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春 さんの投稿された作品が21件見つかりました。
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飛行機雲?
商店街が見えて来て、李遼はキヨを荷台から降ろし、わたしの鞄を手渡した。珍しくキヨは駄々もこねなかった。 「じゃあ、またな。」 「うん。ありがとう。」素直に言えた。 「キヨもお兄ちゃんにお 礼言って。」 「お兄ちゃん、ありがと う。バイバイ。」キヨが元気に言うと、李遼は満面の笑顔でキヨの頭を撫でた。 「バイバイ、ここからは お姉ちゃんを守るのは、 キヨの役目だぞ。」 「うんっ!」走り去る李遼を見
春 さん作 [142] -
飛行機雲?
さっきまで、キヨを鬱陶しいと思っていた。李遼は、ほんとのわたしを知らない。 「あんたこそ。」続きが出てこない。 「あんたこそ、朝、その ・・・大丈夫だった? 痛かったでしょ?」急に、胸がざわついた。 「どうってことないよ。」沈黙。 「ねえねえ、自転車こい で。」気まずい間に割り込んできたのは・キヨだった。キヨは、誰にでもワガママを言う。 「駄目。あんまりお姉ち ゃんを困らせるな、男だ ろ?大
春 さん作 [129] -
飛行機雲?
学校帰りに弟のキヨを迎えに行くのは、遠回りになる。 保育園は商店街を抜けた、家とは真反対の高台の住宅地にある。 何でこんな事、毎日わたしがしなくちゃならないの?わたしの心は、いつも不満だらけだった。 ただ、保育園に行く途中にひとつだけ、わたしのお気に入りの場所がある。 そこは、ありきたりの遊具がいくつかあるだけの小さな公園だけど、季節の花が周りを彩って、気持ちがやわらぐ。鉄棒の横に木のベンチが
春 さん作 [126] -
飛行機雲?
「何だぁ、このアマ! 痛い目みてぇのか!」 「何よ!あんたでしょ! あんな事書いて!今すぐ 取り消して!」わたしの剣幕に、木場は驚いていたけれど、すぐに鼻で笑った。 「何だあ?あの書き込み なら俺も見たぜ。マジ笑 ったけど?」 「とぼけないで!取り消 して!」クラスは静まり返り、わたしの怒声だけが響く。 李遼はまだ、来ていない。サヤとマイが青ざめてこっちを見ている。そんな事どうでもいい。 「取
春 さん作 [142] -
飛行機雲?
「あら、そうだったの? ごめんね、ハルちゃん、 責めるようなこと言って 。お母さんに、ここから も連絡してみましょう。 。」振り向いた時、もう、李遼は遠ざかっていた。 小さくなる李遼の後ろ姿を見て、胸に痛みを覚えた。体の痛みより、ずっと痛かった。わたしは、李遼に何のお礼も言ってない。 雨が、わたしの醜い心を洗い流してくれたらいいのに。 次の日、やっぱり噂になっていた。 「どういう事?李があん
春 さん作 [223] -
飛行機雲?
「離してよ。」李遼の手を振りほどいたけど、もう逃げる気はなかった。 「ほんとに、無理しなく ていいよ。保育園近いし 。休ませてもらって、 お母さん待つから。」わたしの口調は、やわらいでいた。それでも、歩き出したわたしの後を、李遼はついてくる。 「あのね、ほんとに・・」李遼は、言いかけたわたしをさえぎった。 「オレの家、そっち。」 「変な奴だと思ってるで しょ?」李遼と並んで歩きながら、わたしは
春 さん作 [152] -
飛行機雲?
「いいです。一人で帰り ます。」また、ふらつく。しっかりしてよ、わたしの体! 「ほら、危ないって。ね 、李くん、頼むね。先生 恩に着るから。」 「先生、中学生の男女、 率先して暗い中ふたりで 帰さないと思うけど、普 通。」李遼のぶっきらぼうな声。あいつ、いつの間にあんなに日本語上手くなったんだろう。発音は少し変だけど。 「あなた達、どっちもそ ういうキャラじゃないで しょう?先生だって、人
春 さん作 [257] -
飛行機雲?
いつの間に入って来たのか、人が立っている。 そして、わたしは、それが誰だかわかってしまった。 李遼。 あいつは中国人だから、微妙にイントネーションが違うんだ。涙はまだ、止まってない。 「鈴木?」声をかけないで。あっちへ行って!わたしは今、誰よりもあんたに会いたくない!振り向かずに立ち上がって、逃げ出そうとした。足が動かない。体が傾く。目の前が真っ暗になる。 「鈴木!」一瞬だけ、その声に引き戻さ
春 さん作 [167] -
飛行機雲?
「ハルったら、何で李な んかかまうのよ、木場に 目つけられちゃったじゃ ない。」1限目の放課に、マイが心配そうに言って来た。 「そうだよ、マジあり得 ないって。あんな奴かま ったって、感謝ひとつし やしないよ。て、言うか 何も分かってないって。 」 「そうそう。わたしだっ て話の流れの中でやっと ハルが李に同情してるっ ぽいってわかったぐらい だもん。」今日の、サヤとマイの会話は耳障り。 「
春 さん作 [196] -
飛行機雲?
その日は、朝からどしゃ降りの雨で、傘をさしていてもずぶ濡れになった。 わたしは、前の日からの生理痛で、気分は最悪だった。薬で痛みを押さえている分、かえってイライラしていた。サヤとマイの気遣いさえうっとうしい。 李遼は、今朝も上履きをはいてこなかった。いつもの事。気にする事はない。教室の後ろの隅で、問題児の木場とその仲間が、李遼を時々見て何か言ってるのは、皆、知っている。でも、どうだっていい。
春 さん作 [171]