トップページ >> hiroさんの一覧
hiroさんの投稿された作品が88件見つかりました。
-
しょっぱい理由
路地裏にあるそのうどん屋は、知る人ぞ知る名店だった。そこの主人のつくる「塩うどん」は、塩加減が絶妙だ、と評判だった。頼もしい妻の支えもあって、来客数も上々。まさに順風満帆な日々を送っていた。そんなある日、男にとって大きな存在だった妻が、死んだ。それでも、毎日来てくれるお客さんのために、精一杯麺を打ち、うどんをつくった。ある時、常連客の一人が言った。「あれ?この塩うどん、いつもよりしょっぱいような
hiro さん作 [1,081] -
落下
人々の見上げる視線の先に、ある一人の男が立っている。男は上半身裸で、顔をひきつらせ、微かに体を震わせている。小さく見える人々を見下ろしながら、男はそっと目を閉じて、ふうと息を吐き出した。やがて男は決心した。ここまできたら後悔などないのだ、と自分に言い聞かせる。足を一歩前に踏み出し、そこの一番端に立った。その瞬間人々の声が高まった。男は内心で恐怖を感じた。人々は男を見上げながら、ゴクリと息を呑んだ
hiro さん作 [1,307] -
愚か者は誰だ
突如都会の真ん中に現れた一体の巨人は、民家や高層ビルを踏み潰し、破壊しながらそこら中をドスドスと歩き回った。しばらくして、さがしものを見つけたのか、落ち着かない様子で立ち止まった。やがて巨人は、工場に突き刺さる大きな煙突を片手で軽々と引っこ抜いて、顔の辺りまで持ち上げた。そしてその煙突を満足そうな表情で口にくわえ、真っ黒い煙をプカプカと吸ったり吐いたりした。その姿を見上げながら、人間たちは何やら
hiro さん作 [698] -
前兆
僕は小学6年生。変な体質を持っていること以外は、そこら辺の小学生と変わらない、普通の12歳だ。僕は時々、体のどこかに不思議な感覚を覚える。例えば、小指にその感覚があったとする。するとその翌日、必ずと言っていい程、小指に傷を負うのだ。もちろん、小指に限ったことではない。転んで膝をすりむいたり、裁縫の時間に指を針で刺したり…。その傷は、軽いことも、ひどいこともある。つまり僕は、傷を負うということを、
hiro さん作 [905] -
喋るボーリングの球
あいつが俺の家に来た時、俺たちは優奈をめぐって大喧嘩をした。「優奈は俺のものだ!」そう叫んだ俺は、近くにあったボーリングの球を持ち上げ、あいつの頭目掛けて思い切り振り下ろした…。あいつはバタリと倒れ込んだ。死んだ、はずだった…。「何しやがる!どうなってんだ!?」…………!手に持つボーリングの球から、なぜか、あいつの声が…?しばらく考えた結果、俺はある結論に至った。頭を殴った衝撃で、あいつの意識が
hiro さん作 [517] -
神経質な受験生
「勉強に集中できないじゃないか!」健人はテレビを見る弟に向かって怒鳴った。高校受験を間近にひかえた健人は、とてもピリピリしていた。「ごめんなさい、お兄ちゃん…」弟はそう言い残して、バタバタと走って部屋を出て行った。「もっと静かに出て行けよ!」受験の日が近づくにつれて、健人はだんだん神経質になっていった。トン、トン、トン…。台所から包丁の音が響いた。健人は注意をするために台所へと向かった。「うるさ
hiro さん作 [1,530] -
屋上の秘密2
男はついに屋上のひとつ下の階、ビルの最上階に辿り着いた。その時すでに、男の意識は朦朧としていた。男は激しく痛む胸を右手でおさえ、何度か倒れそうになりながらも前に進んだ。それから男は、屋上へと続く階段を這うように上っていった。屋上には、白い衣を全身にまとった天使が立っていた。「あなたも、愚か者ね…。自分から天まで昇ってくるなんて。でも、まあ、いつも死者をここまで運んでくる私にとっては大助かりで嬉し
hiro さん作 [538] -
屋上の秘密1
男は吸い込まれるようにふらふらとビルの入り口に入って行った。理由は分からないが、そのビルへの入場は、死の近い者にのみ許されている。そして男は、体に重い癌を抱えていた…。「このビルに入った以上、後戻りはできません」それだけ言って、受付の女が階段を指差した。エレベーターは無いようだ。男は無言で階段を上った。このビルの屋上には、どんな病も治すといわれているクスリが隠されている。ある日男はそんな噂を耳に
hiro さん作 [555] -
私という存在
どれだけ頭が良くてもどれだけ尊敬されていてもどれだけ歌が上手くてもどれだけ力持ちでもどれだけ優しくてもどれだけかっこ良くてもどれだけ愛されていてもどれだけお金持ちでもどれだけ明るくてもどれだけ人気者でも誰一人として私にはなれない私は私しかいない私に代わる存在などいないだからそんな自分を大切にしようどれだけ頑張っても上手くいかない私だとしても……
hiro さん作 [689] -
君に聞こえるように
君が好き君が好き君に向かって叫んでみる大好きだ大好きだ大きな声ではっきりと愛してる愛してる声の限りに叫んでみるけれども君は知らんぷりこっちに振り向いてもくれないどうしてだ?どうしてなんだ!こんなにそばにいるのにな一生懸命叫んでいるのにどうして君は知らんぷり?どうして気づいてくれないの?それはきっと多分だけどずっと叫んでいるだけだから全て自分の心の中で…今度こそ絶対に君にちゃんと聞こえるように君に
hiro さん作 [553]