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花神ミライ さんの投稿された作品が152件見つかりました。
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時と空の唄12-13
「行こう、ルメール神殿に。」ランスォールが言った。レミスの死を悼むように外には雨が降り始めた。先日のような激しいものではなく、優しく包み込むような雨だった。「シーラ…リネア・トリスタを唄ってくれないか?」ランスォールが静かに言うとシーラは黙って頷き、大きく深呼吸したあと鎮魂歌を捧げた。震える声で唄い終えるとシーラは頬に涙を伝わせていた。「ありがとう…」フォーが言ってシーラは俯いたまま首を振った。
花神ミライ さん作 [296] -
時と空の唄12-12
フォーが手を伸ばす。しかし、その手をすり抜けるようにレミスは倒れた。「…くそッ…!」ランスォールが黒スーツを一人斬る。「もう、許しません。『銀色の風 戦慄の旋律 戒めの裁きを』!!」雪が叫ぶように唱えた。すると黒スーツたちは無数の風の刃に切り刻まれ、たちまち数は減った。「よくやった、雪!」残りはラウフが素早い動きで片付けた。「今治癒術を…」シーラが術を使おうと膝をつく。「よい…」レミスは優しい声
花神ミライ さん作 [271] -
時と空の唄12-11
「――っ!?」最初にその異変に気がついたのはラウフだった。「ラウフさん?」「雪、ランス…こりゃマズったぜ…」雪が不思議そうにラウフを見上げるとラウフは顔に焦りの色を浮かべていた。「マズったって…」ランスォールが言いかけてやめた。どうやらランスォールも気づいたらしい。「なんだ?」シドマはキョロキョロとランスォールとラウフを見た。「…囲まれました。」雪は武器を片手に言う。「囲まれたって…」誰に、とい
花神ミライ さん作 [275] -
時と空の唄12-10
シーラが言うのでランスは二人を残して部屋を出た。雪とシドマが心配そうにこちらを見ていたがここはシーラに任せよう、と言ってラウフからコーヒーを受け取る。そしてシーラが出てくるのを静かに待つ。「私の事は、恨んでくれて構わないから。」「いや……ッそんな…恨むなんて…」「恨んでないの?」そう問うシーラの瞳は、決して嘘を許さない。「恨んでない…と言えば嘘になる。でも、あんただけに罪を着せるのも違う。」「そ
花神ミライ さん作 [324] -
時と空の唄12-9
「………。」「気が付いたか?」目覚めたフォーの側に居たのは驚いたことにランスォールだっだ。「うなされてたみたいだぜ?」「夢を…見ていた。」「夢?」「昔の夢さ。」そう言ってフォーは少し寂しそうに笑った。まるで、自分自身を嘲笑うかのように。「逃げたんだ。弟からも、シーラからも。最低だな、俺は。」「いいんじゃないか?逃げても。」フォーにとって予想外だったランスォールのそれにフォーは驚きを隠せない。「え
花神ミライ さん作 [323] -
時と空の唄12-8
弟は、死んだ訳じゃない。機械都市で行われていた、人の魔力を機械に移して兵器にしようという実験のモニターに、弟は呼ばれていたんだ。弟は、『身体ごと』機械に入れられて帰ってきた。機械都市から逃げてきたらしい。…あの時のシーラの表情といったら、なかったな。そりゃもう怒ってた。「なんてこと…」なんて呟いてさ。結局、弟は暴走して父と母を殺め、後からやってきた黒スーツの連中に殺された。俺は、壊れてしまいそう
花神ミライ さん作 [332] -
時と空の唄12-7
俺と彼女―――シーラは確かに出逢っていた。俺には、威厳ある父と優しい母と、歳の離れた弟がいた。貧しいけれど、幸せな家庭だったんだ。だけど、そんな幸せがいつまでも続くなんて事は、この不公平で理不尽な世界ではあり得ないんだって事を俺はその頃、知らずに過ごしていた。事の起こりは、弟がサントラーセットのアレフォールとかいう奴に呼ばれたことだったと思う。何かに協力をして欲しいとかで、迎えの奴等に連れられて
花神ミライ さん作 [315] -
時と空の唄12-6
振り向くとそこには澄んだ瞳でフォーを見つめ佇むシーラがいた。「シーラ!もう大丈夫なのか?」「ええ。」いつも通りの笑顔でシーラがそう返事をした。「私も、いつまでも寝てる場合じゃないようだし。」「それよりも…シーラ。核心の部分…ってのは…、何なんだ…?」未だ激しい頭痛と闘いながらフォーは途切れ途切れに尋ねる。「貴方の記憶に隠された、もう一つの記憶。」「どういう…意味だ…?」「…貴方の、ご家族のことよ
花神ミライ さん作 [292] -
時と空の唄12-5
「親父、シーラと一体何の話をしてたんだ?」「沈黙の契約じゃよ。」「沈黙の…なんだって?」「契約です。ドワーフの沈黙の契約。過去の秘密を護るドワーフ直伝の秘技、ですよね?」雪が言った。「そうじゃ。じゃが、それを遂行することももう意味を持たぬ。…話そう。18年前のあの日を。」わしらが共有し、護ってきた秘密はフォーの事なんじゃ。18年前についてのフォーの記憶を少し操作し、フォーはあの頃のことはボンヤリ
花神ミライ さん作 [323] -
時と空の唄12-4
「シーラ、おいシーラ!しっかりしろ!」ランスォールがシーラの肩を揺さぶるが彼女の眼は堅く閉じられたまま開かない。「無駄だ…。サーベルには傷口が固まらないよう毒を塗ってある。」ラウフに組伏せられ床に倒れている黒スーツが言った。「シーラは不老不死だ。毒程度では死なないよ。」 「…待っておれ。」そう言ってレミスは竈のある、小屋の奥に入っていった。そしてレミスが手に持ってきたのは小さな水瓶。「それは?」
花神ミライ さん作 [317]