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ジョー さんの投稿された作品が3件見つかりました。
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兎飴と白雪の風〜take2〜
戦後の混乱の最中、私達家族は絶望に陥った。父が借金を作ってしまったのだ。それも並みの額じゃない。返すことなんて、到底無理だった。それからしばらくして、借金取りと呼ばれる者が現れた。その人は私の声をよこせと言った。確かに、私は近所でも評判の歌声をしていて、将来を期待されたほどだった。そんな情報をその人が何故知っていたのか知るよしもない。その日以来、私は家族と離れ、1人歌を歌っている。家族にはしばら
ジョー さん作 [89] -
兎飴と白雪の風〜take1〜
「詩子ちゃん、女優の仕事、やらない?」(また始まった、加藤さんのくだらない馬鹿話。)「やりませんよ!私は歌一本でいきたいんです。」「んなこと言ったって、お金、欲しいでしょ?」嫌な人だ。私の綺麗事を簡単に見抜いてしまう。確かに、私は金のために歌を歌っている。このろくでもない昭和の時代を生き抜くために。そして家族のために。少し昔の話をしようか。私の家は(自分で言うのもなんだが)裕福だった。田舎の地主
ジョー さん作 [110] -
兎飴と白雪の風
月の晩思い出すのは幸せだったあの頃いつものように細い路地を駆けていった。貰ったばかりのお小遣いを握り、いつもの飴屋へ急ぐ。かわいい着物の裾が楽しげに揺れる。「みーちゃん今日は何にする?」「真っ赤な飴と青い飴!」「そうかい。それじゃあ、包んであげるから諷太郎と遊んでおいで。」優しい夜はもうこないらしい。夢は見るほどに苦しんだ。だからこんなとこにまだいる私は帰り道を忘れた。そう、もう戻れないという。
ジョー さん作 [154]
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