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皐月花 さんの投稿された作品が11件見つかりました。
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鶯色の街2
相変わらず私が通う都会の空は狭く煙って、私を押し潰すように暗い。あの日出会った私の街の匂いがする男性から一月ほどして連絡があった。「ごはんに行きませんか。顔をださないといけない店があるんです」男性の落ち着いて丁寧な物腰に、誘いに応じることにした。オシャレなイタリアンレストラン。昔からの知り合いだというシェフ。気さくな雰囲気に安心して料理を楽しめた。そんな調子でたまに食事に連れられていくこと、数回
皐月花 さん作 [95] -
鶯色の街
私の生まれた街は、日本に古くからある街で、晴れた日には山の緑と空の蒼、そして川の煌めきが眩しい。私はこの街の景色とたおやかな時間の流れに育てられた。中学、高校、大学と煉瓦造りの歴史ある校舎に学び、自由な校風は私の心のひだを豊かにそして敏感に育てた。そんな私が就職を気に大都会へと通うようになった。空気は煙り、川は濁り、空は狭い。人も忙しく流れている。慣れない私には息が詰まりそうな日々が続いたが、都
皐月花 さん作 [167] -
コトバ
喉の奥に込み上げるコトバ。喉をギュッと絞り上げ鈍い痛みが胸の痛みと呼応する。あの頃となりにいたアナタが今目の前にいて、声をかければ気づくだろうけど、コトバが喉を通らない。まだ好きです。私の痛みを知らないアナタが憎いです。もう一度アナタの笑顔が見たいです。いくつもいくつも現れて、喉の奥で突き上げるコトバ。どれも口にするのが恐ろしくて、たまらずコトバは涙に変わった。一筋の流れ落ちたコトバ。もう戻れな
皐月花 さん作 [123] -
恋愛譚5
二軒目はワインボトルの並ぶバーだった。比較的店内は明るく、カップルの姿が目立つ。村山は赤ワインを注文し、私は甘いカクテルをたのんだ。「それにしてもエッチが嫌いなんて、ろくな男と付き合ってないな」村山は赤ワインを口にふくむとグラスをゆっくりと回した。「あんまり深く相手を好きになったことがないのかもしれません。いつも相手から告白されて付き合ってきましたから、私があんまり深く好きでなくても成立したって
皐月花 さん作 [222] -
恋愛譚5
二軒目はワインボトルの並ぶバーだった。比較的店内は明るく、カップルの姿が目立つ。村山は赤ワインを注文し、私は甘いカクテルをたのんだ。「それにしてもエッチが嫌いなんて、ろくな男と付き合ってないな」村山は赤ワインを口にふくむとグラスをゆっくりと回した。「あんまり深く相手を好きになったことがないのかもしれません。いつも相手から告白されて付き合ってきましたから、私があんまり深く好きでなくても成立したって
皐月花 さん作 [286] -
恋愛譚4
村山との待ち合わせは7時半。私は時間までウィンドウショッピングをして時間を潰していた。高級ブティックをフラフラと見て回る。目に写るものに全く意識はなく、「はめてやる」という意気込みとは裏腹に緊張していた。「今日、村山さんとキスするかもしれない」予感めいたものが頭をぐるぐるとまわり、心臓は早鐘を打つ。路地裏のコンビニに駆け込んで、フリスクを買うと、口の中に3粒放り込んだ。口に広がる爽快感が、キスへ
皐月花 さん作 [253] -
恋愛譚3
年が明け、オフィスはまだまだ正月ムードが抜けきらず、あちこちで雑談の輪が出てきていた。私はなんとなく村山のチームの輪の中にいた。「で、皐月はどうなったの?金沢の彼と」私の1年先輩の下柳が聞いてきた。下柳は女の子のようなソフトな印象で、話しやすく、何かと恋愛事を相談していた。「んー、クリスマスプレゼントも用意して、酔った勢いでどうにかなるかなって思ったけど普通にホテルに帰されちゃった」「オマエ、よ
皐月花 さん作 [185] -
幸福道
その日が来ることはわかっていた。社内のゴルフコンペの帰り道、彼にメールを打つ。「一時間ぐらいで帰るから部屋で待ってて」彼との関係はちょうど1年になろうとしている。彼が妻帯者であることを除けば、彼と私の関係は理想的だった。彼と過ごす時間には言葉で体で愛されている実感があった。家に着くと先に来ている筈の彼がいない。彼からの連絡もない。彼が来るまで、一眠りしようとうとうとした時、玄関の鍵が開いた。私は
皐月花 さん作 [173] -
幸福道
その日が来ることはわかっていた。社内のゴルフコンペの帰り道、彼にメールを打つ。「一時間ぐらいで帰るから部屋で待ってて」彼との関係はちょうど1年になろうとしている。彼が妻帯者であることを除けば、彼と私の関係は理想的だった。彼と過ごす時間には言葉で体で愛されている実感があった。家に着くと先に来ている筈の彼がいない。彼からの連絡もない。彼が来るまで、一眠りしようとうとうとした時、玄関の鍵が開いた。私は
皐月花 さん作 [172] -
恋愛譚2
なんとなく村山が気になりながら、しかし話しかける用立てもなく、半年ほどが過ぎた。クリスマスを控えた十二月、私は高校の頃好きだった同級生にふと電話をかけ、二時間ほどの電話で時間が巻き戻されたように、彼に恋をした。厳密に言えばそれは恋ではなく、ただ時間だけが巻き戻ったのだと今ならわかる。金沢に住むという彼に会うため、クリスマスプレゼントを携え、白い景色の中を突き進む列車に揺られた。駅まで車で迎えに来
皐月花 さん作 [209]
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