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麻呂さんの投稿された作品が616件見つかりました。
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チンゲンサイ。<33>
『お客さん。そこのラーメン屋は、遅くまでやってるから、僕らの仲間内でも、ファンが結構いるんですよ。いやぁ、こんな時間に親子で行かれるなんて、なかなか粋じゃないですか。』饒舌な、そのタクシーの運転手は、店に着くまでの間、ほぼ1人で話していた。普段は無口で口下手な俺にとって、少々、わずらわしく感じたが、ガラの悪い若者達に絡まれ、疲れ切っていたのと、ユウの素直な心を、久しぶりに見れた事もあり、今夜だけ
麻呂 さん作 [697] -
チンゲンサイ。<32>
『そうか‥イジメか‥‥。そう言えば昼間、公園の前を通った時に、一緒にいたのは、友達だろう?!』“イジメ”と聞き、再び驚いた。昼間の公園で、俺の存在を無視して通り過ぎたユウは、確かに、同級生と思われる男の子と一緒にいたし、楽しそうに話していた、その姿からは、まさかイジメにあっている事など、とても想像出来なかったからだ。『“友達”?!あぁ‥‥うわべだけの付き合いで、俺もアイツの事、あまりよく知らない
麻呂 さん作 [546] -
チンゲンサイ。<31>
* * * * * *帰宅時――さっき、俺が乗って来たママチャリの2人乗りを考えたが、俺もユウも、肉体的にボロボロゆえ、その考えは、すぐに却下された。『ユウ。ママチャリは明日、俺が取りに来るから、今日はタクシーで帰ろうな。』『うん。』事務所を出てから、タクシー乗り場までたどり着くまでに、また、さっきの若者5人が追いかけてくるのではないかと、ハラハラしたが、その心配は無用だった。『ユウ。家に帰った
麻呂 さん作 [542] -
チンゲンサイ。<30>
『ユウ!!ぐずぐずするな!!』『お‥おうっっ!!』こんな時間に映画館を目指し、親子で目を血走らせ、館内の通路を走る姿は、昼間では考えられないほど、こっけいだっただろう。『ちょっと君達2人。待ちなさい。』今の状況に不釣り合いな、やけに落ち着いた口調で背後から響き渡るその声に、俺達親子は、立ち止まらざるを得なかった。警備員2人に取り押さえられた俺達は、黙って、その指示に従った。いや、むしろ取り押さえ
麻呂 さん作 [524] -
チンゲンサイ。<29>
今の状況は、確実に俺達にとって不利であった。『ユウ!!走れ!!ボーリング場から出るんだ!!映画館に向かうぞ!!』『マ‥マジで?!』俺は透かさず、ボーリングの球を2つ手に取り、走りながら、その瞬間を待った。『逃げても無駄だと言っているだろ―がッッ!!待ちやがれッッ!!』リーダー格の男が再び距離を縮め、ドタドタと、俺とタイを張るほど短い足をバタつかせて近付いて来るのを――『今だ!!食らえっ魔球!!“
麻呂 さん作 [597] -
チンゲンサイ。<28>
『オヤジ‥‥俺、もう限界‥走れねぇよ‥‥‥。』『ユウ!!弱音を吐くな!!父さんの“握りっぺ攻撃”には強い破壊力がある。家を出て来る時に食ったカレーの中に、ニンニクをうんと入れてもらったからな。』アリイン中毒の俺にとって、ニンニクは大好物であった。そのニンニクを食った後の屁の臭いは格別だ。恐らく、俺の通常の屁の臭いよりも、数十倍はキツかっただろう。『急げ!!ユウ!!』もがき苦しんでいるリーダー格の
麻呂 さん作 [528] -
チンゲンサイ。<27>
『ユウ!!娯楽施設は4階だったな!?エレベーターは、こっちだ!!』ユウも俺も、親子揃ってコイツらに殴られ、既に体力を消耗しきっていた。ならば出来るだけ、これ以上は体力を消耗させずに、コイツらから逃げ切らなければならない。『だ、駄目だ親父!!エレベーターを待ってる時間なんてないよ!!すぐ追い付かれるって!!』『よしっっ!!ならば階段だ!!ユウ!!頑張れ!!4階まで行けば人がいるし、何とかなる!!』
麻呂 さん作 [560] -
世界でひとつだけの物語。?
『ねぇ‥お母さん。』『なぁに?桃子?』『私ね、彼に会いに行く時、人の優しさを見たの。』『まぁ?どんな?』『杖をついて歩いているお婆さんに、優しく手を差し伸べている若者がいたんだ。』『まぁ。素敵なお話ね。』『その時私思ったの。あぁ、この世もまだまだ捨てたもんじゃないって。』『そうね。』『お母さん‥私、生きて行く勇気が湧いて来た。』『そう。よかった。お母さんは、桃子の笑顔が増えた事が一番嬉しい。』彼
麻呂 さん作 [578] -
世界でひとつだけの物語。?
チェックアウトを済ませた後、私達が向かった先は、もちろん私の家。それは、母に彼を紹介するため。家までは、タクシーを利用せず、あえて公共の交通機関を利用した。『桃子。降りる時は、足元に気をつけて。』『うん。ありがとう。』家の近くのバス停でバスを降りた。今日からの私は元の私。けれど、それは今までの私じゃない。生まれ変わるんだ。今までよりも前向きな私に。今日からの私は、決して後ろを向かないって、心に決
麻呂 さん作 [493] -
世界でひとつだけの物語。?
『明日、少し早めにチェックアウトして、家に寄って欲しいの。』『うん。僕も、そう思っていたんだ。』今夜は本当に素敵な夜。そんな素敵なイブの物語。世界でひとつだけの愛の物語。ふたつの影が重なり合い、初めてひとつになれた時、心もひとつになれた気がした。あなたに抱かれ、私は明日の夢を見た。私が私であるために、あなたがあなたであるために、自分らしくあなたらしく、これからも、生きていけたなら――そんなハッピ
麻呂 さん作 [495]