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あやこ さんの投稿された作品が35件見つかりました。
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所有者 ?
真冬の厳しい寒さで、夜のうちに洗っておいた洗濯物が凍り付いている。日当たりのよい南側の庭に出て干し竿いっぱいに洗濯物を干す。枯れた芝生やシンボルツリーの欅も凍った洗濯物と一緒に、太陽の熱で溶かされもやをあげている。ベランダに干した布団も夕方にはホコホコになるだろう。これで、夫も子供たちも気持ち良く眠れる。幸せな日常だなと思う。昨夜、夢を見た。私は大学生で、彼はゼミの講師だった。彼は一人掛のソファ
あやこ さん作 [253] -
吸う指先
『次、会う時は彼の手を触りたい』と思った。煩わしいトラブルを避けたい私たちは、並んで座ることはできない。だから私は、彼の運転する車の後部座席に乗り込む。後ろから手をのばし彼の右頬に触れる。『アッ…』ようやく彼の体温にたどり着いた。朝剃られたであろうヒゲの後が指先に伝わる。『この人のこと好きだなぁ』と確認する。彼は、私の手を囚えようと首を傾げる。しばらくそのままでされるがままになる。右耳に触れる。
あやこ さん作 [363] -
言霊
『さよに出会えたのは必然だと思う』と家庭を大切にする彼が言った。『好きよ』と私が言っても照れくさそうに抱きしめるだけで、言葉は返してくれない。私のことを好きではないのかもしれない。でも出会えたことは必然だと。言葉には魂が宿るらしいから、私は彼にたくさんの言葉を送る。好きなの…会いたい…触れたい…したい。甘い言葉じゃないけれど、彼の『必然』は彼の心のひとカケのような気がする。
あやこ さん作 [281] -
所有者
51才で病死した妻と通夜の晩にセックスをする。という小説を読んだ。55才の夫が、息子夫婦をはじめ人ばらいをし、ことにのぞむ。妻を自分の所有物だと信じる夫の奇行。究極の夫婦愛か、ただの屍姦か問う純文学だった。私の夫は間違いなく、私を自分の所有物だと思っているだろう。世間の妻帯者は大多数がそう思ってるでしょう。父親が所有していた女を『娘さんを下さい』という言葉と引き換えにもらう。所有権が父親から夫に
あやこ さん作 [325] -
いやらしい手
『さよの手は気持ちいいよね』『そう?』彼の胸においた私の手を握りくにゅくにゅと触る。『ふくふくして柔らかくて』『どうせ太ってますよ』『そうじゃなくてさ…』赤ちゃんの手みたいだ、と言われたことがある。マニキュアの似合わない貝爪と短い指。『気持ちよくて、いやらしい手だ』『いやらしい?手が…?』『そう。いやらしい手』『いやらしいことするからでしょ…』私はやんわりと彼自身を握る。形や硬さを確かめるように
あやこ さん作 [761] -
大人のおやつ ?完
別れの日がくれば、私は少し泣いて、彼はほんの少し不機嫌になって、そして、またそれぞれ代わりを探す。その新しい相手に少し違和感を感じながら肌が馴染むのを待つ。未婚の二人の恋愛の成就が結婚なら、この恋の行き着くところはどこなのだろう。おやつばかり食べ続けられるはずもなく食べ続けてはいけない。子供の頃、母が作ってくれたおやつ。兄弟でとりあったおやつ。そんなものをなつかしく思い出すように、もうそんなに欲
あやこ さん作 [426] -
いらないモノの独り言
連絡が途絶えたのは忙しいからですか?それとも私がいらなくなったのですか?いらなくなったのなら必要ないモノからの連絡は迷惑だと思うから私からは連絡できません忙しいのならやっぱり迷惑だろうから連絡できませんあなたが私のことをフッと考えたのならきっと連絡くれるでしょうずっと考えないのなら連絡はいりませんでも私はずっと待っています
あやこ さん作 [371] -
大人のおやつ ?
それから月に数回、お互い限られた時間から数時間を捻出し、会うようになった。セックスし、ベッドの上で食事し、たくさんの話をした。いつでも私は彼の左側におさまり、彼の左の掌は私の肌を流れて確かめた。これは純愛なんかじゃないだろう。互いに何も捨てる気もなく適度の距離とルールの基で甘さとせつなさを楽しんでいる。きっと、どうしてもこの相手じゃなくてはならないわけではないだろう。
あやこ さん作 [437] -
大人のおやつ ?
優しいセックスが終わり彼が体をおろし、乱れた枕のポジションを整え、そこに背をあずけながらタバコに火を点けた。私は少しものたりないまま彼の左側におさまる。彼の左腋のくぼみに頭をのせ、横から抱き着く形で厚い胸に胸を『ピトリ』と寄せた。数カ月前まで全く知らなかった人、数時間前までバーチャルな関係だった人。その人と皮膚をくっつける。冷えた部屋で生身の体温が伝わる。私を包むように伸ばした腕。大きな掌が無意
あやこ さん作 [429] -
大人のおやつ ?
それぞれの車に乗り込むとき『また会える?』と彼が言った。『うん』と答えた。私は簡単にセックスできる相手としてストックされたのかもしれない。それでも…少なくとももう一度会いたいと欲してくれた。一回で充分ではなく『おかわり』を約束されたことが私は嬉しかった。私たちはお互いの名前さえも知らないまま別れた。
あやこ さん作 [620]