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光安俊彦 さんの投稿された作品が5件見つかりました。
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発狂のリズム?
父はあまりにも、テンションが高かった。はじめは酩酊しているのかと思った。父のテンションと比例して、母の顔は険しくなる。それまでははしゃいでいた妹も何か不穏な空気を読み取ったのか黙ってしまった。タクシーに乗り込む。 タクシーのメーターは一万円を越えていた。不相応な金のつかい方に驚く。母はおりようといった。父は笑うだけだった。新しい家に向かうタクシーのなかで、胸を踊らせることはなかった。外の曇天はニ
光安俊彦 さん作 [200] -
発狂のリズム?
僕たちはその建物の一階のステーキ屋に入った。ステーキ屋のイメージは「暗いライト」だったので、妙に明るい店内は新鮮だった。店は外から丸見えで、まるで見世物にされているようだった。外の雨は止んでいたが黒い雲がこちらを睨んでいた。店に入ってすぐに小綺麗なウエイターが注文を取りにきた。肉の焼き加減まで注文できた。妹はレア、僕はミディアム、母はウェルダン。二番目に運ばれてきた僕の肉は旨味がすべて抜け、正直
光安俊彦 さん作 [124] -
発狂のリズム?
父と三ヶ月離れて暮らすうちに父のいない生活に慣れてきていた。それまでも朝の数時間会うだけの関係だった父であった。もともと慣れていたのかもしれない。ただ父の穏やかなイメージは会いたいと思うに足りるものだった。三ヶ月の間、父は僕らの生活に一切の爪痕を残さなかった。唯一、父のからんだ話は「カビゴン事件」である。父が当時人気だったキャラクターの巨大なぬいぐるみを送ってきたのだ。妹はとても喜んで、父に電話
光安俊彦 さん作 [122] -
発狂のリズム?
バスで空港に着くと、母はもたもたしている僕と妹の手を乱暴に引っ張った。とても痛かったが、母のほうが痛そうな顔をしていたため、何も言えなかった。僕の三歳下の妹は、小学二年生にしては、大人びていた。だがやはり子供であり、母の異変には気付いていないようだった。妹はまだ見ぬ辺境にはしゃいでいた。僕は母の顔を窺いながらピエロのようにはしゃいだ。飛行機に乗っていたときのことは覚えていない。ただ僕の覚えていた
光安俊彦 さん作 [125] -
発狂のリズム
記憶の糸は梅雨の日の蚊の軌道で僕の前を通り過ぎる。本当に思いだせない。散々時間をかけたあげく思い出せないので、最初から覚えていなかったのだと諦めた。今から書くことは6年も前のことだ。記憶が失われるのにも、出来事を冷静に見つめるのにも十分な時間である。人が変わるにも十分な時間であるはずなのに。初めての神奈川は雨だった。今の友達には「小学生の時は横浜に住んでたんだぜ。」といっている。しかし本当は小学
光安俊彦 さん作 [163]
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