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1003 さんの投稿された作品が81件見つかりました。
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aki-第1章-?
「吉岡さーん。内線2番。営業企画の相原さん。」ピッ――――「かわりました。吉岡です。」私は昨日の残業のおかげで、比較的ゆったり仕事を処理していた。営業企画課の同僚の真弓からの内線は、私宛てであればそれ程珍しいものではなかった。「突然なんだけど、今日これからの午後イチ、手があきそうな人とか経理課にいるかな?」これも毎度の事だった。常に営業企画課は人材が足りないらしく、経理課は決まった時期以外は他の
1003 さん作 [326] -
aki-第1章-?
会社に出社すると、同僚の相原真弓が声をかけてきた。「おはよう。昨日は何時まで残業だったのよ?待ってたのよ。」年齢の割に若く見える真弓は、私よりも10歳も年上には見えない顔立ちを傾げながら話す。「おはようございます。昨日は、いつも通りですよ。」真弓とは見た目も性格も正反対なのに、何故かこの会社では1番話しが合うのだ。年齢は違うが同時期に入社したのもその理由の1つで、頼りなさそうな外見とは全く違って
1003 さん作 [335] -
aki-第1章-?
翌朝になって目を覚ますと、亮ちゃんはすでに仕事に出ていた。目を擦りながらリビングのテーブルに目線を向けると、朝食迄用意されていた。コーヒーメーカーの電源を切り、マグカップにコーヒーを注ぐ。湯気と香ばしい香りが部屋中に広がった。朝食の横には、昨日鞄に入れたままにしていたはずの私の携帯電話がきちんと充電までされていた。チカチカとランプが点滅したのに気付いて携帯を開く。『受信メール/3件』1件目。『送
1003 さん作 [335] -
aki-第1章-?
家に着く頃になると、もう日付がかわっていた。目の前のマンションの2階に目線をあげると、まだ明かりがついていた。こんな残業後の部屋へ向かう為に通る階段は、いつも疲れた顔を隠す自信をなくしていく。「ただいまぁ。」当たり前のように鍵を開けて中に入る。この部屋の同じ鍵を持つ事でさえも、昔は愛情のひとつだって感じていたのに。「おかえり。今月も残業お疲れ様だね。」夫――――。亮ちゃんが顔だけのぞかせていた。
1003 さん作 [323] -
aki-第1章-?
「でも………。」私がどうしたら良いのだろうと戸惑っていると、彼が何かを差し出してきた。「これ、今朝拾ったんですよ。失礼だとは思ったんですが、中を見させていただきました。」彼が差し出した物は、財布だった。…そう言えば、佐々木課長、財布を落としたって今朝騒いでいた…。私は心の中で軽く佐々木課長に舌打ちしたい気分だった。「本当にわざわざどうもありがとうございます。」私がお礼を伝えると、彼は「いえ。」と
1003 さん作 [378] -
aki-第1章-?
正直に言ってしまえば、彼に見とれてしまっていたのかもしれない。不思議な雰囲気を持った人だった。懐かしくて、胸の奥が締め付けられた気がした。同時に、不安にも感じた。後から気付いた事は、この不安は紛れもなく罪悪感だったのだけれど――――。「あ、すいません。こちらにどうぞ。」ついとってしまった行動と、わずかだけれど見とれてしまっていた事で、うつむき加減になってしまう。「いえ、たいした用件では無いんです
1003 さん作 [347] -
aki-第1章-?
ガチャリ――――――――――――「あの……。」ついさっき、受話器の向こうで聞いていた声がした。「えっ!?」声と同時に私は顔をあげた。思いがけない事にしばらく言葉を出せずにいた。沈黙の中で、私の携帯電話の震える音だけしていた。「あの、先程電話した戸川ですが。」男性はパッと見た感じ、同じくらいの歳に見えた。細身で身長は150cmも満たない私と比べると30cmくらいは差があった。「本当に会社の目の前に
1003 さん作 [358] -
aki-第1章-?
――――トゥルルルル……ビクリとしながら、驚かせた受話器を睨み付ける。何かトラブルがあったのかと思い、ますます帰れないと感じ、気が重くなっていく。ガチャッ。「はい、経理課、担当吉岡です。」「もしもし。」声の主は到底私の記憶にない、男性の声だった。「はい。」「あの…。私、戸川というものですが、佐々木さんはいらっしゃいますか?」急ぎの用件ではない事を祈りながら返事をする。「申し訳ございません。生憎で
1003 さん作 [365] -
aki-第1章-?
カタカタカタカタ―――――。キーボードを叩く音だけが響く。私の仕事は経理事務だ。今は月末で、お陰で毎月この時期は毎日残業になる。終わるまでは帰れない。数字が合わなければ帰れないなんていつもの事だ。――――今日も亮ちゃん、ご飯作ってくれてるんだろうなぁ。優しい夫の事を考えると、申し訳なくて、気持ち分キーボードを叩く音を速めてしまう。こんな日なのに、金曜日だからと言って、皆飲みに行ってしまった。うん
1003 さん作 [382] -
aki-第1章-?
「今日もまた残業かぁ…。」 時計の針が6時を指しているのを確認しながら、ため息と一緒に私は呟く。 気分転換にコーヒーを煎れに椅子から立ち上がる。 平凡だけど、多分きっと私は幸せなんだろう。 ふとした時、そんな風に思う。 カップの中のコーヒーがゆったりと湯気をたてていた。 今年の1月に24歳になった。何処にでもいるような普通のOLをしている。 そして、結婚もしている。 それが、私。 夫は5歳年上で
1003 さん作 [438]