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アイさんの投稿された作品が109件見つかりました。

 
  • 子供のセカイ。191

    (早く来い……。)朦朧とする意識の中、ジーナは呪詛のようにそう唱え続けた。荒い息を弾ませ、歯を食いしばる。傷は背中や肩、手足にも及んでいた。少し血を流しすぎてしまった。このままでは最後の敵を拝むことなく、闇の中に意識を落としてしまうだろう。その時、ようやく壁から塊が分離し、ふわりと何かが歩み出てきた。それはまるで神のような姿をしていた。滑らかな白衣に包まれた身体は、金色の光をまとっている。長い白
    アンヌ さん作 [385]
  • 子供のセカイ。190

    猫はぱくん、と王子の襟首を噛むと、親猫が子猫に対してそうするように、ひょいと王子の体を持ち上げ、トコトコと来た道を戻るように走り出した。「ジーナ!」王子の必死な声を聞きながら、しかしジーナは振り返らなかった。ジーナはすでに目の前の壁一点に意識を集中させていた。剣を両手で横に構え、何が飛び出してきてもいいようにする。足を少し引き、腰を低くため、衝撃に備えた。今回の生成は長かった。青い壁は性質を変え
    アンヌ さん作 [409]
  • 子供のセカイ。189

    青の箱庭は静かになり、ただ、二人と一匹のいる空間だけが熱気を帯びていた。「……はぁ。疲れた。」「そうだな。」ジーナは剣を投げ出して床にへたり込んでいる王子の頭に、ぽん、と手を置いた。「お疲れ。」「……ありがとう。」珍しいな、と思ったことは、怒られるので口には出さないことにした。俯せに横たわる猫の、血だらけの背中を見遣り、王子はゆっくりと立ち上がる。「君もよく頑張ったね。」猫に近寄り、鼻の上を撫で
    アンヌ さん作 [380]
  • 子供のセカイ。188

    王子の肩から、ちょうど一匹のコウモリが飛び立つところだった。ジーナは憎しみをこめた目でコウモリを睨むと、素早く剣を突き上げ、そのコウモリを串刺しにした。ばた、ばた、と弱々しくばたついた後、やはりコウモリは霞がかったように、スッと消えてしまう。そのまま剣を幾度か振るい、自分と王子に近寄っていたコウモリ達に斬りつけたが、一羽仕留めただけで後は避けられてしまった。王子は胸ポケットから白いハンカチのよう
    アンヌ さん作 [359]
  • 子供のセカイ。187

    わけのわからないものが次々と生み出される青い壁は、確かに不気味だった。しかし、ただ純粋に己の力の限界まで試して戦えるこの状況に、ジーナは沸き立つような興奮を覚えていた。ジーナは自分の領域を越える際、魔女としての力を犠牲にした。よって以前のように、防御魔法が常に身体の周囲を守ってくれるというわけにもいかず、己の身体能力だけを頼りにした戦いをせねばならない。しかしそれが逆に、ジーナの中の戦士としての
    アンヌ さん作 [396]
  • 子供のセカイ。186

    ジーナは抜き途中の剣の刃で、かろうじてそれを受け止める。ギィン、と耳障りな音が生じると共に、右腕に負荷がかかった。剣にぶつかったものが鋭い獣の爪である事に気づいて、ジーナは目を見開いた。「ぐうっ!」ジーナは力任せに刀身をすべて抜き放つと、剣を持った右腕を横なぎになぎ払った。ふさふさの毛で覆われた黒い獣は、ぎゃう、というような声を上げて横の壁に叩きつけられ、ズルズルと地に落ちる。駆け寄ったジーナは
    アンヌ さん作 [359]
  • 子供のセカイ。185

    思わず二人は、互いに眉を潜めた顔を見合わせた。「これを使って道を拓くのかな?」「恐らくそういう意味だと思うが……。そもそも、こんな物騒なものを使わなければならないほど、強固な壁なのか?」ジーナは膝をついたまま、行き止まりになっている目の前の青い壁を、じっと睨むように見つめた。王子もそれに習う。どうにも腑に落ちなかった。二人共、胸の奥がざわざわするような不穏を感じていたが、その正体がわからない。な
    アンヌ さん作 [352]
  • 子供のセカイ。184

    青い空間は、歪に掘られたトンネルのような構造になっていた。急に細くなって身を屈めねばならなくなったり、かと思えば城の広間のように広くなったりを繰り返した。しかし一本道なのは変わらない。どこもかしこも同じような色なので、奥行きが掴みづらかったが、なんとか壁に衝突することなく進んでいった。進みながらジーナは、否応なしに浮かんでくる、かつて同じ領域にいた知り合いの姿を、なんとか頭の隅から追い払おうとし
    アンヌ さん作 [381]
  • 子供のセカイ。183

    「……さぁ、行ってこい!」ルキは王子の手から猫の紐をはたき落とすと、ジーナと王子の背中を強く押した。彼からすればちょっと力を込めた程度にすぎなかったが、二人にはすごい衝撃だった。二人の体は前に吹っ飛び、あっという間に青く揺らめく扉の内側へと吸い込まれた。猫はニャオン、と一声鳴くと、主人である王子を追って自ら扉の中に飛び込んだ。彼らの姿が消えた途端、ユジユとサクは取っ手を手放し、ドシン、という重音
    アンヌ さん作 [397]
  • 子供のセカイ。182

    ジーナは低い声で言った。「……覇王がどんな計画を企んでいるか、今日になればわかると言っていたな。お前達、この場所で何をやらされている?これから私達に何をさせる気だ!?」「百聞は一見に如かずって言葉があんだろ?」ここに来るまで真面目くさった態度を貫いていたルキは、急にいつもの調子を取り戻したように、砕けた様子で肩をすくめた。「つまり、やってみりゃわかるってことだ。――おい、ボールを持ってる奴はどこ
    アンヌ さん作 [441]
 
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