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麻呂さんの投稿された作品が616件見つかりました。
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奈央と出会えたから。<424>
少しずつ、クリスマス色に染まりつつある街中を、聖人とたわいのない話をしながらゆっくり歩く――『そういやこの前、うちの親父が、奈央の母さんトコで弁当買った時、釣銭もらうの忘れたらしくてよ、後で気付いて、取りに行ったらしいケド、奈央の母さんに笑われたってヘコんでたぜ。』『あはっ。そう言えば、うちのお母さんも言ってた。聖人君のお父さんが、お釣りを忘れて行ったのよって。』『ハハハ。うちの親父、奈央の母さん
麻呂さん作 [423] -
奈央と出会えたから。<423>
* * * * * *秋が過ぎ、ちらちらと初雪がちらつき始めた――街行く人の吐く息も白く、冷え込んだ小樽の北風は、マフラーを巻いた、あたしの頬をぴりぴりと刺激した。カチッ―ー‐隣を歩く聖人が、煙草に火をつけ、ふぅっと煙を吐く――『‥‥ゲホッ‥ゲホッ‥ゲホッ。』聖人は数日前から風邪をひいたらしい。『聖人。吸い過ぎだよ?』『‥‥ん。大丈夫。』今日は日曜日――久々のデートなんだケド、聖人の風邪がちょっと
麻呂さん作 [529] -
チンゲンサイ。<59>
人は一人では生きられない。みな支え合って生きている――そう気付かされた現在(いま)なら、辞めた会社の上司や同僚、パートのババァ共の立場さえも、考える余裕が出来る様な気がする。みんな生きる為に必死なのだ――守るべきモノの為に必死なのだと――家路へ向かう途中、不意に胸の内ポケットの携帯が鳴った。ユキエからメールか。そういえば今日は、ユウの合格発表だったな。《サクラサク。リョウとユウ、二人とも合格してよ
麻呂さん作 [519] -
チンゲンサイ。<58>
不思議だ――鈴木と別れてから、俺はしばらく放心状態に陥っていた。今の俺は自信に満ちている――身体の奥底からみなぎるパワーが満ち溢れて来るようだ。家に帰って家族に伝えよう。ユキエに――リョウに――ユウに――仕事を辞めた事で、こんなにも大切な物が周囲にはたくさんあったのだと言う事に、こんなにも気付かされた。家族――友人――そして、俺を取り巻く周囲の人達に俺は今、凄く感謝している。
麻呂さん作 [435] -
チンゲンサイ。<57>
* * * * * *職安通いの日々が着々と過ぎて行き、また、新たなる季節が早々と訪れようとしていたある日の午後、俺は、いつもの様に公園のベンチに座り、一袋50円のパンの耳をかじりながら、求人情報誌をぼんやりと眺めていた。今日のパンの耳は格別に美味かった。何故なら、ユキエが油で揚げ、砂糖を塗してくれたからだ。何の変哲もないパンの耳だが、一手間掛けると、こんなに美味いのか。心地好い風に吹かれながら、
麻呂さん作 [409] -
チンゲンサイ。<56>
渋川が、この北岡少年に、ユウの面倒を頼んでくれたのかどうかは、その時の俺には分からなかったが、後日、改めて学校を訪れた時、渋川と北岡少年には挨拶をしに行かなければならないなと思った。『オヤジ。今日の晩飯なんだろ?』『確か、母さんがハンバーグだって言ってたぞ。』ユウのイジメ問題が、ひとまず解決の道へ向かっている事が、俺は何よりも嬉しかった。これを機会に、俺は物事を前向きに考えられる様になった。自分自
麻呂さん作 [434] -
チンゲンサイ。<55>
* * * * * *渋川が提唱するイジメ対策案を受け、学校側が慎重に配慮してくれた結果、ユウへのイジメは明らかに消沈傾向にあった。その間、俺達夫婦も幾度となく学校へ足を運んだ。本人いわく、陰口や中傷の言葉を度々耳にする事はあるらしいが、秋場や金田から金をせびられたり、暴行を加えられたりする事は、全く無くなったという。学校側の配慮だけで、イジメ問題がここまで改善されるとは思ってもいなかった俺に、そ
麻呂さん作 [384] -
チンゲンサイ。<54>
『事なかれ主義のサラリーマン教師とは今日限りで卒業します。』突然の、思いも寄らない救世主の出現と話の展開がまだ信じられなくて、渋川の後ろ姿を見送りながら、俺達はただ頭を下げ続けた。
麻呂さん作 [487] -
チンゲンサイ。<53>
『渋川先生。私達夫婦は先日、ユウの担任の本橋先生と話し合いましたが、決して、今世間で騒がれているモンスターペアレンツではありませんから。』俺の言葉に渋川は、一瞬目を丸くして、じっと俺の顔を見たかと思うと、突然笑い出した。『山田さん。私は決して、そんな事など思ってもいませんし、今日お伺い致しましたのは他でもない理由があるからです。』さっきから、ユウは大人しく渋川の話を聞いている。ユキエと目を合わせな
麻呂さん作 [487] -
チンゲンサイ。<52>
ユキエは、来客の対応をするべく小走りに玄関先へ向かったが、すぐに、俺とユウの座る居間のソファーの前に戻って来た。『あなた。ユウの隣のクラスの担任の渋川先生が見えたわよ。私達に話したい事があるんですって。』『渋川先生?!なんで隣のクラスの先生が?!まぁいい。上がって頂きなさい。』俺は、ユキエにそう伝えると、ユウにもこの場にいる様命じた。『どうも。突然お邪魔してすみません。すぐに帰りますので、どうぞお
麻呂さん作 [430]