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春 さんの投稿された作品が21件見つかりました。
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飛行機雲22
李遼は、わたしを力いっぱい抱きしめた。肌と肌が触れ合った。吸い付くようにぴったりと。 「ごめん、ハル。泣くな 。」 寄せられた李遼の頬も、濡れている。中国人って、男も女もほんと、よく泣く。映画とかで見た時、少し引いたけど今、わたしは微塵もそう思わない。彼の涙を信じられるから。この涙は嘘じゃない。こんなにもわたしを思ってくれるんだって、伝わってくる。たった15でこんなに人を愛せるなんて、思っても
春 さん作 [240] -
飛行機雲21
李遼はすぐに波に慣れて、翻弄されるのを、楽しみ出した。二人でいっぱい笑って、はしゃぎ倒して、疲れて、砂浜に寝ころんだ。 李遼は、ずっとわたしの手を掴んで離さない。波が、わたしをどこかに連れて行くような気でもするみたいに。わたし、どこにも行かないよ。李遼の側がいい。 上を向くと太陽が眩しくて、顔を見合せた。 「お腹空いたね、何か買 って来ようか?」そう言うと李遼は、 「一緒に行こう。」と言って、
春 さん作 [133] -
飛行機雲?
自転車のベルの音。わたしは、窓から手を振る。李遼も手を振る。車に気をつけてね、怪我しないでね。自分の体調より、李遼の事が気になる。雨の日は、胸が痛む。冷たくない?風邪ひかないでね。帰ったらちゃんと休んでね。好きだよ、李遼。誰よりも。だから、無理しないでね。朝のわたしは心配ばかり。でも、夕方になると、はしゃいでばかり。月初めだけが唯一わたしが海に行けるチャンス。約束だもの。水着、どうしよう。サヤ
春 さん作 [133] -
飛行機雲
明日から夏休み。でもあまりうれしくない。李遼と会いづらい。朝から、塾の夏期講習。終わるのは夕方。いつもなら学校で李遼の顔が見れるのに。もちろんキヨを迎えにいけば李遼に会える。でも、もっともっと李遼といたい。24時間李遼といたい。どうしたらいい?こんな気持ち、初めてだよ。泣きたくなる。不安になる。李遼がわたしを忘れてしまいそうで怖くなる。ねえ、李遼、あなたもそんなふうに思う事、ある?こんなに誰か
春 さん作 [142] -
飛行機雲?
李遼はわたしの傘を拾って雨水を切った。 「行こう。せめて雨があ たらないところまで。」李遼に促されて、歩き出した。わたしの傘はしばらく使えない。 「鈴木。」 「何?」李遼の顔を見上げる。李遼は前を向いたままだった。 「オレ、女の子誘ったの 初めてだから。」 「うん。」 「オレ、鈴木の事、好き だから誘った。」 「うん。ありがとう。嬉 しいよ。」 「ほんとに?」 「うん。」李遼の顔が赤くなった
春 さん作 [175] -
飛行機雲?
駅の改札口に李遼がいて、手を振った。白いTシャツにジーンズ。何だか申し合わせたみたいだ。 「雨ふっちゃったけど、 着いちゃえば関係ないか ら。」 「うん。」電車の窓に雨粒があたり流れ落ちる。心に降る雨は痛みさえ伴う。 「元気ないな、なんかあ ったの?」電車を降りて水族館に行く道すがら、李遼が聞いた。 「別に、何でもないよ。」会話が続かない。今日はキヨもいない。 「オレ、誘っちゃ悪かっ たかな
春 さん作 [156] -
飛行機雲?
「やっと白状したか。色 々噂は聞いてたもんね。 ハル、李の事、好きにな っちゃったんだ。」否定はできない。 「告白されたの?」 「されてないよ、そんな の。ただ、男の子と二人 で出かけた事ないから、 困ってるだけだよ。」 「でも、断わらなかった んだからやっぱりハル、 好きなんでしょ?李だっ てそうだって。あいつが 誰かと喋ってるとこすら 想像できないのに。」サヤは、何でこんなに嬉しそうなん
春 さん作 [164] -
飛行機雲?
「鈴木、日曜日とか何し てる?」李遼がおもむろに聞いた。 「今は、勉強してる。推 薦ダメだったら、普通に 受験になるし。期末、も う少し順位上げないと。 」 「そうか。期末だもんな 。忙しいよな。」李遼は、何だか落ち着かない。 「何で?」不思議に思って尋ねると、 「水族館行かないかな、 と思って。」李遼の言葉に、わたしは息を飲んだ。それって、もしかしてデート?わたしと?わたしを誘ってるの? 「
春 さん作 [152] -
飛行機雲?
「なあに、それ。借りて 来たの?」仕事から帰って来た母が、キヨと一緒にDVDを見ていたわたしに言った。 「うん、まあね。」 キヨはジャッキーの技を会得しようと頑張っている。 「そんなの見て、キヨが お友達にケガさせたりし ないかしら?」買い物袋をテーブルに置きながら、母は心配そうにキヨを見た。 「大丈夫だよ。キヨは正 義の味方だから、悪い奴 としか戦わないんだよね 、キヨ?」わたしはキヨを膝に
春 さん作 [141] -
飛行機雲?
李遼は携帯を持っていないから、裏サイトの書き込みは読んでないと思うけど、あの文面を思い出すと怒りで体が震えてくる。でも、あんなものより今の時間の方がずっと大切だった。 「鈴木は、優しいな。」息苦しくなる。 「あの時、オレ、びっく りした。鈴木がいきなり 靴下脱げって言った時。 」顔から火が出そうだ。李遼の顔が見られない。 「なんか、そんな事気に してる奴がいるんだって 思ってさ。」うつむく
春 さん作 [132]