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輪 さんの投稿された作品が72件見つかりました。
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イヌ恋 完
「無理を言わないで…」「私、ワガママって言われようとしつこいって嫌われようと構わない。周助さんとならどんなことにも耐えていける。……ああ〜なんか…月並みな言葉しか出ないや。こういうとき馬鹿だと嫌だ…な…」周助が抱き締めてきた。彼は声を殺して泣いていた。「………周助…さん?」「俺の…最後のお願い聞いてほしい。」「最後?」「俺のそばから離れないでくれ。」「…どうして最後なの?」「キミに迷惑ばかりかけ
輪 さん作 [177] -
イヌ恋 ?
アカネが脚にじゃれついてきたので、茜は少し楽な気持ちになった。「だいじょうぶ。お前はどこにも行かせないよ。」茜が腰を下ろすと、膝上にアカネが乗ってきた。「コラ、アカネ。……あ。そうか、茜ちゃんも同じ名前だった。」「偶然ですよね。犬と同じ名前。」二人はしばらく談笑した。茜がずっとアカネを心配していたこと。アカネも茜を夜な夜な探して、落ち着かなかったこと。今日は茜は学校をサボったこと。「お昼ご飯!作
輪 さん作 [124] -
イヌ恋 ?
翌朝、茜の自宅に電話してみたが、留守だった。一日だけ飼い主のフリをしてくれないかと頼むつもりだった。留守電だけ入れてみる。夕方頃、当然電話がかかってきた。「帰ったら留守電入ってたんで驚いちゃいました!どうしました?」(元気になれる声だ。)「あの、火事からもうすぐ一週間なんだけど、保健所の人がアカネを引き取りに来るんだ。」「え…?」「ウソついて他に飼い主が居るって言ったら一応確認しに来るみたいで。
輪 さん作 [122] -
イヌ恋 ?
アカネ以外のペット達は引き取り手無しと見なされ保健所へ連れて行かれた。実際、周助には面倒を見切れなかった。当の周助自身は、喉が少し火傷した程度で、奇跡的に無事だった。明朝、直ぐにアカネを迎えに行ったが、ダンボールはもぬけの空だった。ゲージだけがウチに残ってしまった。電話番号を書いたメモを置きながら、周助は思った。(いっそアカネはこのままどこかで無事に暮らしてくれれば…。)しかしそんな保証はない。
輪 さん作 [130] -
イヌ恋?
周助は自分の意識が遠退くのを感じた。煙を吸い過ぎたらしい。―まだ、中に。動物たちが。助けて。母…さん。―\r「ゥウウッ!!ワウワウ!!」アカネが激しく鳴き喚く声に、周助は意識を取り戻した。見ると、近所の人たちが自分を助け出してくれた直後だった。朝の火事ということもあり、近所は騒然となっていた。目の前ではアカネが知らない男にゲージごと持って行かれようとしていた。「……ぁ…やめっ!ゴホッ!」(喉が、
輪 さん作 [137] -
イヌ恋 ?
さらに一呼吸置き、周助は続きを躊躇った。「周助さん、私今はまだ高校生だから半端な事しか言えない。でも卒業したら必ず、周助さんの力になる。だから…。」「ごめん。」ブツッと電話が切られた。(もう少しで、俺は夢の世界に行けた。)まどろみながら、周助は数日前までの「美大生」生活を思い出していた。「丸井くんて生き物描くのが上手だね!」「周助に動物描かせたらこの大学で一番だよ。」「絵に一番とかあるかよ。」―
輪 さん作 [126] -
イヌ恋 ?
翌日。学校で考えることは丸井周助とアカネの事だった。昼休み。友人からもボーっとしていると言われ続けた。「そんな濃い週末って送れるもんなんだね〜。」友人のサキが半信半疑で言う。「子犬を拾っただけなんだけどなぁ。まさか火事の家の犬だったなんて。」「丸井周助ねー。聞いたこと無いなぁ。でも年上だったら将来性あるよ〜。大学生かな?」「分かんない。でももし学校通ってたら、もう学費も払えないかも…。」周助の今
輪 さん作 [166] -
イヌ恋 ?
「む、無理だよ。俺、お金持ってないし、だいいち初対面の人同士がいきなり…。」「私が全部やります!」アカネはワン!と一回吠えた。「せっかく生き長らえたんだから、アカネだってちゃんと生きる権利があります。」「住田さん…。」「茜でいいですよ。周助さん!」「…本当にありがとう、茜ちゃん。でも気持ちだけで充分だよ。」「そんな……。」周助はアカネを抱き上げて、一礼すると公園から出て行った。もう会えないかもし
輪 さん作 [129] -
イヌ恋 ?
「火事!?」あの日照り続きの日に起きた、隣町の火災とはペットショップのことだったのだ。「アカネは…俺が逃がせた唯一の犬でした。他は全て燃えて死んでしまったか、保健所に。」「それで、スーツって…。」「火元は放火。ウチの両親が酔った勢いで始めた夫婦喧嘩がエスカレートして…。二人とも焼死しました。」これを踏まえて自分の言動を振り返った茜は、直ぐに謝った。「本当にごめんなさい!!何にも知らない私なんかが
輪 さん作 [176] -
イヌ恋 ?
翌日はやけに早く目が覚めた。(ついにコイツともお別れか。)もう一匹のアカネはまだ眠っていた。小さな体躯を丸めて、野球のボールより少し大きいくらいの球体になっていた。「……ァ…ア…カ…ネー。」起こさないように小さな声で呼んだつもりが、見事にアカネは飛び起きた。「ああ、ゴメンね、まだ寝てていいよ。」アカネは首を傾げて、また眠りについた。「暑い…。」ダンボールが置かれている近くにある公園で、アカネたち
輪 さん作 [166]