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花神ミライ さんの投稿された作品が152件見つかりました。
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時と空の唄12-3
「護りだと言うのなら、何故あれには3つの力があるんですか?」「それは…。」その時、小屋の扉は大きく開かれた。入って来たのはシドマだった。「レミス爺、な、なんか変な奴等が…」「危ない!!」「え?」シドマが振り向く。背後にいたのは黒スーツ。その手にはサーベル。ゆっくりと振り上げられ、そして勢い良く降り下ろされた。「シドマ!!」レミスは叫ぶが、年老いた体は上手く動かない。「逃げて!!」赤い血が飛び散る
花神ミライ さん作 [312] -
時と空の唄12-2
「何の話だ?こりゃ。」ランスォールが言った。「バカ、空気読めよ。」ラウフに後頭部を殴られた。「いてっ何すんだ!」「いいから黙って見てろよ」「…暫く」竈の燃え盛る炎を眺めてレミスは小さく言う。「暫く、わしとシーラだけにしてくれんか?」ランスォールがシーラを見るとシーラは強く頷いたのでこの場はシーラに任せることにした。「フォーには言ったのか。」「いいえ。彼には何も言ってません。」「そうか、その方がい
花神ミライ さん作 [356] -
時と空の唄12-1
「あの、レミスさん。」小屋の中に声を掛ける。しかし、レミスからの返事はない。「親父。」フォーが言った。「なんじゃ、フォーか。わしのことは親父などと呼ぶでない。」「え?」シーラが聞き返した。「レミス爺はフォーのホントの父ちゃんじゃないんだって。」そっとシドマが耳打ちした。「血の繋がりなんざどうだっていいんだ。あんたは俺を育ててくれた。それだけで親父と呼ぶに値する。」レミスは大きな竈の前で暫く黙って
花神ミライ さん作 [295] -
時と空の唄11-12
シンとした空間にランスォールの声がカラリと響いた。呼び慣れた名前なのになんだか声が微かに震える。「………っ!」呼ばれ慣れた名前にシーラは動揺し、身を隠すように狩人の後ろに引っ込んだ。「シーラ?」フォーが問い掛ける。彼女の瞳は哀しそうに、泣きそうなほど潤んでいて、まるで彼に会うことを恐れているようだった。「シーラ、聞いてくれ。」「ごめんなさい。」小さな肩が震える。「…シーラ。」ランスォールが踏み出
花神ミライ さん作 [309] -
時と空の唄11-11
「最近、長い銀髪の娘が訪ねて来ませんでしたか?」レミスは睨むように暫くランスォールを見ていたがやがて蛙のような広い口を開いた。「知らん。」それだけ言うとレミスは部屋の奥に消えようとした。「レ、レミス爺!手紙!」シドマが手紙を渡すとその場で封が切られた。「…………。」読み終わった彼はその手紙を暖炉に放り込んだ。「え!?捨てるんですか?」レミスはまた責めるような目で雪を見た。「わしに来た手紙をわしが
花神ミライ さん作 [290] -
時と空の唄11-10
あれから2日。お互い違うルートの近道を行っていたが、どうやら馬だった分シーラより早く着いたらしい。「おいランス。」ラウフが隣で小さく言った。「もう、シーラの手を離すんじゃねえぞ。」「分かってる。」サントラーセットの時も、キジルの時も、去り行く彼女を引き止める事が出来なかった。手を、離してしまった。母さんの事で、あいつが自分を責める必要なんてなかった。それを、オレはあいつを責めちまった。だから、オ
花神ミライ さん作 [316] -
時と空の唄11-9
「『土濤 泥池に沈め』!」シーラが叫ぶと泥の波が黒スーツに覆い被さるように襲いかかった。「よし、こっちだ!!」フォーはシーラの手を掴み茂みの中を走った。ガサガサという音が耳に届いてはまた遠くなる。後ろからは黒スーツが追いかけてくる。「この中に!」突き飛ばされるようにして逃げ込んだのは小さな穴。二人がようやく入れるサイズで、隣からは息切れしたフォーの息遣いが聞こえてくる。ドタドタという数人の足音と
花神ミライ さん作 [287] -
時と空の唄11-8
同じ頃、馬も足を止めていた。「な、なあこいつら何なんだよ」シドマが恐怖に震えた声で訊いてきた。今目の前にいるのはいつかシーラを狙ってきたあの黒スーツの男たち。「なんで…。なんでこいつらがここにいるんだ!」サントラーセットで撒いたお陰で完全に姿は消したはずだったのだがまさかこんな山奥まで追ってくるとは予想外だった。黒スーツの一人が四人を見渡し、無線機で連絡を取り始めた。「目標は集団にいない。これよ
花神ミライ さん作 [264] -
時と空の唄11-7
一方ランスォールたちの方もどうにかヘトラレスタの谷までの案内人を獲得し、身支度を整えた所だった。「じゃあ、シドマ。ヨロシクな。」「うん。レミス爺宛の手紙を届けるついでだからね。」案内してくれるのは最初、小屋のドアを開けてくれた大男の息子のシドマ。雪をシドマの後ろに乗せて前を走り、その後をランスォールとラウフが付いていく。「お父様とよくここらの山に?」雪が聞いた。「うん。昼間はみんなと獲物を追っか
花神ミライ さん作 [295] -
時と空の唄11-6
嵐が去り、柔らかな陽射しが雲の隙間から注がれ始めた。嵐が止んだのは翌日の早朝の事で、シーラもフォーも毛布にくるまって眠っていた。先に目を覚ましたのはフォーでまだ眠い目を擦りながら暖炉に火を起こす。「寒…。」山の朝は冷える。身震いをしていると隣でシーラがもぞもぞと動いた。フォーは驚いてシーラを見下ろす。毛布に猫のようにくるまって眠る彼女は、写真の少女にそっくりで何かの縁を感じずにはいられない。本当
花神ミライ さん作 [358]