度鳴く
冷たい雨に打たれて傘も差さずにたちつくしていた君の横顔を思い出すたびに僕は空しさと悲しみと少しの嫉妬で狂いそうになる・…イタリアの最南端に位置するシベリアレモン畑に囲まれた小さな白い家でミケーロは生まれた。スペイン人である母の血を色濃くついだ彼は軽くウェーブのかかった黒髪に黒真珠のような深い深淵を感じさせる瞳をしていた。そのくせ肌は日差しの強いシベリアでは珍しいほどに透き通るような白さだった。端
なつ さん作 [314]
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