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アイさんの投稿された作品が109件見つかりました。

 
  • 子供のセカイ。181

    地下へ入ると、天井にぼんやりと明かりが灯るようになった。松明ではない。それ自体が発光している謎の球体で、石でできた通路をより硬質に見せるような、弱い光を放っていた。時折、ずらりと並んだひしゃげたドアの向こうから、何かが呻く低い声が漏れ聞こえた。ドスン、ドスンと壁を殴るような音、鎖をじゃらじゃらと鳴らす音も響いてくる。その度に王子は、手に持った猫の紐を強く握り締め、臆病風に吹かれそうになる自分を叱
    アンヌ さん作 [454]
  • 子供のセカイ。180

    その猫は昨日、「役立たず」だという理由で、治安部隊の若者達に存在を消されそうになった王子を助けるため、光の子供の力を使って耕太が生み出した想像物だった。強力な猫の主人である、という位置付けで、王子はなんとか強制労働施設で働けるだけの力があることを認められ、消されずに済んだのだ。それだけではない。猫は危機に陥った美香と耕太を救うため、敵方の監査員を捕まえ、その場に混乱を巻き起こして、捕まりそうにな
    アンヌ さん作 [486]
  • トラウマ

    いろいろできるか試してて気づいたら前へ進むための足を失ってた怖がってしまった失いたくないと思った何を、とは深く問わずにあたしは自分の身体を強く強く抱きしめる増えていく痛みの傷口拭いきれない血や粘液を頬に擦りつけて苦しいのは自分だけ違うと分かってるのに、必死でそう言い聞かせて目を閉じた夜は好きだ醜いあたしを隠してくれる目を閉じてしまえばいつも夜手探りで進んでつまずいてほら、また新しいトラウマが増え
    アイ さん作 [541]
  • 子供のセカイ。179

    正直、二人は内心戸惑っていた。ハント達の立ち位置がまったくもって掴めない。彼らは一体何を考えているのか。治安部隊は果たして敵か、それとも味方なのか。しかしハントは、そんな王子とジーナに対し、結局何も告げることはなかった。「そこにいる奴らの管理は、ルキ、お前に任せる。」「わかった。」「じゃあな。……行ってくる。」そしてハントは、裸足の足にぐぐっと力を込めて大地を踏みつけると、次の瞬間、ドッという重
    アンヌ さん作 [432]
  • 子供のセカイ。178

    「お前、私の頭の中に興味でもあるのか?」ジーナはわざとからかうような口調で答えた。まるで「私に興味があるのか?」と言っているように聞こえ、周囲から面白半分の野次が飛ぶ。ルキはフン、と鼻を鳴らすと、ハント同様不機嫌になり、ジーナから離れていった。その時、突如中庭全体に、大きな黒い影が落ちた。頭上から凄まじい強風の圧力がかかり、そこに居合わせた全員の髪がなぶられ、やわい草はちぎれて飛び散る。王子は思
    アンヌ さん作 [455]
  • 子供のセカイ。177

    * * *同じ朝の光が、ラディスパークの最北端に位置する強制労働施設にも差し込んでいた。足枷を外されたジーナは、朝露の下りた草地をブーツの底で踏んで立ち上がると、前向きに縛り直された腕をそのままに、大きく背を反らせて伸びをした。その表情に疲れの色はあまりない。唯一、切れた口端に固まった血がこびりついているが、それでも、とても昨日治安部隊を相手に大立ち回りし、牢
    アンヌ さん作 [427]
  • 子供のセカイ。176

    わがままを言うなら、本当は二人を救い出して、ここへ連れてきてほしかった。しかし、それがどんなに厳しいことなのかは、美香にもわかる。それに、彼らが無事であるかどうかさえわからないような状況だ。あんな派手な騒ぎを起こしたのだ。あの屈強な治安部隊の若者達に何をされているかわからない。今はただ、彼らの様子を知ることができるだけで十分だった。(きっと無事でいてくれるわよね。)洋館で休眠を取った時に見た、あ
    アンヌ さん作 [439]
  • 子供のセカイ。175

    ミルバは緩く首を横に振りながら言った。「私は君達と一緒にはいられない。覇王の動向を探らなければならないし、情報を撹乱させる仕事もある。」「それに、」と、ミルバは続けた。「そうしなければ、君達に合図が出せないだろう?」「合図……?」美香は眉を寄せた。一体、何のことを言っているのだろう。ミルバは美香を真っすぐに見上げた。「もちろん、コルニア城に突入する最適の時期を見計らって、私が出す合図だ。」「!」
    アンヌ さん作 [446]
  • 子供のセカイ。174

    「なぁ、そろそろ寝ないか?俺、けっこう疲れてんだけど。」「そうだね。じゃあ、私はこれで。」そう言ってミルバは、くるりと美香達に背を向け、部屋から、それどころか家から出ていこうと、玄関に向かって歩き出した。当然、美香と耕太は驚いて声を上げる。「ちょ、ちょっと待ってよ!」「俺達をコルニア城に連れていってくれるんじゃないのか!?」ミルバは廊下で立ち止まり、くるりと振り返ると、困惑した二人の顔を静かな表
    アンヌ さん作 [501]
 
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