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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。

 
  • 子供のセカイ。173

    美香と耕太は一階の居間で、複雑な思いで顔を見合わせていた。そこは紛れもなく美香の家だった。家中くまなく回って確認したのだから、間違いない。美香の記憶の限り、家の中は大体本物の家と同じ状態だった。綺麗に片づけられた居間のテーブルや、ソファーに置かれている綿のはみ出したクッション。ラックに山積みにされた新聞紙。二階の美香と舞子の部屋は、少し散らかっていたが、それも見慣れた風景だ。二段ベッドの上の段の
    アンヌ さん作 [574]
  • 子供のセカイ。172

    それは思い出してはいけない感情だった。思い出さないためにこそ、姉がいない場所へ、家族や友達、その他すべての人々がひしめく“真セカイ”から逃げ出して、“子供のセカイ”へとやって来たのだ。そして覇王から計画を聞かされた。舞子が本当の意味で「幸せ」になるための計画を。(そうだ。だから私は、どんなに寂しくても家へは帰らなかったんだわ。)母に会いたかった。悲しい思いをするたびに慰めて欲しくてたまらなくなっ
    アンヌ さん作 [521]
  • 子供のセカイ。171

    機械的な口調で紡ぎ出された名前に、覇王は脳が煮えるような激しい怒りを感じた。なぜこうなることをもっと早くに予期しておかなかったのか。ラディスパークに潜む前支配者が企んでいることなど、一つしかないというのに。舞子は呆然とアリアを見ている。「ミルバの分身にやられたってこと……?」ミルバは三年前、舞子の手によって処刑された。正確には、そんな残酷な事はできない、と泣き言を言い出した舞子に代わって、覇王が
    アンヌ さん作 [432]
  • 子供のセカイ。170

    覇王は動揺を隠しつつ、何食わぬ顔をして剣を鞘に納めると、カツカツと靴音を鳴らしながら二人に近寄った。すっとしゃがみこみ、舞子の肩に手を置く。「まずはこの者を回復させた方がいい。君ならできるだろう?」舞子はようやくそのことに気づくと、覇王を見上げ、ぎゅっと唇を噛み締めて頷いた。アリアの額の上に右手をかざす。そのまま顔の表面を撫でるように手のひらを宙にすべらせていくと、頬は元通りふっくらとした形を取
    アンヌ さん作 [488]
  • 子供のセカイ。169

    壁の高い位置にある、大きな丸窓が割れたようだ。同時に、床に向かって一直線に落ちてきた黒い人影に、覇王は反射的に舞子の腕を引いて自分の背後に隠すと、白刃を煌めかせて細身の剣を引き抜いた。「何者だ!」鋭く声を張ると、舞子が怯えたように覇王の服の裾を握りしめた。しかし予想に反して、侵入者は襲いかかって来なかった。むしろ割れた窓ガラスの破片の上に横たわり、時折びくり、びくりと体を震わせている。覇王は突き
    アンヌ さん作 [490]
  • 子供のセカイ。168

    「約束が違うじゃない!私、お姉ちゃんたちがラディスパークに入った時、言ったよね?絶対に殺してはダメだって。」そう、舞子は結局そういう結論を出していた。捕まえて城の地下に閉じ込めるという結論を。それなら姉を殺さず、なおかつ邪魔されることなく目的を遂行できると、幼いなりに舞子が考え出した苦肉の策だった。「ああ、そうだったね。忘れていた。」悪びれた様子さえない覇王の態度に、舞子は息が苦しくなるような不
    アンヌ さん作 [499]
  • 子供のセカイ。167

    側にいた複数の侍女たちがうっとりと顔をほころばせるのに見向きもせず、覇王はカツカツと青い大理石の通路を歩いていった。白い石灰岩の美しい柱が、高い天井を支えている。その間を抜けるようにずんずんと城の奥へ歩いていると、不意に前方に長い黒髪の少女が現れた。「……覇王。」「舞子。こんな朝早くからどうしたんだい?」一気に相好を崩して笑いかけると、美しい白のドレスに身を包み、腕組みをした舞子は、表情を曇らせ
    アンヌ さん作 [529]
  • 子供のセカイ。166

    美香はしばらく家から目が離せなかった。本当に久しぶりだった。“子供のセカイ”の時間の進み方はよくわからないが、それでも、少なくとももう二週間以上は家に帰っていない気がする。不意に家にいるはずの父と母が恋しくなって、美香は顔を歪めた。胸がきゅうっと締め付けられるような郷愁の想いでいっぱいになる。その気持ちに突き動かされるように、歩き始めたミルバの背中を追おうとして、美香は急にぴたりと動きを止めた。
    アンヌ さん作 [413]
  • 子供のセカイ。165

    だが、やはり覇王の存在に感じた恐怖は、ぬぐい去ることができなかった。もしもあの場にミルバがいなかったら、少なくとも美香は、確実に殺されていた……。思わずぶるりと身震いすると、耕太の手が美香の肩に置かれた。耕太も白い顔をしていたが、奥歯を噛み締め、必死にそれに耐えているようだった。「あいつ、何であんな所にいたんだろう?まるで俺たちが来るのを知ってたみたいな……。」「だとしたら、やはり迂濶には行動で
    アンヌ さん作 [414]
  • 子供のセカイ。164

    耕太は混乱しながら、しどろもどろに呟いた。「あれ…俺たち、何で……?ここはさっき……、いや、確か覇王がいて――、」「……また時間を戻したのね、ミルバ。」苦しげに呼吸しながらも、きぱりと放たれた美香の言葉に、耕太は驚いて美香を振り返った。美香はざわざわする胸を押さえながら、先頭で同様に立ち止まっているミルバの小さな背中を見つめた。妙な気分だった。耕太が戸惑うのも無理はない。実際、美香も未だに実感が
    アンヌ さん作 [410]
 
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