トップページ >> ラク さんの一覧
ラク さんの投稿された作品が54件見つかりました。
-
宝物11
授業が始まってもその日は全く苦痛に感じない。全てがいつもと違って見えた。あの阿部にさえ気持ちよく挨拶できるほどだった。昼になっていつものように学食に行ったが、その日は何となくいつもと違ったものが食べたいと思い、ハンバーグ定食を食べることにした。席に座ったとき、俺はあの女がまた来てほしいと思うようになっていた。すると、俺の気持ちを察したかのように女はやって来た。「…あの、そこ、いいですか?」女の顔
ラク さん作 [170] -
宝物10
一人になった俺はさっきまで感情を抑えていたものがふっと抜けたかのように興奮しながら、無意識に部屋に足が進んでいった。その興奮は夜も続き、買ってきた服のことなどすっかり頭から抜けていた。ほとんど眠れなかった俺だったが気分は良く、心も穏やかな状態だった。昨日買った服はあえて着ないでいつも通りの服で家を出ることにした。外に出ると、庭に昨日の朝もいた猫が苦しそうに鳴いているのに気付いた。まさかと思い右前
ラク さん作 [185] -
宝物9
呆然とした俺を乗せながら電車は走り続け、冷静になったときには電車は降りる駅のすぐ手前まで来ていた。俺は綾に気付かれないように電車を降り、急ぎ足で改札を出た。その直後から今度は一転、スローペースで歩き、後ろから綾が来るのを待っていた。俺は綾が俺に気付いてくれるのを期待していた。すると案の定、「優くん!」と、俺の肩を軽くタッチしながら声をかけてきた。俺は心の底から喜びと嬉しさが込み上げてきた。それで
ラク さん作 [215] -
宝物8
午後は予報どおり雨が降ってきた。傘持ってきといてよかった〜。授業が終わり、帰る頃には阿部への怒りは完全になくなっていた。と同時に普段の俺に戻ってしまい、いつもの「彼女作りたい」の気持ちが頭を駆け巡った。俺は帰りがけに服を一着買ってから電車に乗った。今日も電車混んでるな…、俺は吊り革につかまりながらあの学食の女のことを考えていた。電車は綾の大学の駅に着いた。すると、なんと綾が乗ってきた。しかし綾は
ラク さん作 [151] -
宝物7
ふり返ってみると、そこには鬼教師で有名な阿部がいた。「松田、お前今日遅刻したな。この間といい今日といい、お前は何回遅刻すれば気が済むんだ」「すいません…」チッ、…まったくうるせーセンコーだ。「お前からは反省の色が見えないな。次遅刻したときはどうなるかわかってるな!」そう言って、阿部は去っていった。イライラとストレスを溜めながら俺は学食に行き、いつものようにカレーを食べていた。「すいません、そこ、
ラク さん作 [158] -
宝物6
朝起きて目覚まし時計を見ると7時50分を指していた。ヤベ〜、寝坊した。俺は朝食も食べずに靴を履いた。それでも昨日見た天気予報で雨が降ることを思い出し、玄関に置いてある傘を持ってドアを開けた。外に出たとき庭に一匹の猫がいるのに気が付いた。のら猫か…、よく見ると右の前足に怪我を負っている。可哀想だ。何とかしてやりたい。してやりたいのはやまやまだが俺には時間が無い。このとき俺は猫の様子よりも左手の腕時
ラク さん作 [188] -
宝物5
授業が始まっても全く身が入らない。全く集中できない。そのまま昼になり、俺は学食でカレーを食べていた。ちょっと目線を向こうにやると楽しそうにいちゃつくカップルがいる。うらやましい…。俺もあんな風に彼女作りたい…「あの、すいません」そのとき俺はようやく我に返った。「隣、空いてますか?」女だ。気まずい。「はい…」「他に何処も空いてなくて…。隣、いいですか?」「どうぞ…」俺はただひたすらこの場から逃れよ
ラク さん作 [205] -
宝物4
家に帰った俺はベッドの上に横になってしばらく黙っていた。そしてそのまま眠ってしまった。次の日、窓から入ってくる光で目が覚めた俺は、いつも以上に低いテンションで家を出た。すると、偶然にも家から出てくる綾を発見した。綾も俺に気付いた。「おっはよ〜!」元気な声だ。「お、おはよ…」無意識に口が動いた。相手が綾なのに情け無い返事だ。「優くん、途中まで一緒に行こう!」「あぁ…」「元気ないね、どうしたの?」「
ラク さん作 [177] -
宝物3
「こ、これは…」俺は一瞬目を疑った。目をこすってからもう一度見たが、その写真の中身は同じだった。そのとき、階段を上がってくる音が聞こえた。「おまたせ!」部屋のドアを開けながら綾の元気な声が部屋中に響いた。俺は綾の顔をじっと見た。「何?」「い、いや…」俺は言葉が出なかった。「でも久しぶりだね。一年ぶりくらいだっけ。優くん変わってないね」「あぁ…」「でももうお互い大学生だもんね、早いなぁ。ところで優
ラク さん作 [197] -
宝物2
しばらくすると階段を下りてくる足音が聞こえた。「優くん、久しぶり!」紛れもなく、その声は綾だった。綾は大人になっても子供の頃と同じ呼び方で俺を呼ぶ。明るい、響きのいい声。「おっす、久しぶり!」「突然どうしたの?」「いや、ちょっと寄ってみただけ」「な〜んだ。急に来たからびっくりしちゃった」あの頃と同じテンポで二人の会話が続く。「せっかくだから上がっていけば?」「じゃあ、少しだけな」俺は何の抵抗もな
ラク さん作 [230]