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タロウ さんの投稿された作品が6件見つかりました。
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wall〜壁〜5
少年はその日、近所の接骨院前の歩道に友達数人と、円を描くように会話をしていた。地べたに胡座をかき、当時接骨院に通院していた友達を待っていた。「あれ?今チャリンコで通った奴、この前の奴じゃね?」友人の一人がそう言うと、皆同じ方向に視線を向けた。「あいつかぁ!あの300円しか持ってなかった貧乏君な。」少年の言葉に、友人らは笑った。「それにしても、テツ遅ぇなぁ。」接骨院で治療を受けている仲間の一人を待
タロウ さん作 [450] -
wall〜壁〜5
「今、啓太送ったから、これから向かうわ。」そう言って少年は携帯を切り、少年を待つ彼女のもとへ、自慢のバイクで向かった。バイクの後部座席には、18本の「薔薇の花束」がしっかりとゴム紐で固定されていた。 その日の環状7号線は車も少なく、少年は彼女の笑顔を思い浮かべ、スピードを上げた。(つまってるなぁ。)前方に見えた立体交差付近で渋滞を感じた少年は、無意識に「側道」を選んだ。直進の信号は青。スピードを
タロウ さん作 [389] -
wall〜壁〜4
「あぁそう、わかった、んじゃな。」少年はそう言い残すと、ダンキンドーナッツの前から駅の方へゆっくりと歩いて行った。久々に彼女と待ち合わせた金曜日。待ち合わせ場所に現れたのは、彼女一人ではなかった。「いいんだよ、浮気したって。」年上の女に言った、当時精一杯の強がりは、人生で初めての「後悔」に変わった。相手の男をぶん殴る事も、その瞬間まで彼女だった女を殴る事もできず。少年はゆっくりと駅の方へ歩いて行
タロウ さん作 [481] -
wall〜壁〜3
「チョットいい?」「あのさぁ、今度の週末にスゲェ面白いパーティーがあるんだけどさぁ。」「一枚6000円でいいよ!いくら持ってる?」帰宅途中の学生や、見た目が学生の通行人に少年は話かけている。手には輪ゴムで束ねたパー券。近所の高校の校門横にある、細く駅まで続く道で少年は友達二人と共に、学生を呼び止めてはパー券を押し売りしていた。「いりません。」頑なに断る学生に対しては、乱暴に金銭のみを奪った。「お
タロウ さん作 [404] -
wall〜壁〜vol.2
「絶対に駄目です!!何を考えてるんですか!!由香はもぅ中学生になるんですよ!」「何時間かかってでも帰って来て下さい!!」夜遅く、台所の明かりの中で母がそう言って電話を置いたのは、少年が小学3年生の頃。薄目を開け、シンクに崩れる母を襖越しからボゥッと見ていた。いつも笑顔を絶やさず、元気に接する母。薄暗い台所の明かりが、さらにその悲しさを広げた。翌朝、少年が目を覚ますと、父の姿は無かった。しかし「父
タロウ さん作 [451] -
Wall〜壁〜
「今度の休みにねぇ、お父さんとぉ、お母さんとぉ、ディズニーランドに行くんだ!」「へぇ。でも僕のお父さんなんか、今日家にいるんだぜ!いいだろぉ!」子供の会話と言うのは、時に大人の心を貫く。ディズニーランドに行く事よりも、家に父親がいる事が「幸せ」。父は1階のトイレでその会話を耳にし、読んでいた新聞の文字がボヤけて見えなかった。毎日父親が家に帰ってくる家庭が「普通」。数ヶ月に1度だけ父親が帰ってくる
タロウ さん作 [427]
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