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アイさんの投稿された作品が109件見つかりました。

 
  • 真実の愛

    「二人の愛は永遠に続く」陳腐な表現が私の胸にガラスをねじ込む。愛とは何で、真実はどこに眠るのか。朽ちることを恐れた世界は、いつしか保存することを学んだ。永遠に咲き続けるドライフラワー。情報化された古びない本。林立する墓石。人は存在を留めたがる。すべての生き物は死を怖れる。だけど、陳腐な表現でしかないけれど、「命は消えるから美しい」有は無に帰すから価値が生まれる。だから、冷酷な冬のように凍結された永
    アイさん作 [410]
  • 子供のセカイ。270

    それがますます心の溝を深めるようで、しかしこの扉を開ければ、否応なしに舞子の領域に入っていかなければならないのだ。「準備はいいかい?」ミルバは尋ねた。尋ねるのが無意味なくらい、諾しか聞き入れない、という声色で。「いいわ。――行きましょう」耕太が頷くのを確認し、美香はミルバの緑色の瞳を正面から見つめて、きっぱりと言った。ここまで来たからには、もう後戻りはできない。引き返したくなる自分の臆病な心を殺す
    アンヌさん作 [448]
  • 子供のセカイ。269

    以前なら迷いなく舞子のために心を決めていたため、余計に違和感が拭えなかったのだろう。(もうすぐそこまで来ているのよ。今こそ、しっかりと心を固めるべきだわ)舞子を助ける。それだけのために、これまで長い道程を歩いてきたのだから。「ありがとう」久しぶりに笑った美香の頬は強張っていたが、耕太は照れたように頭の後ろで腕を組むと、どんどん先を急ぐミルバの背中に追いつこうと走り出した。三人はコルニア城内を駆けた
    アンヌさん作 [427]
  • 子供のセカイ。268

    ミルバは目を閉じると、膝の上で強く拳を握った。「――ハントには酷なことをしてしまった。最後の最後に記憶を残さないよう時間を戻したから、私が処刑されたことに最初は疑いを持たなかったはずだ。でも、今は違う。ハントは揺らいでいる。私が再び協力を要請しに行ったことで、自分が殺された記憶が蘇ったはずだから」だから、治安部隊が味方につくかどうかわからないと言っていたのだ。美香はすぐに歯切れの悪かったミルバの態
    アンヌさん作 [388]
  • 子供のセカイ。267

    美香はじくじくと身を蝕んでくる負の感情に、たまらず唇を噛み締めた。それは、罪悪感だった。時間が何度も戻されていたことなど、きっと舞子は知らない。何度も死に追われ、それでも“子供のセカイ”を守ろうと立ち上がり続けた人々のことなどお構い無しに、この世界を乗っ取ったのだ。いや、それどころか、汚い仕事はすべて覇王がやっていたのだろうから、自分が傷つけた人間がいることさえ知らないのかもしれない……。美香は謝
    アンヌさん作 [372]
  • 子供のセカイ。266

    「でも、舞子のことは殺さないと、約束してくれたわよね?」ひっそりと掠れた声で核心に迫る美香の言葉に、耕太はごくりと唾を呑んだ。美香は、悲しみとも憐れみともつかない、不思議な表情でミルバを見つめていた。「『約束』はしていない。『努力する』と言っただけだ」しかしミルバは、あっさりと二人の望みを絶った。場合によっては、本当に舞子を殺すという、明らかな意志表示。美香は急に踵を返すと、スタスタと入口に向かっ
    アンヌさん作 [443]
  • 子供のセカイ。265

    「……鎖を、切れ」机に腰掛けたまま、こちらを見上げるミルバの額にはびっしりと汗が浮いていて、先程の状況がいかに危険であったかを物語っていた。淀んだ疲労の色をその瞳の中に捉えた途端、美香は弾けるように走り出し、右手の鎖を引っつかむ。耕太も当然駆け寄り、夜羽部隊の存在に目を向けることさえなく、ひたすら淡々と同じ作業を繰り返して、鎖を断ち切り続けた――。「……今度はうまくいったな」ミルバは何でもないよう
    アンヌさん作 [373]
  • 子供のセカイ。264

    あの夜と同じ、渇ききった空気に、何の温もりも感じさせない、殺戮者の気配。「私が殺し損ねた生き残りか」ミルバは物騒な声色で呟くと、脇で棒のように突っ立っている美香と耕太に、ぴしりと鞭打つように指示を出した。「美香、鎖を断ち切り易いように両手で押さえろ!その時、鎖よ外れろと念じることを忘れるな!耕太はその剣で思い切り鎖を切れ!右手、右足、左手、左足の順にだ!」眠りから叩き起こされたかのように覚醒した二
    アンヌさん作 [301]
  • 子供のセカイ。263

    ミルバは蒼い石でできた机に腰掛け、床から伸びる長い鎖で四肢を繋がれていた。そして子供の周りには、幾千冊もの本が洪水のように溢れ、ひしめいている。美香もまた、ぽかんと口を開けたまま、動きを止めてしまった。「……お前、何やってんだ?」ようやく出たらしい耕太の声は呆れ返っていて、対するミルバは、今しがた読んでいたであろう厚い本をパタンと閉じて平然と返した。「何って、見ればわかるだろう?ここに閉じ込められ
    アンヌさん作 [307]
  • 子供のセカイ。262

    「当てる気があるのかしら、お嬢さん?」乙女たちはクスクスと笑い、美香と耕太に向かって一斉に様々な色の粉を振り掛ける。恐らく睡眠薬や痺れ薬などの類だろう。美香は間一髪、剣を横に振ることで粉の全てを凍らせ、ダイヤモンドダストのように結晶がきらきらと宙を舞う。それを隠れみのにし、髪の長い一人の乙女が、息継ぎする間もなく美香の眼前に迫った。「っ!?」ガッと足が何かに躓き、乙女の身体のバランスが大きく崩れる
    アンヌさん作 [310]
 
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