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KSKくま さんの投稿された作品が27件見つかりました。

 
  • 肌とねこ4

    引っ越して早々のストーカー(?)被害は私にとってかなりショッキングだった。運の悪い事に転居報告書は会社に提出済みで、重ねて引っ越すなんて事は出来なかった。「・・・どうすれば良いと思います?」頼った先は部内唯一の同性の先輩だった。昼食時間にスゴく嫌な話をしてくる後輩だと思ったのだろう、眉間に皺を寄せて、しばらく黙って鯖の味噌煮を摘まんでいた。「まあ、誰かと一緒に帰るしかないわね」鯖の皮を残して、お
    KSKくま さん作 [285]
  • 肌とねこ3

    子猫の危機を救ってくれたおじさんは「今関」という人だった。表札で知った。今関さんの表札には訪問販売員が書いたと思われる「K」の文字があった。「キック」の「K」。販売員を一蹴したらしい。優柔不断そうではなかったが、なかなか剛直な風でもなさそうだったので、ちょっと意外だった。書かれたのはかなり前らしく、文字はかすれていた。気付いていないのか、わざと残しているのか、どちらにしろ、セールスは寄り付かない
    KSKくま さん作 [303]
  • 肌とねこ2

    三日目にして猫はどこかへ姿を消した。まだ子猫だったのでそう遠くにはいっていない。・・・と、思う。新居ということもあって、戸締まりは前よりも几帳面にやっていた。近くのコンビニへ行くにも、二重ロックしてたくらいだ。だから、きっと部屋にいるはず。家具やなんかは業者の人に据え付けてもらった。段ボールの散らかる室内で隠れるところは壁とその隙間くらいだ。わざわざ買ってきた猫じゃらしを忙しなく振って呼んでみる
    KSKくま さん作 [288]
  • 肌とねこ1

    人が恐いわけではない。ただ触れられることが嫌だ。猫にすがり付く様に頬をよせると、彼は大きく欠伸して、余韻で「ニャ」と啼いた。私の悩みなど関係なく、日だまりへ歩き、フローリングの上へ脚を投げ出した。毛繕いに余念がないようだ。私は自分の毛先をよじって一つ息を吐いた。猫の白い毛に反射した陽光が目に痛かった。私の趣味は旅行。でも、本当にそれが好きなのかは分からなくなっていた。ユミは私の部屋で無遠慮に旅行
    KSKくま さん作 [284]
  • 東鉱洞(ひがしこうどう)

    1金床(かなどこ)とクジラの唄を聞くと、古いものばかりを集めていきる幻惑の霧を抜け出せない私が居ることに気付いた。2タールの匂いがやたらと鼻について気分が悪くなった。正直に言えば吐き気を催し、倒れ込みそうで目眩がした。春の風が吹き付けて来るのに、タールの匂いが胸の中にまだ渦巻いている。3「フックに服の襟を引っ掛けてもらって、高く高くクレーンで吊り上げてもらうのはどうだろう」という提案は思いの外、
    KSKくま さん作 [297]
  • ダイブ・イン・ベッド

    幻覚に似た感覚と生きる上での享楽空に浮かぶようにその綿の中で己の温かさを抱(いだ)いて眠れ春は短いしかし、人は羊を数えるより先にすべきことを垣間見るハズだ美しいばかりではないあたかも真実に見える柔らかい某(なにがし)かに酔うことに感じる戸惑いなど無価値でしかない生きる以上に大切なこと、生きる中で夢見ること怖れてはいけない怖れはない唇のほんの先で紅い実を掴み、その空(から)のグラスに落としてしまえ
    KSKくま さん作 [312]
  • 春雨

    腐れ我が身を呪うが如しひと、人にしてヒトでなし私はこの世に生まれ出でカナシカナシと言いにけんつらい浮き世の風にふかれて、死ぬや生きるや春の雨。つづかぬ思いに雲切れて陽光の立つ庭に出でしを・・・世界はもう駄目になってしまったかのように人々が狂乱している。生きる意味のなくんば、死ねばよし。ではまず私が・・・。
    KSKくま さん作 [322]
  • 虫 6

    午前三時ごろだったと思います。私は不信な音を耳にして目を開きました。泡が弾けるような音でした。最初は何か耳に詰まっているのかと思いましたが、指を突っ込んでみてもなんら変化なく、どうも天井の方から音がするらしいのです。「プチプチ」と続けざまに音がします。私は、禁止されていましたがそっと窓を開けて上の階の窓を見ましたが、元より消灯時間以後で、様子を窺うことはできませんでした。諦めてベッドに戻り、布団
    KSKくま さん作 [663]
  • 虫 5

    この日私はやっと自分の立場を明確に理解しました。私は患者ではなかったのです。媒介者。それが私の立場だったのです。言ってしまえば蚊やダニと同じ。私は隔離されるべき、疎まれる存在です。何一つ私の意思は尊重されない。それは知ることに対しても同じです。患者であれば当然教えられるべき寄生虫のことでさえ教えてもらうことが叶わないのです。私は確かに木村という医師に会い、その人物からわずかにそれを耳にしました。
    KSKくま さん作 [747]
  • 虫 4

    「ああ、彼。今日は休みのはずですよ」「あなたは?」「そうですね、初めてですよね。初めまして、私は内科の木村です。それで、ご用件は?」忙しく立ち回っているのか、急かすような早口で聞かれ、私は慌てて言いました。「私はいつになったら退院できるんですか?」「退院・・・」木村氏は壮年の焦りを見せながら眉間にシワを寄せて考え込んでしまいました。「あなた、増谷先生からどこまで話を聴いていますか?感染状況につい
    KSKくま さん作 [745]
 
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