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アイさんの投稿された作品が109件見つかりました。
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子供のセカイ。210
「ねえ、ジーナ。」「ん?」陰った視界の中、振り返ると、王子は所在なげに視線をさ迷わせていた。「何だ?」投げやり口調で返したジーナは、疲れ切っていた。体は王子のおかげで回復していても、精神まではそうはいかない。“青の混沌”での幾多の戦闘の記憶と、つい今しがた交わしたラドラスとの会話が、ジーナの胸中に鉄の塊のようなしこりを残していた。王子はなぜかジーナから目を背けたまま、小さな声で言った。「……いや
アンヌ さん作 [441] -
子供のセカイ。209
「お前なら、もう予想はついてるんだろ?」ジーナは目を細めた。「永遠の命、か。」ラドラスは、静かに頷いた。“子供のセカイ”に生まれ落ちた想像物は、それぞれ領域を手に入れ、ラディスパークの外に出る。領域は光の子供にその存在を忘れられることで、徐々に“子供のセカイ”の中心から離れていき、やがては消え失せるのが運命だ。だからラドラス達は、“真セカイ”を支配し、光の子供を脅すことで、想像物の存在を再度『想
アンヌ さん作 [393] -
子供のセカイ。208
王子もまた美香を思ってか、歪んだ顔で自分の腕を握り締めている。それだけ美香のことが心配なのは、美香が心を押し殺してでも前に進む、健気な少女だからだ。その芯はすっと真っ直ぐに通っているが、何にも屈しないほど強くはない。そして、美香の気持ち云々より先に、事態は予想以上に深刻だった。“真セカイ”に呼び出される想像物が無害なのは、想像物が“子供のセカイ”から“真セカイ”に入る際に、犠牲として物体化の力を
アンヌ さん作 [406] -
子供のセカイ。207
もう一つ。想像物は、その想像物を考えた子供が、“真セカイ”で“子供のセカイ”への扉を開ける事で、“真セカイ”へ行くことができる。しかしそれでは、舞子が連れていきたいと思った想像物を連れていけないし、何より、そういう形で“真セカイ”に現れる想像物は、どうしても“子供のセカイ”にいる通常の状態より弱くなってしまうのだ。ジーナが楽観的思考の人物であれば、ひょっとしたら舞子は、犠牲なしに姉や幼なじみの少
アンヌ さん作 [411] -
子供のセカイ。206
この王子はなかなかに聡い。治安部隊の若者達が、王子の事を貧弱だと馬鹿にしているのを耳にしたが、ラドラスはそうは思わなかった。力とは強さのことだけではない。治安部隊は常人ならぬ身体能力を持っているからこそ、それを依りどころとし、なおかつ誇りに思っている。だが、王子には王子の才能がある。癒しの力は勿論だが、何よりこの綺麗な少年は、人の心や物事の流れを正確に読む能力に長けている。ほんの半日ほどの付き合
アンヌ さん作 [438] -
子供のセカイ。205
「まず、地下の青い空間について話そうか。あそこは、“青の混沌”と言う。“真セカイ”にいる、光の子供の想像エネルギーが溢れることによって作られる、“子供のセカイ”の外殻のようなものだ。“闇の小道”が、“真セカイ”と“子供のセカイ”を結び付ける正常ルートだとすれば、“青の混沌”は異端ルートといった所だな。本来、誰かが介入していいような場所じゃない。……と、いうより、介入できないと言った方が正しいかな
アンヌ さん作 [403] -
子供のセカイ。204
ジーナは少し黙した後、暗い表情でラドラスを見た。「……まず、お前についてだ。お前はなぜこれほど自由に動ける?勝手に私を助けて部屋に運んだことはもちろん、そもそもボールを持っているところからおかしいだろう。あのボールはとてつもなく強力だ。恐らく武器にすらなりうる。囚人が持って許されるような代物ではない。……囚人、というのも、怪しいものだな。治安部隊の奴らでさえ、どこかお前を避けているように見えた。
アンヌ さん作 [454] -
子供のセカイ。203
「さて、こんな辛気臭い部屋で話すのもなんだし、外に出ようぜ。」二人は唖然としてラドラスを見上げ、それからジーナは首を傾けた。「……そんなに自由に動いていいのか?ここは強制労働施設だと聞いたが。」「大丈夫、大丈夫。俺には特権があるからな。」ラドラスはそう言って朗らかに笑う。どこまで本気かわからないその台詞に、ジーナはまたあの、嫌な類いの不安を感じた。ジーナがベッドから下り、ブーツを履くのを待ってか
アンヌ さん作 [414] -
子供のセカイ。202
「それで、そのボールを使うと、一時的に力が戻るんだったな。私が使っても同じ効果があるのか?」「ああ。試してみるか?」ラドラスが手に持ったボールをジーナに渡しかけたのを、慌てて王子が止めに入った。「ラドラス!」真剣な王子の目の色を見て、ジーナは眉を潜める。なぜ焦っているのだろう?ラドラスは面倒そうに息を吐くと、「あー、そうだな。やっぱやめとくか。」と言って、ボールを懐に戻した。「私が試してはいけな
アンヌ さん作 [390] -
風に向かって凛と立つ
風に向かって凛と立つ誰かになりたくて痛みを痛みのまま痛いとも思わずに運べたらいいと白い顔をした少女はやわらかな頬を桜色に染めて笑った孤独を恐れるのは決して恥ずかしいことじゃなくて誰かを想っているなら誰か想われない人がいるのは当然でその矛盾に涙がにじむできれば想われる方がいいそれも至極当然のことだけど世界は主人公で溢れてるから成り行き上誰かが不幸にならなければいけなくて誰かが死ななければならなくて
アイ さん作 [426]